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こたつ

何回も何回もあかんって言ってるのに、何回も何回もこたつに立ち階段を降りるように俺に落ちてくる。受け止めいなし転がすと腕枕の体制で部屋の天井の隅を見ながら体の感覚に全集中してる。またガシガシとこたつに登る。あかん、は右から左に受け流す。ふわっの浮遊感はバンジー並み。楽しくて楽しくてしょうがない。アフォーダンスの学びとダチョウ倶楽部のノリは眼中に無い。今だけの先の細い茶色く軽い巻いてる襟足の髪の毛がふわっと舞うと抱き合う。首と髪の匂いを嗅ぎ反転させ胡座の父椅子にストンと座らす。お茶飲め、と言い終わる前に這い出しこたつに登る。ビールも茶もいつも床。カーテンが少し濡れている。一口飲むと、もうスタンバイは完了のようで後は俺の意識待ち。目を合わせ飛び立つ少し前に横に振り向き、刃牙の鳥のように遊ぶ。もう体制に入ってるので止めれなく焦ってるのを散眼で楽しみ受け止め転がす。スタンバイ完了。ふっと横を向いても飛ばない。反対を向いても飛ばない。警戒してる。もうせえへん、といい、腕をあげる。にっこりと笑いキャハと天使声を出し踏み出す。脇で受け止め鼻先を鼻でチロチロ。口臭を気にしてる俺がいる。転がす。スタンバイ完了。受け止め頭を脇に潜り込ませブレーンバスター前の体制からの顎で脇腹ぐりぐり。天使声。キャハハハハで転がす。スコッと、こしょばす。酒を飲みすぎると嫌いになるように擽られすぎると嫌になる。つかずはなれず。なんか違う。親しき仲にも礼儀あり。も、こっちの一方通行で、こたつに立つ時点で無礼講。ただよじ登り、落ちる。禅の無心を生きている。仁王立ちで見下げ、
さあ、と態度で言ってくる。頃合いもなんのその。
スタンバイ完了の合図は目のキラキラ。求められてる眼差しは愛くるしくて眩暈がしそう。求めて求められて。求められるの求めてる親心を知ってて求めてくる手練手管にクラクラしながら、こたつのメラミン天板の縁を小突く。今度は焦りながら落ちてくる顔の表情がよく見える。焦って、安堵し、笑う。桂枝雀の緊張と緩和のピラミッドの底を寒山と拾得のように遊ぶ。子供は今の名人で大人は先を読めれば読めるほど名人。には到底なれないので子供大人で今を。この一瞬一瞬の成長を噛み締めていかなもったいないな、そのためには心の余裕と時間をどう確、がぁ、膝に鈍痛。ほほ骨が立て膝にめり込む。あーごめん、も後の祭り。天国から地獄。痛みでヒクヒクもの。嫁に助けを求め膝枕を濡らす子には申し訳がない。すまん、ごめんな、といい、こたつの上のチャンネルを取りザッピングしようとすると相撲の行司の軍配がちょうど返ってる。のこってのこってのこってからの膠着状態に夢中になると胡座に滑り込んでくる。こたつ布団を膝に掛け、ごめんなと、つむじに言いながら両手のひらの温度を渡すと、テレビ画面を見ながらながらもどうも許してくれてるよう。ん、もしかしてうそ泣きやった?と顔を覗き込むと、ワァとテレビの観客が湧いた。涙がこぼれそうで、なかなか零れなかった。敬称略

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