玉衡様、どうぞ休んでください

今回の海灯祭の刻晴ちゃんが、どうしたら休んでくれるのかと考えていたら思いついたネタです。ネタバレ一切無しなので、ご安心ください。

突発的に思いついたネタなので、荒い部分があると思います…(^◇^;)

刻晴ちゃんは、いつもお仕事を頑張っているので、こんな時くらいは気を抜いてもいいと思うんです…。

働きすぎ…ダメ、絶対。

・キャラの仕事の方針やモットー捏造気味

※初出 2022年1月27日 pixiv


(さてと、次の仕事は……)
ふわっ

これから行う仕事のチェックリストを確認していた刻晴は、不意に漂ってきた匂いに、リストから顔を上げた。

(この香り…もしかして…!!)
バッ

「あ、刻晴〜!! やっと気付いてくれた〜!」

「香菱?! それに旅人とパイモン?!!」

振り返るとそこには、皿いっぱいのエビのポテト包揚げを抱えた香菱と、それを涎を垂らして見つめるパイモン、そして、飛びつかないように牽制する空の姿があった。

「呼びかけたけど、凄く集中していたぞ!」

「あら、そうだったの…。それよりも、君達は、どうしてここに?」

パイモンの言葉に、内心驚きながらも刻晴は問いかけた。

「えへへ。エビのポテト包揚げに合う新しいタレを開発したから試食してほしくて!」

(エビのポテト包揚げ…!!)
ハッ
サッ

漂ってきた香り…。その正体は、刻晴の予想通り大好物であるエビのポテト包揚げであった。香菱が持つ大皿に盛られたそれは、香ばしい匂いを漂わせて鼻腔をくすぐっている。つい口を開けそうになるのに我に返って、右手で抑えた。

「ちょうどお昼時だしな。おしゃべりしながら食べるときっと美味しいよ!って、香菱が言うから、刻晴もどうかな、って思ったんだ。」

(香菱と旅人とおしゃべり…!!!)

さらに、空が続けた言葉に、刻晴は誘惑に心を揺らした。ここ数日、あまりの忙しさに、自分で作れるチ虎魚焼きと凝光からの差し入れであるモラミートしか口にしていなかったのだ。さらに、会って話したいと思っていた香菱と空と一緒に、ということであれば尚更心躍る。

サッ
「き、気持ちは嬉しいわ。だけど、まだ、仕事が…。」

しかし、まだ仕事が残っているのだ。中途半端にするのは駄目だ。そう思って右手を離して断ろうとする。

だが…

ぐぅぅぅ〜
「!!」
サッ
「い、今のは違うわっ!」
カァァァ…

言葉とは裏腹に、刻晴の腹の虫が鳴ってしまった。咄嗟に両手でお腹を抑えて否定するが、羞恥により徐々に顔を赤くしているので、肯定しているようなものだった。

「何と今なら、俺の作ったエビのポテト包揚げと特製タレの食べ比べコース付きだ!!」
サッ
キリッ

「タレはここにあるぞ〜!!」
サッ

(何でかしら、旅人の後ろに胡桃が見えるわ…)

そんな刻晴に畳み掛けるように、空は懐からエビのポテト包揚げを取り出した。パイモンの持つ手にはタレが入っているらしき小瓶がある。空の言い回しに、刻晴はいたずらっぽい笑顔を浮かべる胡桃が見えたような気がした。

「"休んだ方が仕事の効率が上がる"。」

「!」

「"程よく休憩するのも仕事のうち"…。それが、俺の知り合いで残業はしない主義の人が言ってた言葉だ。」

「…旅人、君の交友関係の広さには改めて感心するわ……。」

「駄目、かな…?」
ショボン…

「うっ。」

空の言葉、そして、その人とどんな経緯で知り合ったのかを気にしていると、香菱が落ち込んだ表情で伺うように見つめとくる。いつも笑顔の香菱が浮かべるらしくない表情に、刻晴の良心が痛む。

「なぁ〜、旅人〜!! 刻晴が食べないならオイラが食べてもいいだろ〜?!」

「確かにそうだよな…。タレも使わないと勿体無いし…。」

「うぅ……。」

そんな刻晴の揺らぐ気持ちをさらに揺さぶるかのように、パイモンはますます涎を垂らしてエビのポテト包揚げと空特製のタレを見つめている。さらに、先ほどよりも空の牽制が緩いのも気になる。このままではパイモンに食べ尽くされてしまうのも時間の問題だろう。

(エビのポテト包揚げ…、香菱と旅人とおしゃべり…。ああ、でもまだあの仕事の詰めが甘いのが気になるし、そもそも優先順位が…)

ぐるぐると考えを巡らせる刻晴だったが、エビのポテト包揚げの香ばしい匂い、それに香菱と空とパイモンを見ているとさらに心が揺さぶられる。

そして、葛藤の末に…。

スッ
「…分かったわ。」

「え?」

「す、少しだけなら休憩しようかしら…。」
カァ…

お腹を抑えていた両手を離した刻晴は、再び顔を赤らめて目を逸らしながら呟いた。恐らく先ほどの腹の虫を思い出して恥ずかしいのだろう。

「「!!」」
パァァァッ
パンッ!

しかし、香菱と空はそんなことは気にしない。むしろその答えを聞いて、共に満面の笑みを浮かべた。そして、エビのポテト包揚げが乗った皿を片手に持ち変えて、もう片方で喜びのハイタッチをした。

そして、刻晴と共に万民堂で歓談を楽しんだ。

その後、刻晴はいつも以上の速さで仕事をこなした。そして、終わった瞬間のタイミングで現れた香菱と空とパイモンに連れられて、海灯祭に彩られた璃月港へと繰り出したのだという。

-END-

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