ふしぎなであい

ある日、不思議な夢を見る七七のお話です。

あと、ナヒーダ誕生日記念も兼ねています!!(※発表された当時に書いていた途中のものを慌ててその仕様に書きました…)

ナヒーダ、誕生日、おめでとう!!!
(エピソード動画視聴後の感情を込めた大声)

お迎えしたら、今度こそちゃんと誕生日を祝うからね…(涙腺崩壊気味)

時系列的に、くり返す花神誕祭を乗り切った後の休息期間の時です。

・めっちゃ短い
・かなり勢いで書いたので散文気味←
・七七視点→ナヒーダ視点のくり返し文気味
・ナヒーダの能力及び夢に関すること完全自己解釈
・夢の中なので、会話は『』表示
・ココナッツヒツジ完全に捏造

参考資料
・魔神任務 「黎明を告げる千の薔薇」及びナヒーダのセリフなど引用
・原神【エピソード動画】ナヒーダ「誕生日おめでとう」


※初出 2022年10月27日


不卜盧。

玉京台の正反対の場所に位置するそこは璃月でも有名な薬舗である。長い階段を登り切ると、そこにはまるでサザエの貝殻のような独特な屋根の造形をした建物が鎮座する。入口はまるで来るもの拒まず、と言っているかのように簾が上げられて開放的になっている店内が処方箋を片手に持つ患者を出迎える。中から漂う薬草の香りが鼻腔をくすぐり棚には所狭しと整理の行き届いた薬草達が並べられている。優れた医学者、白朮が店主を務めるここはよく効くことで有名である。また良薬口に苦しの言葉に違わずよく効いても苦い薬にぐずる子供も多いとか。

そんな不卜盧の名物たるキョンシーの少女、七七は、たまに不思議な夢を見ることがある。記憶を維持するのが難しい七七は、普通の人よりも夢の内容を覚えていない方が多い。だが、起きた直後、嬉しい気持ちや楽しい気持ちの余韻が残る感覚で、"いい夢を見た"ことが分かると穏やかな気持ちになれるのだ。

そんな七七であるが、今回は特に不思議な夢を見たのである。

パステル調の青空に広がる金平糖の星。

絨毯のように広がる白くてひんやりとした雪が降り積もる地面には、琉璃袋や清心が生えている。

そして、ふわふわとした雲のような生き物が思い思いに過ごしていた。

その不思議な生き物の名前は"ココナッツヒツジ"。

七七が、ココナッツミルクと間違えて覚えていた半仙の獣なる生き物である。

だが、その不思議な生き物は、こうして七七の夢に時折現れるのである。

もふっ
(ふわふわ、気持ちいい…)

そんなココナッツヒツジに寄りかかって、七七はその柔らかさを堪能していた。普通の動物であれば、嫌がって鳴き声を上げるものだが、このココナッツヒツジは必要最低しか鳴かないのだ。その点も、七七が気に入っている部分である。

そうして戯れていると…

『あら。こんな場所に来られるなんて、珍しいこともあるものだわ。』

ガバッ
『?』
きょろきょろ

不思議な声に、ココナッツヒツジの柔らかな体毛から顔を上げた七七はあたりを見渡した。その方向へ目を向けると、そこには…

不思議なヤマガラがいた。

普通のヤマガラとは少し違う全体的に真っ白でところどころ緑の羽毛が混じる不思議なヤマガラだった。

『あなたはだあれ??』

『そうね。何て言ったらいいかしら…。』

(不思議…)
ぱち

驚いて問いかけると困ったような声になってヤマガラは首を傾げた。その愛嬌がある様子に、ますます驚いた七七は瞬きをひとつした。すると、モヤがかかったようにヤマガラの姿が揺らいでいく。

(気のせい…?)
ごしごし
ぱっ

ぱち、ぱち

一瞬、自分の目がおかしくなったのかと目を擦った。そして、手を下ろして再度ヤマガラを見つめながら、瞬きをさらにひとつ、ふたつした。これで、全部でみっつ瞬きをくり返したことになる。すると…

不思議なことにそこへ妖精のような少女が現れた。

真っ白に緑のグラデーションがかかった髪は向かって右にサイドポニーテールで括られていて、それを彩るように連なる葉のような髪飾りがある。新緑の中で花咲く真っ白な花の花弁のような瞳孔を持つ瞳がこちらを見つめている。全体的に淡い緑色をしたワンピースは、まるで雪解けの中で来たる春を告げるように芽吹く新芽のような瑞々しさがあった。

『あら?』

どうやら、妖精のような少女自身も驚いたらしく瞬きをして、自身の手や足元を見つめた。

どこか、儚げで幻想的な雰囲気を醸し出す少女の無垢な仕草…。それに、七七はこんな第一印象を抱いた。

まるで、清心の妖精のようだ、と…。

『この姿になれるなんて…。』

妖精のような少女…、ナヒーダ自身はかなり驚いていた。何しろ他人の夢で自分の姿になれたからである。

というのも、ナヒーダは人の夢に介入して問いかけたり小鳥などの小動物の姿になれはしても、ナヒーダ自身として現れることは滅多にないからだ(これも、ナヒーダのことやその姿がスメールの民に知られていない理由のひとつでもある)。

しかも、スメールシティに住む民ではなく、他の国に住む者に見られることは滅多にない。その珍しさも相まって、纏う服装から恐らく璃月出身と推測できる(知識では知っているが、実際に見るの初めてである)目の前にいる薄紫色の髪を小さめの三つ編みに束ねているのが特徴的な少し肌が青白い少女を見つめた。かなり驚いているのか、薄紫色の丸みを帯びた目張りに彩られた大きな牡丹色の瞳はまん丸に見開かれて、固まっていた。

(これも、あなた達のおかげかしら…)

そうしてナヒーダは、異国の旅人の少年、空と不思議な妖精、パイモンを思い浮かべた。というのも、こうして人の夢に介入できる頻度が増えたのは、あの花神誕日をくり返す騒動が収まって以降だからだ。

元素を纏える上にどこか不思議な力を持つ空に、パラハァムが効かなかったパイモン。

そんな2人がアーカーシャ端末に接続したことで何かしらの影響を与えたのかもしれない。そうナヒーダが考え込んでいると…

てってっ
『?』
かさ、かさ

いつの間にか立ち上がっていた薄紫の少女が、ナヒーダの右側をふたまわり回りながら、じっと見つめている。その度に、ところどころに貼られた紙がかさかさと音を立てる。

(な、何かしら…)

てってって

そうしていると、今度はナヒーダの左側へとみっつまわり回っている。無論、その間もじっと見つめたままだ。困惑していたナヒーダは、その見つめてくる大きな牡丹色の瞳に耐えられなくなってきて…

『…そんなに私を見ないで。私は見られることに慣れていないの…。』

と、右手を後頭部に添えて、眉を下げて困惑した声を発するのだった。

『あ……、ごめんなさい………。』
ぱっ

妖精のような少女の困ったような様子に、つい興味津々に見つめてしまっていたことに気付いた七七は、囁くように謝って離れた。

すっ
『いいのよ。私が慣れていないだけ。それより、何か聞きたいことがあるのかしら?』

離れようとする七七の両手を優しく手に取った妖精のような少女は、微笑みながら問いかける。先程の無垢な様子から一転して、まるでお姉さんのような口調だ。

こくん
『あなたは…、

妖精さん??』

きょとん
『妖精? 私が??』

七七が疑問を投げかけると、妖精のような少女は目を丸くして疑問符を浮かべているようだった。

こくん
そっ
『清心の、妖精さん??』
すっ

握らせれている左手をそっと離して、そばにあった清心を指差しながら七七は問いかけた。一方、妖精のような少女は、初めて見るのだろうか、清心をじっと見つめている。

(これが、清心…)

璃月の植物の一種であることは知っていたが、見るのは初めてであった。ほんのりみどりがかったような白い花、どうやら薄紫の少女は、ナヒーダを見てこの花を連想したらしい。

清心を指差すその指先に、ほんの少し植物の気配を感じ取れることから普段から植物を扱うことに手慣れていることと、帽子に氷元素の神の目が鎮座していることから徐々に察して来た。

(少し分かってきたわ…)

観察していて、なぜ自分が目の前にいる薄紫の少女の夢に現れることができたのか、ナヒーダは何となくそれが分かった気がした。

風元素を纏う蒲公英のように。

岩元素を纏う岩石のように。

雷元素を纏う緋櫻毬のように。

そして、草元素を纏う植物のように。

恐らく常日頃から、植物に触れる機会が多い薄紫の少女だからこそ草神であるナヒーダと繋がることができた、と推測した。それに、これだけ雪が積もっているのに、植物の存在を感じられるこの不思議な場所自体が、薄紫の少女が植物を扱うのに長けていることを表している。それに、普段、スメールでは見られない雪の広がる風景がナヒーダの心を躍らせた。

『残念ながら、妖精ではないけれど…、

その呼び方はとても気に入ったわ。』

そんな気持ちも相まって、ナヒーダは笑顔で答えた。それは、まさに花が綻ぶような笑顔だった。

こてん
『妖精さん、でいいの??』

『えぇ。そう呼んで欲しいわ。』

ぱぁぁぁっ
こくこく

妖精のような少女の答えに一瞬首を傾げる七七であったが、どうやら呼んでもいいことが分かったので嬉しくて何度も頷く。

すっ
『それと…。』

『??』

『隣にいる生き物は何かしら??』

自然と手を離した妖精のような少女は、興味深そうにココナッツヒツジを見つめている。その様子から、どうやらココナッツヒツジを見るのは初めてらしい(正確には、羊自体を見るのが初めてなのだが、七七は知らない)。

『これは、ココナッツヒツジ。』

『ココナッツ、ヒツジ?? ヒツジなの??』

七七の答えに、妖精のような少女は先程のお姉さんのような立場から一転して、子どものように疑問を投げかける。まるで、先程の立場が逆転したようだ。

ふるふる
『…ココナッツヒツジは、半仙の獣。それと……。』

ぽん、ぽん

七七は首を横に振りながら、ココナッツヒツジの身体を優しく叩く。すると…

メェ〜〜〜

ぽぽんっ!

ぱしっ
ぱしっ
『……ココナッツミルクを出してくれる。』
すっ

ひと声鳴いたココナッツヒツジから、ココナッツミルクが2本落ちてきた。それをノールックで受け止めた七七は、そのうちの1本を妖精のような少女に渡す。

すっ
『凄いわっ!! どんな仕組みなの??』
きらきら

『えっとね…。』

ココナッツミルクを受け取った妖精のような少女は、興奮した様子で七七に問いかける。その瞳はとても輝いていた。

説明しようとする薄紫の少女に、ナヒーダは好奇心を大いに刺激された時特有の高揚感を感じていた。羊のことは、知識で知ってはいたが、ココナッツヒツジは聞いたことがない。それに、ココナッツミルクも初めて知った。

まだまだ自分には、知らないことばかりだという事に気付くと同時に、それを気付かせてくれた目の前にいる薄紫の少女に、ナヒーダは…

知識を与え続けてくれる終わりのない本のよう。

そんな印象を受けるのだった。

それから2人は、めいっぱい遊んで楽しんだ。

ココナッツミルクを飲みながらココナッツヒツジと戯れたり、

雪の中に隠した植物を当てるゲームをしたり、

一緒に追いかけっこをしたりした。

まだお互い名前も知らないが、いつの間にか不思議と意気投合していた。

そして、気付くと目覚めていた七七は、いつもよりもわくわくとした高揚感で目覚めたのでご機嫌であった。

一方、ナヒーダもキャサリンに憑依して、空とパイモンが現れるのを待った。不思議な夢のことを話す為だ。

そんな2人が出会うのは、きっとそう遠くない未来だろう。

だが、それはまだ先の話である。

-END-


後書き

七七とナヒーダ、ゆかりんボイスキャラの絡みが見たい欲が元素爆発して思いついたお話です。

書いていてめちゃくちゃ楽しかったです!!

こんな風に意気投合したらいいな、という願望込みです!

ナヒーダが七七の夢に介入できた理由としては、

関節的な要因

・草元素に触れた上に短期間だけどアーカーシャ端末に触れた空くんor蛍ちゃんの繋がり

・神の目を持つ者との共鳴

・薬採りとして普段から草花に触れている

直接的な要因

・七七とナヒーダ、お互い"な"で始まる名前だから

・七七→ヤマガラ好き
ナヒーダ→憑依するのが小鳥だったり紹介文が籠の中の鳥、と鳥関連の比喩表現をする
=2人の鳥繋がり

・中の人繋がり←

という理由で繋がった、という解釈です!

長くなりましたが、ここまで読んで頂きありがとうございます!

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