【タル空】水鏡、翻弄される青と琥珀

具現化した空鯨座に翻弄されるタルタリヤと空くんのお話です。

・命ノ星座である動物が具現化しています
・命ノ星座と神の目の関連について自己解釈あり
・黄金屋でのタルタリヤが繰り出す呑天の鯨の攻撃の鳴き声を元に、鳴き声を完全自己解釈気味ですw←

参考資料

・黄金屋でタルタリヤが繰り出す呑天の鯨の攻撃
・公式グッズ 呑天の鯨マスコットチャーム及び卓上加湿器



璃月港の外れの釣り場にて。

ふるるーん

「か、可愛いな…!!」

「ははは。そう言ってもらえて嬉しいよ。」

空の目の前に存在しているのは、手のひらサイズほどの小さな鯨のような不思議な生き物だ。何故か口元以外は顔が分からない状態であるが、それでも可愛らしいことには変わりない。

角のような突起が生えているその生き物は、優しい鳴き声を上げて、まるで水の中にいるように空中を優雅に泳いで漂っている。

青から水色に変わるグラデーションを帯びる身体の色が、まるで日光を浴びている水面のような揺らぎ模様となっている。

その合間に、星々の煌めきのような粒が見えている。まるで、昼間は見えない星々を確かにここに存在しているのだ、と証明しているようだった。

「それにしても、本当に"空鯨座"の"空鯨"なのか?」

「うん。俺もよく分からないけどね。」

指先で優しくつつくように、不思議な鯨のような生き物と戯れながら、空は疑問を述べた。その問いに、タルタリヤ自身も疑問があるのか、曖昧に答えた。

そう。

この不思議な生き物の正体は、具現化した"空鯨座"、その"空鯨"であった。

どういう訳だか、具現化した"空鯨"は、タルタリヤの周囲を浮遊していた。このことについて、鍾離にも聞いてみたところ、とても珍しいことであり、鍾離ですら数回しか見たことがないほどの数少ない事例らしい。

曰く、命ノ星座の中でも動物を象った星座の持ち主がなりやすい事態らしい。但し、具現化している間、星座の持ち主、つまり、タルタリヤは、元素による力が扱えないことが難点なくらいで、それ以外に害はないらしい。

(全然大きさが違うな…)

戯れながら、かつての黄金屋で戦いで、タルタリヤが繰り出してきた呑天の鯨の時の大きさを想像して、その違いに、空は密かに感心していた。

「おかげで、俺も強制的に休暇状態だよ〜。」

タルタリヤがやや困惑したような声を上げる。具現化した影響によるものなのか、タルタリヤの右腰に鎮座する神の目は、深い青色はそのままに、水元素のマークが消え失せている。いつしかの"主なき神の目"を彷彿とさせたが、タルタリヤの様子や話を聞く限りは安全そうなので、空はひと安心した。

「いいことじゃないか。むしろこの子に感謝するべきだろ?」

ふるぅ〜ん

嘆くタルタリヤに対して、空は"空鯨"を可愛がるように撫でながら返答した。そして、"空鯨"も、もっと撫でて、と言わんばかりに空の手に擦り寄って甘える。

ムッ
「それにしても、空によく懐いているね…。」

「そうかな…。」
(なんか、タルタリヤ、機嫌悪そうだな…)

やや唇を尖らせるような表情をしたタルタリヤに、空は困惑しながら答えた。もしかしたら、"空鯨"が空に懐いているのが気に入らないのかもしれない。

(あんなに空に甘えて…羨まし過ぎる………!)

空が心配している一方で、タルタリヤは"空鯨"が空に甘えていることに対して嫉妬の感情を抱きながらも、甘えられて嬉しいのか可愛らしい笑顔を浮かべる空を見られて嬉しい気持ち、その両方による大変複雑な気持ちを抱いていた。

「名前はあるのか??」

「"空鯨"にちなんで、"空"(くう)にしたよ。」

「! いい名前だな〜。」

ふるるるぅん

(可愛いな………)

尋ねられたので、答えれば、ますますいい笑顔になる空と、嬉しそうな声を上げる"空"にまたも悔しい気持ちと嬉しい気持ちが入り混じるタルタリヤであった。

(多分、名前のことが分かるんだな…)

タルタリヤが悶える一方で、空は分析していた。名付けられた名前が似通っている影響もあるのだろうか、"空"は、空にとても懐いている。何しろ"空鯨"の文字には、"空"の文字が入っているのだから。

空には、タルタリヤを含めて仲間達の命ノ星座の詳細なその名前が分かる特殊能力がある。

しかし、その"名前"というのは、"空に分かる文字での認識化された文字"であり、他の人には分からない状態なのだ。

だが、命ノ星座は、本能的に空の認識している文字が分かるのだろう。その上で、空の名前に使用されている文字が同じことにも気付いて、その結果、仲間意識が芽生えてこのように懐いている状態なのだ。

(タルタリヤには、ちょっと気の毒だけど…)

「………。」
スッ

「えっ?」

そう考え込んでいながら申し訳なさを感じていると、タルタリヤは無言のまま"空"の胴体を掴んだ。

「"空"。いい加減、空に迷惑だろう?」

ふるるぅ!!

タルタリヤが空から引き剥がしたことが不満なのか、"空"は逃れようと身体を揺らして鳴いた。しかし、軽く掴んでいるようにしか見えないのに、"空"がどれだけ暴れてもタルタリヤの手から離れる気配はなかった。

「俺は大丈夫だけど…。」

「いや、これ以上は耐えら……、コホンッ、空から離れそうにないからね。」

「そうなのか?」
(タルタリヤ、何か言いかけたか…?)

タルタリヤが何を言いかけたのか、空が疑問に思っていると…、

ふるぅ!!

ブゥンッ

バッ
「わっ!?」

「え??」

より一層勢いよく身体を揺らした"空"はやっとのことで、タルタリヤの手から離れた。驚きに声を上げるタルタリヤと、その声に呆気に取られる空であるが…

グルンッ

ポンッ

「えっ?! わぁっ!!」
グラッ

「!! 空!!」
ガシッ

2人の足元に急速旋回するように身体を滑らせた回った"空"は、軽い音と共にかなり大きくなった。それと同時に、2人はバランスを崩してしまうが、そんな状態でもタルタリヤは、空を支えた。

そして…

ふるーーーん…

フワッ…

大きくなった分、鳴き声も大きくなった"空"は、2人を載せて宙にゆっくりと浮かび上がる。

そして…

グインッ!!

「えっ!? ちょ、わーーー!!!」
(お、落ちる…!!)

勢いよく大空に向かって泳ぎ出した。急に重力がかかる感覚に、トワリンの背に乗った時のことを思い出しながら、空は大声を上げた。

ポンポン
「空? もう大丈夫だよ??」

どれだけの時間が経ったかは分からない。たった数分かもしれないし、数時間経ったかもしれない。そんな中で、いつの間にか目を閉じていた空は、かけられた声と肩を優しく叩く感触に、恐る恐る目を開けた。

(どうなったんだ…?)

ゆっくり視界を開けると…

目の前には、璃月港の風景が広がっていた。

夜に包まれた璃月港は、灯された灯りによって昼間と変わらない明るさで以てその存在と人々の賑やかさを引き立たせていた。

「わぁ…!!」

「凄いね…。」

まるで、群玉閣から見たような光景に感嘆の声を上げる空とタルタリヤは、しばしその光景に魅入った。よく見ると、そう遠くない場所に、実際に群玉閣も見える。

まさか、大きくなった"空"が、上空まで飛べることまでできるとは思いもしていなかった。だが、普段よりも近い位置に見える星空と気温差による寒さがそれを物語っていた。

だが、不思議とそこまで寒さは感じない…。

そう思って隣を向くと…

(……って、ずっとしがみついていた!!)

見惚れる中で、ずっとタルタリヤにしがみついていたことを思い出した。通りで、いつもよりタルタリヤの声が近くに聞こえる訳だ。

「悪い、離れ…。」
グラッ

ガシッ
「おっと、危ないよ?」

慌てて離れようとする空だが、バランスを崩しかけた。それに気付いてたタルタリヤは、慌てて引き戻した。

「大丈夫だから。

俺のそばにいてね…。」
ギュッ

「あ、あぁ。」

(あたたかい、な…)

そんな声をかけられながら、再びタルタリヤ右腕の中にすっぽりと収まった空は、困惑しながらも、その温もりに身を委ねるのだった。

(まさかこんなこともできるなんてね…)

右腕に抱いた空の温もりを噛み締めながら、タルタリヤは"空"の行動に感謝していた。まさか、こんなこともできるとは思っていなかったからだ。

それに、上空にいる為に、落ちないようにバランスを取ることと暖を確保する意味でも、空を合理的に抱きしめることができる…。

まさに、一石二鳥どころか、三鳥ほどもあることだ。

"君、これを狙っていたの??"
ナデナデ…

ふるーん!

"空"に問いかける意味を込めて、タルタリヤ自身と空を支える為に、"空"の身体の表面に置いていた左腕で撫でてみれば、意味を汲み取ったのか嬉しそうに声を上げた。

クスッ
(やっぱり俺達は似たもの同士かもね…)

先程は、空に甘えていたことを腹立たしく思っていたが、こうして空だけでなくタルタリヤも喜ばせようとしている行動をしたこと、何より空のことを想っていると汲み取れることに似ていることが分かって、タルタリヤは笑みを溢した。

「どうしたんだ?」

「何でもない。もう少し楽しもうか。」

「……そうだな。」

微笑んだタルタリヤに疑問符を浮かべる空だが、何でもない、というように答えたタルタリヤの意図を汲んで、空もそれ以上は聞かなかった。

何よりこの景色を堪能したかったからだ。

(もう少し、見ていよう…)

そうして、タルタリヤと空、そして、"空"は楽しんだという。

楽しんだ翌日、"空"の姿が見えないことを問えば、タルタリヤの神の目に吸い込まれていったという。確かに、神の目には水元素のマークが戻っていた。

残念そうにする空に、大丈夫、ちゃんとここにいるよ、と胸元を叩いて答えるタルタリヤに、少ししてから空は吹き出した。その言い回しが何だか気障だったからだ。

苦笑いするタルタリヤと尚も笑う空。

それに応えるように神の目がキラリと輝いた。

-END-


あとがき兼謝辞

命ノ星座のうち動物を象った星座が具現化したら面白そうだな〜、と思っていたら思いついたお話です。

特にタルタリヤは、黄金屋での戦いで呑天の鯨が具現化しているので、恐らく全キャラにおいて、唯一、命ノ星座の動物が具現化しているのではないかと思って、そこにも着目しました。

具体的な設定としては、

・見た目はそのまま命ノ星座の動物でかつ色元素の色+星空みたいなキラキラがあるイメージ

・大きさは自由自在に変えられる

・具現化している間は、キャラ元素攻撃はできず、神の目は色はそのままだけど、中にある元素マークが消える

という感じです。

また、このタル空小説にて、タル空作品100作目を達成しました!!
今年の抱負にしていた目標でもあるので、達成できて嬉しいです!!

今後も気ままに投稿しようと思いますので、暇つぶしにでも読んで頂けると幸いです!!

ここまで読んで頂きありがとうございます!!!

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