【タル空】甘味に浸りし幸福

お互いに作ったチョコ系統のお菓子を食べ合うタルタリヤと空くんの話です。

日付を見て急ピッチで書いたので、めっちゃ短いです…(単なる無計画)

ロシアのバレンタインでは、男性からも送ると聞いたので、ロシアをモチーフにしたスネージナヤにも適用されているのではないかと思って書きました。

・タルタリヤがお菓子作りも得意な設定
・空くんが、以前旅をした世界での書籍(参考書籍のタイトル)の物語を話しています
・恐らくテイワット大陸には、選挙や党の概念がないだろうな…、という前提あり

参考資料

ロシアのバレンタイン

https://www.spintheearth.net/russia_st_valentines_day/

ロシアのアイス スカタンチク

https://mihotabi.hatenablog.com/entry/2017/07/20/205847

参考書籍

チョ/コ/レ/ー/ト/ア/ン/ダ/ー/グ/ラ/ウ/ン/ド



塵歌壺の邸宅。

そのリビングは、現在、甘い香りが漂っていた。

「まさか、作ったものが微妙に被るなんてな…。」

「あはは! なかなか面白いね!」

神妙な顔つきをしているのは、長い金髪を三つ編みにした少年、空である。丸テーブルに置かれたチョコクッキーを見つめる一方で、その隣にあるトリュフを見つめながら、快活そうに笑っているのは、メッシュの入った柔らかな茶髪の青年、タルタリヤである。

偶然にも2人は、チョコ系統のお菓子を作ったのである。

より正確に言うならば、空がお菓子作りに挑戦しており、それが完成して皿に移して丸テーブルに並べていたところで、タルタリヤが差し入れとして持って来たのである。

ちなみに、空がチョコクッキー、タルタリヤがトリュフを作ったのだ。

「まぁ、せっかく作ったんだから食べようよ。」
スッ

「確かに、割と上手く出来たからな…。」
スッ

まさかのタイミングばっちりな出来事に困惑気味な空に対して、いつもよりも嬉しそうにしているタルタリヤは2人掛け用のソファに座った。それに釣られるように、空もタルタリヤの右隣に座った。

「おっ! それは楽しみだ!」
スィッ

「…って、何でお前がチョコクッキーを取ってるんだ?!」

そう言いながら、空が作ったチョコクッキーを取るナチュラルに手に取るタルタリヤに物申した。てっきりトリュフを取るものだと思っていたからだ。

「え? だって、トリュフは味見で割と食べたからさ??」
キョトン

(俺が気にしすぎなのか…?)
「なら、いいけど…。」
スッ

空の言葉に対して、それが何か?と言わんばかりの表情と言葉を発するタルタリヤに半ば無理矢理納得した空は、トリュフに左手を伸ばした(タルタリヤに対するささやかな抵抗である)。

サクッ
「!!」

モグモグモグモグ
ゴクン

「美味しいよ、空!!」
キラキラキラキラ

チョコクッキーを食べた瞬間、目を見開いたタルタリヤは、素早い動きで、尚且つ、味わうように咀嚼した後に、飲み込んだ。そして、目を輝かせながら空が作ったチョコクッキーを褒めた。

「そ、そうか? まだ作り慣れてないから、心配だったんだが…。」

「そんなことないよ! めっちゃサクサクして程よく甘くて美味しいよ!!」

「…おだてても、ここにあるチョコクッキーしか出ないからな。」
プィッ

「あはは! 十分だよ。」
スィッ

あまりの勢いに圧されながらも、ますますタルタリヤは褒めてくれる。それに照れ隠しをするようにそっぽを向いた空に構わずに、いつも以上に笑顔になったタルタリヤは、次のチョコクッキーへと手を伸ばした。

(調子いいやつだな…)

その様子に、若干呆れながらも、まだ作り慣れていない(とはいえ、元来料理上手な空が作れば、たちまち美味なものへと変わるのである)チョコクッキーを褒めてくれたことが嬉しい空は、左手に取ったトリュフを見つめる。

その時、とあることを思い浮かべた。

「そういえば…。」

ピタッ
「ん? どうしたの??」

無意識のうちに言葉にしていたらしく、チョコクッキーを食べる手を止めたタルタリヤが疑問符を浮かべて尋ねてきた(既に皿にあるチョコクッキーはかなり数が減っていたが、この際、気にしないことにする)。

「前に読んだ本で、チョコレートを始めとするお菓子が禁止された話を思い出したんだ。」

それは、空が以前旅した世界で読んだことがある本の物語であった。

健康を害する、という理由だけでチョコレートを始めとするお菓子が全面的に禁止されたことや、それに立ち向かう為に、少年少女達が躍起になっていたことが深く印象に残っていた。

そして、こうしてチョコ系統のお菓子を見ていたら、ふと、その内容を思い出したのである。

「えっ!? お菓子が禁止に?? それはまたどうして??」

「そうだな…。分かりやすく言うと、稲妻の目狩り令に近い感じだな。」

「なるほど…。そんなに深刻なことだったんだ…。」

驚くタルタリヤに対して、空はテイワット大陸に住まう者でも分かりやすい説明を心がけた。何しろ、禁止した首謀者とも言えるのが、"投票によって選ばれた党"であるからだ。

(テイワットには、選挙とか、党とかなさそうだからな…)

七神が国を治めるテイワット大陸においては、"選挙"や"党が当選"という概念そのものが無いだろう、と判断したのだ。それも相まって、以前、稲妻にて雷電将軍が行っていた目狩り令で例えてみたら、タルタリヤはすんなり理解してくれているようだった。その反応からして、空の予想通り、テイワット大陸には、"選挙"や"党が当選"という概念は無いようであった。

「だから、仮に禁止されていたら作れなかったかな…って思ってさ。」

「そうだね…。もし、そうなっていたら、トーニャやアントンもスカタンチクとか食べられていないかもね…。」

「だろうな…。」

話しているうちに、故郷にいる弟妹のことを思い出したのか、タルタリヤはどこか落ち込んでいる様子だ。それを見た空は、慌てて補足説明をした。

そんな状況下でも、チョコレートの原材料であるカカオ豆や全てのお菓子の原材料である砂糖までは禁止されていなかったこと。

それを抜け道にして、禁止されている中でも作ったりして、味わえることが出来たこと。

そして、反気を翻した後に、最後はハッピーエンドになったこと。

「だから、その物語の世界では、またチョコレートやお菓子を食べられるようになったんだ。」

「へぇ、面白いね…!!」

クスッ
(何だか子どもみたいだな…)

興味深そうに聞く様子が、まだ幼さが残る顔立ちであることも相まって、普段よりもタルタリヤを幼く見せていた。まるで、子どもに読み聞かせをしているような気がして、空は自然と笑みを溢した。

「空の話は、いつも面白いね。」

「そうか?」

「そうだよ。今回話してくれたお話も興味深かったよ。

それに…。」
スッ

「えっ………?」

そう言いながらタルタリヤは、トリュフを持つ空の左手、それを右手で優しく掴んで引き寄せる。

そして…

「もし、禁止されていたら、お互いこんな風にチョコを味わえなかったかもしれないからね?」
パクッ

「!!!」

空が摘んでいたトリュフを食べられてしまった。

あまりの近さと、まるでじっくりトリュフを味わうように伏せられた睫毛の長さに、空は驚きに目を見開いた。

(……甘いな…)
スッ…

空が困惑している一方で、口に広がる甘さが、味見をしていた時に比べてより一層甘くなっている気がして、タルタリヤは不思議な感覚に陥る。

先程味わったサクサクとした生地が絶妙に美味しいチョコクッキーとは違うしっとりとした食感を味わいながら、ゆっくりと目を開けていく。

その視界に映り込んだのは…

困惑に見開いた琥珀色の瞳。
林檎のように赤く染まった頰。

そんな普段とは違った可愛らしさを身に纏っている空の姿であった。

クスッ
(何だか、空自体がお菓子みたいだな…)

食べていたチョコクッキーとトリュフの甘さの影響か。

それとも、それらによって作り出された甘い匂いが充満するこの空間なのか。

あるいはその両方なのか。

そんな空間に感化されたのか、とても可愛らしい空の様子が、まるで、極上のお菓子のようだと思いながら、指先にトリュフにかかっていたココアパウダーが残っているのを見たタルタリヤは、唇を近づけてゆく。

そして…

「ん…、味見した時より甘いな…。どうしてだろうね??」
チュッ

空と目線を合わせながら、指先に残るココアパウダーを拭うように口付けた。

ビクッ
(……え、………なっ!?)

一方、されるがままでいた空は、指先に触れているタルタリヤの唇の感触に身体を揺らして驚いた。さらに言えば…

しっかりと目線が合っているので、空の様子がタルタリヤには、丸見えなこと。

思っていた以上に、その光景に釘付けになってしまっていたこと。

そして、掴まれた左手と指先に感じるタルタリヤの温もり…。

「………〜〜〜〜!!!」
カァァァッ

その全てを理解した空は、ますます顔を赤くするのであった。

「し、知るか!! 気のせいだ!! 医者に診てもらえ!!!」
バッ
ギュッ

「え〜? つれないな〜。」
クスクス

勢いよく手を離した空は、両手を抱き抱えるようにしながらややキツい言葉を紡いだ。しかし、タルタリヤには通用しないのか、ますます笑みを浮かべるばかりである。

「全く…。」
スッ

そんな余裕そうな態度が、何だか悔しくなって、抱き抱えていた両手を元に戻して、新たにトリュフを取ることで誤魔化した。

パクッ
「………!」
(甘くて、美味しい…)

ようやく口にできたタルタリヤお手製のトリュフは、とても美味だった。料理はできるとは聞いていたが、これはお店に出しても遜色ないレベルなのではないだろうか。そんなことを思ってしまう。

しっとりとして甘く。

それでいて、少しほろ苦くて。

それが、やがて程よく溶けていく…。

(まるで、タルタリヤみたいだな…)
チラッ

ニコッ
「どうかな??」

「………まぁまぁだな。」
プィッ

「おっ! 空のお墨付きだ!」

「………どうしたら、そんな解釈になるんだ…。」

「あはは。相棒からくれた言葉なら、俺は全部いい方向に捉えるよ。」

「…勝手にしろ。」
プィッ

そう思いながら、タルタリヤの様子を見る為に、見上げればそんな言葉が返ってきたので、まだ熱が収まらない頰を隠す為に、空はそっぽを向くのだった。

こうして、2人は甘いものへと包まれた時間を過ごすのだった。

-END-


あとがき

タルタリヤと空くん…

2人とも無意識にバレンタイン当日にチョコ系統のお菓子を作ってお互いに食べていればいいよ…!

そんな願望が爆発して筆が走っていました…!!
書いていてめちゃくちゃ楽しかったです!!

ここまで読んでいただきありがとうございます!!

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