良かったらどうかな?


空くんに何かを渡すタルタリヤのお話です。
めっちゃ短いです。

・謎時系列です
・テイワット大陸全体のヘアケア用品捏造気味
・タルタリヤの家族とのやり取り全面的に捏造及び自己解釈気味

参考資料

・タルタリヤの伝説任務 空鯨の章


フォンテーヌの街中。

その中に鎮座するベンチのうちのひとつにて。

「空…。良かったら、これを貰ってくれないかな?」
ドサッ

回廊を歩いていた際、偶然出くわしたタルタリヤから声をかけられた空は、ベンチに座ってからしばらく話して込んでいた。

他愛もない話をしながら、一区切りつけるようにして話題を切り替えたタルタリヤは、大量のヘアケア用品を渡してきた。

どこから取り出したのか、急に取り出したにしては量が多い。もしかしたら、武器のように収納していたのか、と思えるほどにその場に一瞬で出したように見えた。

「どうしたんだよ、これ?」

「実家から大量に送られてきてさ…。」

「そうなのか…。実家は、家族思いなんだな。」

あまりの量に目を瞬かせた空は、疑問を投げかける。そして、理由を聞いて、タルタリヤの家族が遠く離れた地にいる彼のことを思っている優しさに触れたような気持ちになって、自然と顔を綻ばせた。

「いや、それがさ…。」
ポリポリ

「? どうしたんだよ??」

しかし、どこか煮え切らない態度で頰を掻く様子のタルタリヤに、再度疑問を投げかける。いつもであれば、家族の話をするたびに嬉しそうに話す姿が印象に残っていた。だからこそ口元は弧を描きながらも、やや困ったように眉を下げるタルタリヤの様子に、些か拍子抜けしたからだ。

しかし、次にタルタリヤが紡いだ言葉で、その疑問は解消することになる。

それは…

「どうやら、空に渡して欲しいみたいなんだ。」

「えっ?! なんで俺なんだよ?!!!」

その言葉を聞いて、先程よりも驚きながらそう尋ねる空に説明するように、タルタリヤは話し出した。

彼が言うには、スネージナヤの実家から大量に送られてきたらしいこのヘアケア用品は、同じく同封されていた手紙に書かれていた文章に、どうやら空に渡して欲しい、と書いてあったようだ。

いつもお世話になっているんだから渡してきなさい、と書かれていた、らしい。

「…というわけなんだ。」

「そうだったのか…。」

そんな事情を聞いた空は、半ば納得するように、かつ、少し困惑したように返事をした。タルタリヤの家族とは、テウセル以外とは面識がないはずだが、タルタリヤ本人や綴った手紙経由で空のことを知られていくことに、何故だがむず痒い気持ちと落ち着かない気持ちになってくるからだ。

しかし、ここまで用意してくれてることに、やはりどこか人懐っこい人柄(あくまでも客観的に見た場合であり、空の意見ではない、はずだ)のタルタリヤと家族であることを再認識するのだった。

「そういうことだから、空が良かったら、使ってくれないかな?」

「いいのかよ? こんなに大量に、しかも、結構いいやつだろ??」

「いいよいいよ。俺はあんまり使わないだろうし、むしろ使ってくれたら凄く助かるよ。」

「そこまでいうなら…。」
スッ

それでも、尚、遠慮をする空に、タルタリヤは促す。その静かな圧に押されて、受け取るのだった。

ズシッ

「あ、ありがとう、な…。」

ニコッ
「うん。ありがとうね、空。」

「あぁ。」

改めて感じるそれの重さに、お礼の言葉を述べれば、タルタリヤは快活な笑みを浮かべる。その笑みは、まるで、持っていた重い物をようやく下ろしたように晴々としていた。恐らく、物理的な意味と精神的な意味、ふたつの意味が合わさっているのだろう。

(忘れないうちに…)
ゴソゴソ

「? どうしたの??」

「え? いや、モラを渡そうと思って…。全部でいくらなんだ??」

渡されたヘアケア用品の代金を支払おうとして、懐を探ってモラを出そうとする空に、タルタリヤが声をかける。

ギョッ
「えぇっ!? 大丈夫だよ。」
パタパタ

「これくらいはさせてくれ。」

目を丸くして両手を振るほど慌てた様子のタルタリヤに、納得がいかない空は付け加える。

すると…

「う〜ん。それなら…。」
スッ

ふわっ

「ちゃんと使って、もっと綺麗になった空の髪を見せて欲しいな。」

三つ編みに束ねた空の金髪…。

そのひと束をいつの間にかさらに近くへと寄ったタルタリヤが、右手で優しく掬い取るのだった。

「へっ?」

「それがお返しってことで、ね?」

チュッ

呆けた様子の空を置いて、まるで、大事なものを慎重に扱うように触れながら、タルタリヤは空の髪へと口付けをするのであった。

(!!!)
ボッ
「わ、分かったよ…。ちゃんと使うから……。」

そんなタルタリヤの様子を間近で見ていた空は、音が出そうなくらいに瞬時に顔を赤くして、途切れ途切れながらも言葉を紡ぐのだった。

「………というか、そろそろ離してくれないか?」

「え? 離れないとダメかな??」

「なっ!! 当たり前だ!! いつまでくっついているつもりだよ!!」

「なら、あともうちょっとだけ〜。」

「おい!!」

離してくれるように懇願する空であるが、飄々とした様子で受け流すタルタリヤに抗議するのだった。

結局、そこから10分ほど、タルタリヤは空の髪を堪能していたのだという。

その途中、いい加減に離すように、空がさらなる抗議の声を上げるが、目を閉じながらもうっとりした様子が分かるタルタリヤに、何も言えなくなる空の様子が見られたという。

-END-


後書き

フォンテーヌでのダイビングをする様子から、空くんの髪、傷まないかな…と思っていたら、思いついたネタです。

今までの四国の旅で、泳いだり雨に濡れたりする時もあったので、今更すぎるとは思ったのですが、フォンテーヌでは水の力も特に強いから、空くんの美しき金髪のお髪に影響が出るかも…、と思っていたら書いていました。

あと、タルタリヤは、空鯨の章でのテウセルから聞いた手紙の内容などから、家族ぐるみで空くんのことが好きなことでタルタリヤが色々話していることがが伺えるので、そこも含めて自己解釈で書きました。

ここまで読んで頂きありがとうございます!!

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