【タル空】よくこれで走れるな…

ヒールの靴を履いたキャラの気持ちを知ろうとする空くんとそれを手伝うタルタリヤのお話です。

※弊ワットにおいて、空くんはあらゆることに対して果敢に挑戦するタイプです。

・全体的にギャグ調ですが、空くんは至って真剣です。


「本当に、いいんだね…?」

「あぁ。構わない。」

深刻そうな様子で尋ねるタルタリヤに対して、空は真剣な面持ちで、覚悟を決めたように重々しく頷いた。

「それじゃあ、行くよ……。」

「いつでも大丈夫だ。」

準備万端だというニュアンスを含んだタルタリヤの言葉に、同意するように空は頷いた。

「それっ!」
スッ!

「っ!!!」

掛け声と共に、タルタリヤは勢いよく何かを離した。それと同時に、空も気を引き締めるように息を詰めた。

だが…

プルプルプル
ガッ

バターーーン!!!

見事に失敗した空は、盛大に転んでしまった。それはもう派手に、だ。

「空ーーー!!!」
タタタッ

そんな空に向かって、タルタリヤは大声を上げてから慌てて駆け込んだ。

スッ
「大丈夫?!」

ヨロ…
「あ、あぁ。大丈夫だ…。」

しゃがみ込んで尋ねるタルタリヤに、心配させまいとする様子の空であるが、転んだダメージが余程大きいのか、よろけながら上半身を起こして弱々しい声で返答した。

「いくらなんでも、身体を張りすぎだよ…。

まさか…、

送られてきたヒールの靴を履いて歩くのに挑戦するなんて…。」

そう。

タルタリヤが言うように、空はヒールの靴を履いて歩くことに挑戦している真っ最中であった。

というのも、ジン団長から日頃のお礼として、贈られてきたプレゼントとして、何故かヒールの靴があったのだ。最初は困惑したもののジン団長が送るほどのものだから、何かしらの試練として、空に挑戦を託したのではないか、と思ったのだ。

そうでなければ、ジン団長が送るなんて思わないからだ(しかし、実はリサに送る予定のものを手違いで送られた事実に、この時の空は気付かないのだった)。

そんな経緯を経て、タルタリヤの協力を得ながら、ヒールの靴を履いて(女性サイズの靴であるが、難なく履けたのは、空がまだ少年で華奢な体格であり、手や足がまだ小さいことが幸いしたのだろう)何とか歩こうとしていたのだ。

しかし、先ほどは要領を得ていなかったのか、盛大に失敗してしまったのである。

「もう一度、だ…!!」
グッ…

「せめて、立つだけでも練習しようよ…。」

「確かに、一理あるな…。」

身体に受けたダメージが残る様子でありながら、勇ましく声を上げる空に、タルタリヤは提案した。彼の言うように、まず、ヒールの靴で立つことが、空に課せられた課題だと言えるだろう。

空もそのことに気付いているのか、その提案をすんなりと承諾した。

スッ
「ほら。まだ痛むでしょ?」

「悪いな…。」
スッ

ニコッ
「気にしないでよ。」

差し伸べられたタルタリヤの手を悔しそうな様子で、空は掴んだ。どうやら負い目を感じているらしい。しかし、タルタリヤは気にした様子もなく微笑んだ。

「行けるかな?」

「あぁ、今度こそ大丈夫だ。」

スクッ

そうして、タルタリヤの手を借りて、空は再び立ち上がった。

そして…

プルプルプルプル

「…………空、大丈夫なの??」

タルタリヤの手を借りながら立ってはいる。だが、空の少年特有のすらりとした細い脚は、まるで、生まれたての小鹿の如く震えている。その様子が心配になったので、タルタリヤは声をかけた。

プルプルプルプル
「これは…、

一歩も動けないな!!」
カッ

あまりにも勢いよく感想を言うのだった。

「自分が情けなくなるな…。」
クッ…

「…君の仲間の気持ちを知ろうとする行動力、嫌いじゃないよ。」

そんな悔しそうにする空の(やや斜め上の発想ながら)仲間思いなところに、ある意味で感心するタルタリヤであった。

それ以降、こんな靴でもあんなに走るなんて…と、ヒールの靴を履く仲間達に対して尊敬の眼差しを向けて、何かあれば気遣う空であった。

-END-

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