【タル空】乾きを満たす潤い

空くんに潤いを与えくれるタルタリヤのお話です。

・不卜盧の建物の構造、完全捏造
・テイワット大陸に目薬があって、尚且つ、白朮先生が目薬を作れる設定(多分あるよね…?←聞くな)

トンッ

スッ…

壁に右手をついたタルタリヤは、空の頰に左手を添えた。

ビクッ

別段変わった動作ではないはずなのに、突然触れられた手の感触に、空は大げさに身体を震わせた。

タルタリヤに触れられている…。

その事実が、僅かに触れられるだけで過剰に反応してしまうのだ。

「…………っ。」

「………空。目を開けて?」

「…怖いから、む、無理だ…。」
フルフル

空の耳元で囁かれるタルタリヤの声は、普段にも増して優しい。だが、これから行われることを考えると妙に緊張してしまい無意識に身体が震えてしまう。

彼の優しい眼差し。

触れてくる手つき。

そして、囁かれる声…。

いっそのこと身を全て委ねてしまいたいと思ってしまうのに反して、目を固くを閉じて、首を横に振って、否定的な言葉を紡いで拒む姿勢を取ってしまう。

そんな矛盾した想いに戸惑う空の様子に、タルタリヤは呆れる訳でもなく、むしろ顔を綻ばせて再度優しく問いかける。

「怖がらないで? 全てを俺に任せてくれればいいよ。

………だから、目を開けて?」

「……分かった。」
ソッ…

「うん。いい子だね。」
スッ

タルタリヤの言葉に、ついに覚悟を決めたのか、おそるおそる、といった風に空は目をそっと開いた。そんないつにも増して素直な様子に、タルタリヤは甘やかな響きを含んだ声で褒めた後に、再び優しく微笑んだ。

右手は壁に手をついている為に、空の頰に添えていた左手で金髪を優しく撫でる。それだけで、空は先程まで感じていた不安はするすると解けていって、代わりに安心感で胸が満たされる。

タルタリヤの手の心地よさに、自然と酔いしれていると優しげな眼差しを真剣みを含んだものに変えて、髪を撫でていた左手を顎に移して固定する。自然と見つめ合う形になったので、逸らそうとするものの顎を固定されている為にそれも叶わない。

「……さあ、しっかり瞳を開いて。

俺だけを見つめて………。」

閉じそうになる瞳を必死に見開いて、タルタリヤを見つめる。

「…痛く、しないでくれ………。」

紡がれる言葉に、再び感じる不安が、またも安心感に塗り替えられていく感覚になりながら、空は震える声で言葉を紡ぐ。

タルタリヤの深海のような深い青の瞳。
空の大きな琥珀色の瞳…。

ふたつの瞳と視線がぶつかり合いだんだん距離が縮まっていく…………



ピチョン


「………いっ、たぁ〜〜〜っっっ…………!!!!!!」
ガバッ

瞳の表面に広がるスーッとした冷たさと同時に感じる痛みに、タルタリヤから離れた空は、目を閉じると同時に、両手で目を覆って身悶えながら、押し殺すような雄叫びを上げるのだった。

「空、大丈夫??」

スッ
「まるで、感電反応を起こしたみたいだ…。」

「相当沁みているんだね…。」

閉じた際に瞳の表面を覆いきれなかった滴が垂れて頰を流れ伝う感触、それを感じながら、タルタリヤの心配そうな声に、両手を離した空は絞り出すような声で答えた。


2人が現在いるのは、不卜盧の奥の間である。


不卜盧に用事があった空が、そこへ続く道へ歩いている最中、急に吹かれた強風によって、空は目に激しい痛みを感じて、目を押さえた。あまりにも痛むので、用事がてら目に効く薬を処方してもらおうとふらつく足取りで不卜盧に辿り着いたのだ。

やっとのことで着くと、店主である白朮と長生、何やらやり取りをしているタルタリヤに会ったのだ。心配そうにする2人と1匹にに、痛む目を押さえながら何とか伝えた結果、俺が差してあげるよ、というタルタリヤの提案が出た。

最初は断ろうとしたものの、白朮による、では、お2人共、こちらへどうぞ、と物腰柔らかな口調ながらも有無を言わさない圧を感じる物言いに何も言えなくなった空は観念して、タルタリヤに目薬を差してもらうことになり現在に至るのである。

しかし、薬の味が苦いことで有名な白朮が作った目薬を甘くみていたことを思い知った。

流石に目薬を苦くするのはできないだろう、とたかを括っていたが、今しがた体験してみて分かった。

目に染み込めば染み込むほど、痛むのだ。

それは、先程空が口にしたように、まるで、感電反応を起こしたようである。

しかし、痛みが引いていくと、驚くほどに目がすっきりしているのも事実である。

(流石、白朮さんの目薬だな…)

「というか、もういいだろう?! あとは自分で…。」
バッ

パシッ
「こーら。まだ片方しか終わってないよ?」

白朮の腕に感心しながらも、これ以上、タルタリヤに情けない姿を見られたくなくて、空は目薬を取ろうとする。だが、その手をやんわりと受け止められたので、なす術がなかった。


「ほら、もう一回、ね?」
ニッコリ


(〜〜〜絶対、楽しんでる…!!)

空に目薬を差すことが楽しいのか、

はたまた身悶える様子を見るのが楽しいのか、

あるいはその両方なのか。

あまりにも楽しそうに促すタルタリヤに、せめてもの抗議として睨む空だが、潤んだ瞳によるそれは、嗜虐心を刺激する逆効果なものだということに気付いていなかった。

その後、もう片方を差されて、再び雄叫びを押し殺したような雄叫びを上げる空を労るように頭を撫でながら、反射的に目を擦ろうとする空の両手、その人差し指から中指部分を片手でやんわりと掴むタルタリヤの姿があったという。

-END-


あとがき

強風にコンタクトをつけた目がやられて、擦ると砂埃が入っているし、目薬が沁みて痛い(完全に愚痴←よくない)衝動で書いていました…!

ここまで読んでいただきありがとうございます…!(まだ目に痛みを感じながら)

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