【タル空】あともうちょっとで…
塵歌壺にある本棚の高い位置にある本を取ろうと全力になる空くんのお話です。
※空くんは特殊な訓練を受けています。作中内の行動は、絶対に真似をしないようにお願い致します。
塵歌壺の邸宅。
そこへ設置された本棚前にて。
「よしっ…。」
気合いを入れたように声を上げるのは、塵歌壺の持ち主で旅人でもある少年、空である。
目の前に、まるでドラゴンスパインのようにそびえたつ本棚に向かってあることをしようとしていた。
それは、高い場所にある本を、脚立を使って取ることである。
しかし、普通に取るのでは、空のまだまだ未来に向かって伸びしろがある身長では到底届かない。
そこで、脚立に向かって、助走をつけてジャンプした後に、その飛翔分の跳躍を利用して本を取る、という作戦を思いついたのだ。
(できれば、使いたくなかった…)
あまりにもリスクが高いので、使いたくない手段ではある。空も重々承知していることだ。
しかし、背に腹は変えられない。
何しろ、今すぐ読みたい本の続きが、その高さにあるのだから…。
ググッ
踏み込んでから…
バッ!!
駆け込んだ空は、勢いよく脚立へと向かう。そして…
バッ!!
パシッ!!
(!! 取れた!!!)
取れたことに勝ち誇ったような気分になって、無意識のうちに空は微笑む。
だが…
グラッ
「わわっ!!」
バランスを崩した空は、衝撃を覚悟して目を閉じる。
だが…
(痛………、くない…??)
いつまで経っても来ない衝撃に、ゆっくりと目を開ける。
そんな空の視界に映り込んで来たのは…
「空! 大丈夫?!」
焦った表情のタルタリヤであった。
(タルタリヤ!? いつの間に…!!)
驚きに目を見開く空は、ようやく自分がタルタリヤによって、横抱き状態…、所謂お姫様だっこをされていることに気付いた。
まだ動揺の気持ちが強いが、どうやら、尋ねてきたタルタリヤが、素早い身のこなしで空を抱え込んだらしい。
「あ、ありがとう。ところで、そろそろ降ろして…。」
「駄目だよ。」
キッパリ
「えっ、何でだよ!!」
お礼の言葉を述べながら、空は降ろすように問いかける。だが、存外きっぱりとした口調で断られてしまった。想定していなかった返答に、抗議の声を上げる。
「だって、降ろしたら、また空が危ないことしそうだし…。」
「うっ。悪かったって…。」
図星過ぎる指摘に、ぐうの音も出ない空はたじろぐ。そして、何とか降ろしてもらえるように思案するうちに、タルタリヤからある提案を言われてしまう。
「だから、高いところに届かない時は、俺が運ぶよ。」
「なっ、えっ、はぁ!?」
「だから、もう危ないことしないでね??」
「何で、そんな…。」
とんでもないことを言った上に、トントン拍子で進めようとするタルタリヤに抗議しようとするが、何だか、いつも以上に隙を与えない圧を感じて、空は言い淀んでしまう。
「あぁ。でも、今回はしばらくこのままね。」
「!!??」
ギョッ
さらなる追い打ちをかけるような提案に、空は目を見開いた。
「だから、空。
安心して、俺に身を委ねてよ?」
ニッコリ
そう言うタルタリヤは、口元は弧を描いているが、目が笑っていなかった。
(あ、安心できるかーーー!!!)
そう内心で叫ぶ空だが、健闘虚しく、しばらくは横抱きにされたまま連れ回されたので、2度とやらないと反省したという。
その後、背の低い本棚に変えるか、しかし、タルタリヤの横抱きが案外居心地が良かったので、そのままにするか、しかし、羞恥心に耐えられるか…、と盛大に悩む空の姿があったという。
-END-
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