【タル空】華を想い合う

いつも旧貴族のシリーズの聖遺物をつけているのはなんでか、と空くんに問いかけるタルタリヤのお話です。


「また髪に花をつけただろ!!」

「えぇ〜?? いいじゃん、似合ってるよ?」

「そういう問題じゃない!!」

タルタリヤは憤慨する空を宥めていた。原因は、空の三つ編みの根元につけられた旧貴族シリーズの青い百合の花だ。どうやら、タルタリヤが後ろからこっそりつけていたことがバレたようだ。何度かやられていることと仲間達に微笑ましげな笑みを浮かべられたのが、恥ずかしくてその矛先をタルタリヤに向けているのだ。

「全く、早く取れよな!!」
くるっ

「はいはい。」
スッ

真後ろに取り付けられている為、空自身では取れない。背を向けてタルタリヤに外すように訴えればお気楽な返事と軽い音がした。

ジッ
「………。」

「? どうしたんだ?? 花をじっと見て。」

取った旧貴族シリーズの花をじっと見るタルタリヤに、空は疑問を投げかけた。

「何でいつも旧貴族シリーズをつけてるの??」

ギクッ
「そ、それは、1番効果が出るからだ!!」

「そっか。」

今度は逆に質問で返された為、慌てて答えた。だが、その回答には別の意味も含まれている。確かに、岩元素の時に最も効果が出るのは旧貴族シリーズだ。他の聖遺物も造形など気に入ってることもある。

だが、他に理由を挙げるとするならば、この聖遺物の花の色が他のどのシリーズの聖遺物の花よりもタルタリヤの深い青の瞳の色に近いからだ。身につけていれば、例え離れていてもそばに居てくれるような気がするのだ。

チラッ

「? どうしたの??」

「何でもない。」
プイッ

だが、恥ずかしすぎてそれは言えっこない。未だに旧貴族シリーズの花を見つめるタルタリヤを盗み見すれば、視線に気付いたのか尋ねてきたが、何でもないようにそっぽを向いた。

「あ、そうだ。」
ゴソゴソ

「??」

「はい、この花を今日1日貸すよ。」

手渡されたのは沈淪の心シリーズの聖遺物、金メッキのコサージュだ。水元素の効果が最も出る聖遺物でもある。

「突然どうしたんだ??」

「そのかわり…俺がこの花を1日借りるね。」

「って待て! そんなことしたら効果が…。」

「でもフルセットだから変わらないでしょ?」

「うぐっ…。」

タルタリヤの言うことももっともだ。確かに4セットで効果が発揮できるので、どれかひとつ別の聖遺物を身につけても問題ない。

「ね? 俺も偶には違うのを付けてみたいんだよ〜。それに、聖遺物ひとつ変わっただけで俺の強さは変わらないさ。」

「………分かったよ。」

「やったね! ありがとう、空。」

そこまでいうなら、と返答すれば嬉しそうにお礼を言った。

(まあ、偶にはいいかもな)

金メッキのコサージュを見つめていると、不意にタルタリヤは近付いた。

「そうだ、空。」
スッ

「何だ…。」

「その花、俺だと思って大事にしてよ?」

「!!」

空の手にした金メッキのコサージュに触れながら、どこか不敵な笑みを浮かべた。

「俺もこの花を空だと思って大事にするからさ。」
チュッ

カァッ
「なっ!! 恥ずかしいことばっかり言うな!!」
バッ

離れたかと思えば、今度は旧貴族シリーズの花に口付けた。その様子すら絵になることと立て続けのタルタリヤの行動に、顔をほのかに赤くした空はそれを払拭するように、タルタリヤから花を取ろうとする。

ヒョイッ
「ははは。じゃあね。」
タタタッ

だが、かわされてそれも虚しく終わり、タルタリヤは軽やかに去っていった。

「全く…。」

顔の熱を抑えようと手で仰ぎながら、金メッキのコサージュを見つめる。そういえば、以前バーバラが身につけていた聖遺物の花に感謝の言葉を言ってから、戦ったら今までより効果が出た、と言っていた気がする。

キョロキョロ
「………。」

じっ

周りを見渡して誰もいないことを確認した空は、金メッキのコサージュを見つめる。そして意を決して行動に移した。

「…いつもタルタリヤを強くしてくれてありがとう。」
チュッ

お礼を言いながら、先ほどタルタリヤがしていたように口付けた。

カァァァッ
「って何やってるんだ俺!!」

だが、次第に恥ずかしくなり治った熱がぶり返して来たのを感じてその場を去った。

「何、あの可愛い生き物…。」

それを物陰から見ていたタルタリヤは、身悶えていた。去ったと見せかけてすぐ戻ろうとしたら、空の可愛らしい行動に胸の動悸が激しくなりしばらく動けないでいた。

-END-

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