再会は、きっと、すぐそこにまで

思い馳せるナヒーダのお話です。

同行できなくなって伝言を残した以降のナヒーダ視点及び空くん視点のお話です。ちょっとネガティブ気味…?←

魔神任務の軽い振り返りっぽい感じなので、全てではないですが、

魔神任務スメール編(現在開放分まで)ネタバレ全開です。

なので、クリア後読みを推奨します。
クリア前に読んでしまっても苦情は受け付けないのでご了承下さい…。

・ほぼ勢い任せに書いたので読みづらさ多々あり…←
・ナヒーダの口調及び比喩表現迷子気味
・現在のナヒーダの状況完全捏造気味
・憑依などの能力自己解釈気味

参考資料
・サマータイムオデッセイ
・魔神任務 現在開放されているスメール編
・【原神】ストーリームービー「砂中の遺事」
・ナヒーダの紹介文テキスト

参考資料URL
・鳥の視界の見え方
https://logmi.jp/business/articles/157552

・スノードロップの花言葉


※初出 2022年10月24日 pixiv


スラサタンナ聖処にて。

まるで花びらの形をした葉に包み込まれたようなガラスの意匠を凝らした造りの聖処内には、天井と床、双方から淡い蒼緑色に発光する枝が伸びている。その中央の球体状の繭には、何かを守るように、あるいは閉じ込めるように鎖のような紋様が宙に浮かび上がっている。

パチッ
スッ…

「…………。」

その繭の中、目を覚まして佇まいを整えたのは、真っ白な髪に緑のグラデーションがかかった髪を向かって右にサイドポニーテールで括り、それを彩るように連なる葉のような髪飾りがある少女、ナヒーダであった。

新緑の中で花咲く真っ白な花、その花びらのような瞳孔を持つ瞳を瞬かせた彼女こそが、スメールの草神である"クラクサナリデビ"である。

(あの子達は、上手くやっているかしら…)

繭の中に浮かびながら、ナヒーダは心配そうに見上げて思案した。脳裏に浮かぶのは、旅人の少年、空と不思議な妖精パイモンのことである。

教令院の追放者で、執行官でもある"博士"が意識を閉じ込めておく方法を見つけて、空とパイモンと同行ができなくなった。それから何日経ったのか、ナヒーダにも分からなかい。何せ、この空間に時間の流れを知る術はなくとても封鎖的だからだ。

普段であれば、時間を知る為にナヒーダが取る手段は、小鳥などの小動物やキャサリンに憑依することで、建物にある時計を見たり、あるいは、時計を見ずに太陽の位置から把握することである。

だが、それが断たれた為、自分の残した伝言をなぞらえて、空とパイモンが行動していることを祈りながら、自身にも何かできないから模索していることしかできない。できることが制限された中での思考は、まるで、鳥に翼を使わずに飛んでみて、と言われることに等しい。つまりは、なす術がないのと同義だった。

スッ…
(私が一人前の神なら、こんなに手を煩わせてしまうことはなかった…)

ふとナヒーダは自身の手を見つめる。小さく頼りない手は、否が応でも自分が半人前の神であることを痛感させる。教令院の賢者達が、自身を見放して"存在しない神"として扱うのも納得できる。もし、逆の立場であったなら、ナヒーダ自身も決していい顔はしないだろう。それは彼女自身が1番理解していることであった。

だが、今は、それと同時に、空と意識交換をして少しの間、身体を借りていた時のことを思い出させた。

あの時は、手配されたエルマイト旅団から逃げることに加えて、"博士"に今後の空達の行動を悟られないように、隠語で伝言を残すことに必死で、あまり周囲の状況を気にかける余裕は無かった。だが、そんな焦りの中、ほんのひと時でも空の身体を借りたナヒーダは心の奥底では、喜びを感じ取っていた。

ナヒーダ自身より高く、だけど、キャサリンよりは低い視界と身体で、五感を感じ取れたこと。

(あなたは、いつもあんなふうに世界を見ているのね…)

これが、空が普段見ている世界だということ、さらには自分とは違う感じ方に高揚感を覚えたものだ。場違いな感情だと自身を戒めていたが、やはり気持ちを誤魔化すことはできなかった。

特に衝撃を受けたのは…

視界に映る万物の色彩があまりにも鮮やかなことだった。

七神の中では最も若く、そして賢者達によるこの状況も相まって、あまり世間を知らないナヒーダではあるが、夢の中で色とりどりの光景を見てきたのでその鮮やかさ自体は知っていた。また、普段は小鳥やキャサリンに憑依することが多いので、その時にも垣間見ることができる。しかし…

夢は覚めた瞬間、色を失ってしまう。

鳥は人間よりも紫外線を感じ取れるから、より鮮やかに映るが、些か眩しく感じる。

キャサリン、正確には、バイオニック人形の視界はアーカーシャ端末を通したものなので、その視界は端末の深緑色に包まれている。

だからこそ、意識交換をした時の空の身体で五感を感じたことは、ナヒーダにとって何より得難い体験だった。

見上げた空と草花の色鮮やかさも。

草花の香りを感じたことも。

走った時に地面を蹴る衝撃や空気を肌で感じたことも。

何より鼓動、"生命"を感じ取れたこと…。

このことがより一層ナヒーダ自身が"守りたいもの"が何であるのかを再認識させた。

かつて、幼少期のドニアザードに問いかけた時も自身の力不足を痛感して、心の中が霧の中の雨空のような不思議なもやもやとした気持ちになった。このことを空に問いかければ、それは、申し訳なさで胸がいっぱいになったのだ、と言っていた。まだ、感情の機微には疎いナヒーダには、あの時の気持ちとその言葉がとてもしっくり来たことをよく覚えている。

それに、繰り返す花神誕日を空達にアドバイスをしながら、また、自身にも出来ることを限界までした結果、無事解決したことで、過去の自分が抱いた気持ちが、少し和らいだのだ。そのおかげなのか、その後、空達と接するたびに少しずつ感情の機微が分かってきたような気がした。

それを気付かせてくれた空達を、そして、スメールの民達を守る為にも、ナヒーダは、自分自身を奮い立たせる。

正直にいえば、不安は尽きない。

一人前の神には遠く及ばないのかもしれない。

教令院の賢者達も認めはしないのかもしれない。

それでも。

半人前でも神であるから。

「私も決して諦めないわ。」

強い決意を秘めたその瞳…。

それは、"逆境の中の希望"という花言葉を持つスノードロップのような輝きを秘めていた。

同時刻。

アアル村にて。

遮蔽物が何もない砂漠の澄み切った夜空には、まるで宝石が散りばめられたように星々が輝いている。時折、月が砂漠を照らすてな、周囲の砂漠が薄いエメラルドグリーン色に包まれて、目に見えないオアシスの水面を映し出したように錯覚させる。

ハッ
「!!」
バッ

そんな空が見えるアアル村の村長の家の屋根にて、星空を見つめていた長い金髪を三つ編みにした旅人の少年、空は、誰かに呼ばれたような気がして振り返った。その衝撃で、三つ編みがしっぽのようにふわりと揺れる。

(ナヒーダ…)

もしかしたら、小鳥に意識を憑依させたナヒーダかもしれない、と淡い期待を抱いていた。しかし、伝言を思い出して、気のせいだったと分かった瞬間、脱力感に襲われた。

(そういえば、金リンゴ群島でもこんなことがあったな…)

今にして思えば、再び訪れた金リンゴ群島のあの時から、既にこの知恵の国スメールへの旅は始まっていたのかもしれない。

幻境のことが解決した時に聞こえてきたあのの"声"、それは、間違いなくナヒーダだろう。しかし、あの時は、まさかスメールの神がこんな扱いを受けていたことを知らなかった。

紡がれた言葉からして、遠出ができない状況であることを察することはできたが、閉じ込められている状況である、とまでは想像していなかった。

それは、ナヒーダと意識交換をして、彼女の置かれている状況を把握してから知ったことだった。

パルディスディアイでエルマイト旅団の猛攻を退けながら、パイモンの声に振り向けば、ナヒーダに迫る手に必死に手を伸ばした。

だが、すんでのところで届かずに、ナヒーダ、正確に言えばキャサリンの体をエルマイト旅団の腕が貫いた直後、失意と動揺に苛まれた。

そんな中で、震えながらも伸ばされたキャサリンの指に触れ合った瞬間、視界が揺らいだ。

いや、正確には、意識が揺らいだ結果だったのだろう。

恐る恐る目を開ければ、着慣れない衣服の感触と自分のものではないとても小さな手が視界に映り込んだ。その後、辺りを見渡せば、自分自身を取り囲む球体状のものに閉じ込められているのが分かった。

スラサタンナ聖処は、外見こそ見たことがあるが、中がどうなっているかはまるで分からなかった。

だからこそ、より一層神がこんな扱いを受けているとは、と衝撃を受けたのだ。

ナヒーダ自身も、半人前の神だと嘆いていた。だが、意識に憑依、という時点で既に神業である。それに、頭もとても良くて空達にアドバイスしてくれたし、"博士"によってスメールの民が操られた時は、スメールの民は勿論のこと、空達のことも守ってくれた。自らも顧みないほどに優しい心の持ち主だ。

それこそ神の如き慈愛の精神を持ち合わせているのだ。

そうでなければ、ドニアザードのようにクラクサナリデビを信奉する者は現れない。それに、ドニアザードだって、ナヒーダが単に"神であるから"という訳で、信奉しているわけではないのだ。ナヒーダの優しさに触れたからこそ当時、塞ぎ込んでいた彼女は救われ生きる活力を得た。

まるで、乾いた大地に降り注ぐ慈愛の雨のように、ドニアザードにとって、ナヒーダの優しさはその心に深く、深く染み渡ったのだろう。

それは、紛れもなくナヒーダ自身の優しさによるものであり"クラクサナリデビ"を信奉する者がちゃんと存在している証であった。

それに、マハールッカデヴァータの足元にも及ばない、と嘆いていたが、実際は…

(いや、それは再会できたら言おう…)

考えたことを振り払うように首を振る。それは、スカーレットキング(キングデシェレト)に関することを調べていた最中で、知った衝撃の事実。それはナヒーダ本人に直接伝えるべきだ。

それに、あろうことか教令院は"散兵"スカラマシュを新たな神として誕生させるために、準備を進めているのだ。既に"クラクサナリデビ"という神がいるにも関わらず、だ。

それは、教令院が"クラクサナリデビ"と向き合うことを選ばなかった証拠であり、同時に神ですら残酷な目に遭っている事実が浮き彫りになった。

教令院がどれだけナヒーダを冷遇しているのかが分かると同時に、怒りが込み上げてくる。だが、その矛先を少しでも鎮める為に深呼吸をして改めて今後の目的を明確にする。

教令院の賢者達を倒す。

"散兵"の野望を止める。

そして、"クラクサナリデビ"…

ナヒーダを救う。

スッ
「ナヒーダ…。必ず、また会おう。」
ギュッ

そう言うと、空は伸ばした手で握り拳を作った。

今度こそ、伸ばされた手を掴む為に。

ナヒーダの置かれている状況を打破する為に。

その決意が、握り拳に、そして、覚悟を宿した琥珀色の瞳に色濃く表れていた。

月は、梟と叢雲に隠された。
太陽が無ければ月は輝けない。
だが、太陽はとっくに居ない。

しかし、悲観することは決してない。

何故ならば…

寄り添う星達が、きっと月に明かりを灯してくれるはずだから。

-END-


あとがき

ナヒーダを早く助けたい気持ちが元素爆発したので、それを抑える為に書き綴ったお話です。

早く助けたいよ〜! ナヒーダああぁぁあ!!!
(心の叫び)

何気に、七神がピンチのままガチャ開催されるのって初めてですね…!!←不敬過ぎ

閑話休題。

ナヒーダは、自分が半人前の神であると自覚があり、力不足だと痛感しながらも、努力を惜しみません。また、幼少期のドニアザードにかけた言葉、花神誕日の輪廻を繰り返した空くんとパイモンにしてくれたアドバイスなど、度々差し伸べてくれるその小さな手の優しさは計り知れません…。

そんなナヒーダのことを蔑ろにする教令院の賢者達、また、冷遇されている立場を利用しようとする"博士"やスカラマシュ許すまじ…!!という気持ちで書きました!

あと、ナヒーダ自身の憑依のことに関しては完全に自己解釈&捏造です!!←

当然ながら、憑依は自分自身とは違う身体になるので使い勝手とか視界ひとつとっても違うよな〜、というのと、生まれてすぐスラサタンナ聖処に連れてこられた上に、憑依するのが小鳥だったり、スメールの民には憑依しなくてキャサリンに憑依したりしていたら…

もしかすると、生きた人間として憑依、正確には意識交換したのは空くんor蛍ちゃんが初めてだったりする…?

という解釈で書きました!!
(あくまでも実装前、ということでご了承ください…)

長くなりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございます!!

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