ピアスだと思ってた??


ある日、タルタリヤに対して、何故か違和感を覚える空くんのお話です。

めっちゃ短いです。

・キャラの耳飾りを完全自己解釈

タルタリヤは挟む(ごく軽度)タイプ
空くんはマグネットタイプ

・原神のキャラは、耳飾りを着けているキャラが多いですが、ゲーム内モデルで耳裏をよく見てみると、もしかして、ピアスタイプじゃないのかな?と思っていたら、思いついたお話です(メタいな…)

・タルタリヤが、若干セクハラ気味?←おい




塵歌壺の邸宅内。

そのリビングにて。

じっ…
(今日のタルタリヤ、なんかいつもと違うな…)

テーブルに座った空は、向かいに座るタルタリヤをいつにもなく熱心に見つめている。何故だか、今日の彼に対してどことなく違和感を覚えてもやもやしていたからだ。

「ど、どうしたの? そんなに見つめて…。」

そんな空の様子に、流石のタルタリヤも居た堪れないのか、頰に冷や汗を掻きいて珍しくどもりながら問いかけた。

ピクッ
(ん?)

「タルタリヤ…、耳飾りはどうしたんだ??」

そうしてしばらく見ていた空は、タルタリヤの左耳にいつも身につけている耳飾りがないことに気付いた。

「あれ?」
ピトッ

「本当だ………。」

空に言われてからはじめて気付いたようで、左耳に手を当ててから、タルタリヤは声を上げる。どうやら本当に気付いていなかったようだ。

「今日、ちょっと慌てていたからね。」

「そうなのか………、って、んん??」

タルタリヤの言葉を聞きながら、テーブルの隅のある一点を見つけた空は、声を上げる。

そこには…

タルタリヤの耳飾りがあったからだ。

特徴的なやや鋭利な形をしているそれは、間違いなくタルタリヤの耳飾りであった。

どうやら、以前、塵歌壺の邸宅内に来た時に忘れていったようだ。

「おい、ここにあるぞ。」
スッ

ガタッ
「あっ、ありがとう、空!!」
スタスタ
スッ

「忘れるなよ…。」

ゴソゴソ
「うん。気を付けるよ。」
スチャ

椅子から立ち上がって、空の元に来たタルタリヤは、耳飾りを受け取ってお礼の言葉を言う。空から少し不注意を嗜めるような言葉をかけられても気にせずに、むしろ返事をしながらも手馴れた様子で、あっという間に耳飾りを付け直した。

(それにしても…)

「ピアスじゃないんだな…。」

手にした瞬間によく見えた耳飾りの形に対して、空は呟くように感想を漏らした。てっきりピアスなのかと思っていたが、その形は、挟み込むタイプであった。それも、比較的挟んだ耳たぶの影響を軽減するように考慮されたものであった。

「うん。トーニャやテウセルが真似したら、俺が嫌だからね。」

だから、マグネット式なんだ、と話すタルタリヤに妙に納得を覚えた。確かに、弟妹が多いとそうなるのかもしれない。特に、小さいうちは、弟妹は、上の兄や姉の真似をしたがるものだ。そう考えると、家族を大事にするタルタリヤらしい考慮だといえた。

(タルタリヤらしいな…)

「そういえば、空の耳飾りはどんなタイプなの?」

「俺はマグネット式だ。」

そして、話題は空の耳飾りの話となる。空はマグネット式の耳飾りである。理由は、単に痛い思いはしたくないからである。それに、健康面を考慮した結果、このような形になったのだ。

「そうなんだね…、

あ、確かにそうみたいだ。」

「そうだ、………って、え!?」
バッ

タルタリヤの手には、いつの間にか、空の耳飾りが握られている。玉の部分が元素の色を宿すそれは、間違いなく空の耳飾りだ。思わず左耳を触って確認すれば、確かに耳飾りの存在が消えていた。

(いつの間に…!!!)
スッ…

じぃっ………

まるで、手品のように、いとも簡単に取られていたことに驚きを隠せない空は、手を離して恨めしげにタルタリヤを見る。

「あははは。気になったから、つい、ね。」

「つい、じゃない!!」

「ごめんごめん。お詫びに付けてあげるからさ。」

「えっ?!」

謝る気配がないタルタリヤに、抗議していれば、思ってもみなかった提案が飛び出したので、空は素っ頓狂な声を上げる。

「そ、そこまでしなくていい!!」

「でも、付けづらいでしょ?」

「う…。そ、それはそうだが…。」

タルタリヤに耳飾りを付けられる絵面を想像して、気恥ずかしくなった空は断ろうとする。だが、タルタリヤの尤もらしい言葉に説得力で負けそうになる。

確かに、いくらマグネットタイプとはいえども、空は耳飾りを鏡を見ながらでないと付けづらいのだ。それに、この場には鏡がないので、鏡がある場所に行きたいのだが、耳飾りはタルタリヤの手の中である。

渋っていた空であるが、やがて…

「分かった…。頼む。」

「うん! 分かった。」
ニコニコ

そうして折れて、タルタリヤの提案を受け入れるのだった。

「じゃあ、付けるから目を閉じてね?」
さら…
スッ

「あぁ。」
スッ

タルタリヤと空は、椅子を近くに寄せて、より近くで向かい合うように座り直した。そうして、タルタリヤの言葉を合図に、空の左耳元へ右手を添えたタルタリヤは、邪魔にならない程度に、空の髪を数束ほど左耳へとかけてから付けようとする。

(すぐに終わるだろ………)

何故か目を閉じるように言われて、一瞬、疑問に思うもののすぐに終わるだろうと思っていた空は素直に従った。

だが…

ふにっ

「!??」
パチッ

突如、耳に触れられた感覚に、驚いた空は思わず目を見開いてしまう。

「あれ? どうしたの??」

「い、今…!!!」

「ほら、動くとつけられないよ?」
ふにっ

「〜〜〜っっっ?!!!」

困惑する空が問いかけたことに対して、全く気にかけないタルタリヤは、今しがたしたように、空の耳たぶを触る。

そう。

何故だか、タルタリヤは、耳飾りを付けるはずの左耳…。正確には、耳たぶの部分をどういうわけだが指で摘んで触っているのである。

何かの間違いかと思っていた空は、再び行われたタルタリヤの行動に、間違いなく触れられていると確信を持つと同時に、ますます困惑に目を瞬かせた。

ふにふに
「それにしても、空の耳、柔らかくて気持ちいいね…。」

「………っっっ!!!」
ギュッ
(く、くすぐったい…!!!)

そんな空に構わずに、タルタリヤは感触を楽しむかのように、耳たぶをふにふにと触りながら言葉を紡ぐ。止めようとする空であるが、あまりにもこそばゆい感覚に、身体から力が抜けてしまい、せめてもの抵抗として、それから逃れようと目を閉じるしかなかった。

そんなくすぐったさに耐えるように目を閉じた空からは見えないだろうが、タルタリヤはその心地のいい感触と空の反応を見て、恍惚とした笑みをしていた。

しかし、空からしてみればたまったものではない。

何しろ、空にとって、耳は身体の中で特にくすぐったく感じてしまう部分である。だからこそ、他人に触られるのは苦手だからだ。

(……っ、は、早く付けてくれ…!!)

ふにふに
(ずっと触っていたいなぁ………)

そんな空の切なる思いとは裏腹に、タルタリヤは空の耳の感触を楽しんでいた。

自分の耳とは違う小ぶりな空の耳は、触れた瞬間、その柔らかさに驚いた。ふと好奇心に駆られて、少し力を込めてみれば、まるでマシュマロのように柔らかな感触に病みつきになってしまったように手が止まらなくなったしまった。

そんな感触に、ずっと酔いしれていたいと思っていたタルタリヤであるが…

じわ…
じわ………

(あれ? 何だか赤く……)

スッ…

タルタリヤの指の隙間から目に見えて分かるほどに、触れていた耳が少しずつ赤く染まっていくのに気付いた。そんなタルタリヤの右手に、空が左手をそっと添えたのが見えたので、タルタリヤは空へと視線を送った。

そこには…

「は、早く付けてくれないか??」

フルフル…

きゅっ…

「!!」
ピタッ

閉じていた目をいつの間にか開けていた空が顔を真っ赤に染めた姿が、視界に映り込んでいた。さらに言うならば、身体を震わせてながら、タルタリヤに懇願するように、その瑞々しい唇を震わせて囁いた。

困ったように眉を下げながら、2人の身長差故に必然的にこちらを上目遣いで見てくる琥珀色の瞳は、少しばかり潤んでいるように見える。

さらには、空の左耳に触れるタルタリヤの右手…、それに添えた空の左手は、少し引き寄せるように近付けている。離してくれるようにタルタリヤの懇願する気持ちが表れながらも、しかしながら、離したくないという気持ちが読み取れるような、そんな矛盾した気持ちが現れているようであった。

そんな空の恥ずかしがる様が、まるで、小動物のようにとても可愛らしいものであった為、それを間近で見たタルタリヤは、衝撃を受けたように目を見開いて、動かしていた指を止めた。

(……っ、これは、なかなか…)
ゴクッ

「? タルタリヤ??」
コテン

ハッ

パッ
「!! な、何でもないよ?! ごめん、早くつけるから、ちょっと目を瞑ってくれない!!??」

ビクッ
「あ、あぁ。頼んだ…。」
ス…

スッ

無意識のうちに生唾を飲み込んでいたタルタリヤであるが、反応が無いことに疑問符を浮かべながら、空は首を傾げて尋ねた。

そんな空の様子を見て、我に返ったタルタリヤは、慌てて誤魔化すように、一度手を離して、空に目を瞑るように声をかけた。

その様子に、若干驚きに肩を揺らしながらも、空は添えていた左手を離して目を瞑ってくれる。

(……もう、その反応はズルいよ、空……)
カァ…

疑問符を浮かべながらも、素直に目を瞑る空の様子が、いつもにも増して無防備に、さらには、普段にも増してますます愛らしく感じてしまう。

そんなふとした瞬間に出る無自覚な愛らしさに、まるで、熱が移ったように、つられて照れるタルタリヤであるが、その後、無事に付け直したという。

-END-

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