温もり、和んで、まどろみゆく

綾人さん誕生日おめでとうございます!!(^ω^) ※書いた当時
その記念とエピソード動画を見て思い付いたネタです。

忙しい人にとって何が1番のプレゼントになるか…、と思った時に、個人的に考えたのが休みでしょ!となったので、それも踏まえてのお話です。

…って、発表から誕生日までの間隔短かぁっっっっっ!!!(本音)

まさかの誕生日発表に慌てて書きましたwww
(綾人さんのエピソード動画を見て、案の定忙しそうにしていたので、休もうよ…、となりました…)

原神の働きすぎキャラを見ているうちに"働いているキャラを休ませたい症候群"が発症しましたので、その願望も含めてのお話です。←そんな症候群はない

・短い&いつも以上に荒い
・緋櫻毬の使い方捏造

参考資料
・綾人さんのエピソード動画「夜を照らせし灯火」

※初出 2022年3月26日 pixiv


神里屋敷、当主の間にて。

「…ふぅ。」
カチャ

文机に乱立する書類、巻物に囲まれながらため息を吐くのは、神里家当主である青年、神里綾人だ。筆を置いた後に、書類仕事で疲れた目頭をマッサージするように人差し指と親指を動かした。

久々に屋敷へ戻れた綾人だが、今度は溜まりに溜まった種類が文字通り山のように積み上げられていた。その山を切り崩していくように奮闘した甲斐もあって、予定よりも早く終わらせることが出来た。

グーーーッ
ハァ…
「…そろそろ休憩にしますかね。」
スッ

カタン

「ん?」
クルッ

凝り固まった身体を解すように、綾人は伸びをしてからそうひと言呟いた。すると、何やら軽い音が響いた。その音の方へ振り向いた綾人の視界に、何やら物が置かれているのが映った。

「何でしょうか?」
スタスタ

スッ
「これは…。」

置かれた物の場所へと歩いて、かがんで確認すれば、傍にはメモが置かれている。

内容は…

"若! 目が疲れたでしょう。温かいおしぼりを目に当てると効くみたいですよ。"

クスッ
「これはトーマですね。」

元気いっぱいで分かりやすい文字で書かれた文面が目に飛び込んできた。読んだ瞬間、脳裏に家司を務める活発な青年、トーマが浮かび上がった。そのイメージがあまりにも活き活きとしているので、思わず笑みを溢した。

「どれどれ…。」
スッ

ジワァッ
ホワァッ

「……これは、確かに温かくて気持ちいいですね…。」

メモの通りに、丁寧に巻かれた温かいおしぼりを手に取って、目を閉じた後にそっと当てた。じんわりとした温かさは、書類仕事で疲れた目に温もりと癒しを与えてくれる。それを用意してくれたトーマの気遣いが、まるで灯火のような温かみを垣間見るようであった。

その温かさに堪能していると…

コトッ

スッ
「おや? また音が…。」
スタスタ

廊下方面に少し固めの音が響いた。それを確かめるべくおしぼりを離した綾人は廊下へと歩を進めた。廊下の真ん中には、ぽつんと茶器が置かれていた。よく見れば、またメモが置いてある。

拾い上げて読むと…

"お兄様。緋櫻毬で煎じたお茶を淹れてみました。初めて作るので味は自信がないのですが…。まだ冷え込みますので、無理はなさらないでくださいね。"

「これは、綾華ですね…。」

流麗な字で丁寧に書かれた文面で、すぐに常日頃から品行方正な妹、綾華の扇子を当てて微笑む姿が目に浮かんだ。そのメモを見てからお茶を見れば、確かに薄い桜色をしている。また、緋櫻毬の花びらがひとひら浮かんでいる。

「緋櫻毬のお茶とは…。また斬新ですね。」
コクン

ホワァ…

ホゥ…
(温まりますね…)

ひと口飲んだ綾人は、胸に広がるほわほわとした温かさに安堵を感じてため息を吐いた。不思議と甘みを感じるのは、緋櫻毬で煎じたからだろうか。いや、きっとそれだけではないだろう。

「綾華は、またお茶の腕を上げましたね…。」

これも綾華のお茶を淹れる腕が上達したことによる賜物だろう。茶葉は、栽培法や発酵によって味を変えるが、基本的に同じ茶葉を使用する。さらには、茶を入れる者の腕前も少なからず関わってくるのだ。

それを踏まえた上で、尚遠慮がちな文面に、控えめで、かつ気配り上手な綾華の性格が垣間見える。

(そういえば…)

「もう、そんな時期なんですね…。」

いつの間にか飲み終わってしまう程に緋櫻毬の茶を味わっていたようで、茶器の中は空っぽになった。それと、花見坂に咲く桜がより綺麗に咲いていた様子を思い出した。季節の巡りに、綾人がしみじみとしていると…

バサッ!

ビクッ
「え? こ、今度は何でしょうか??」
タタッ

大きな音に少し驚きながら、綾人は音の方へ少し駆け足になりながら向かう(無論、しっかりとおしぼりと茶器は抱えている)。

スッ

フワァッ

「これは…。」

部屋に入れば、心地いい香りと布団が綾人を迎えた。よく見れば傍に香炉とお盆、それに掛け布団がめくれた状態で置かれている。まるで、"すぐにでも寝て欲しい"と訴えているようだった。

そして…

「こんなところにもメモが…。」
カサ

案の定、お盆の上にメモが置かれていた。
その文面には…

"布団は干したてで、安眠効果がある香炉も用意した。温かいお布団で休むといいぞ。P.S. お盆におしぼりと茶器を置いてくれ。"

「こちらは、きっと旅人さんですね。」

トーマと綾華、2人とはまた違った字の癖と、飾らない口調…。

即座に、異国の旅人の少年、空の姿が浮かび上がった。旅人という身分故か、立場に関係なく綾人に接してくれる貴重な御仁だ。それに…

「この“P.S."というのが、何だか不思議ですが…。やはり、旅人さんは面白いですね。」
クスクス

色々な世界を旅してきた故か、時折新鮮な情報を与えてくれる。今回はこの“P.S."という文字である。何かしらの意味があるのだろうが、分からないので、今度聞いてみよう、という楽しみと、綾人にとっては面白いことをする、と感じる空の行動力に笑みを溢した。

スッ
コトッ
「それでは、お言葉に甘えまして…。」
スッ

バサッ
「ふぅ…。」
フワッ

メモの文面通りにお盆におしぼりと茶器を置いてから綾人は寝っ転がった。確かに干したての布団特有のいい匂いがする。それを堪能しつつ掛け布団を腰元までかけた綾人は一息ついた。窓から差し込む柔らかな午後の陽気にはもうすぐ来るであろう春の訪れが近いことを告げていた。

(春眠、暁を覚えず、に近いですね…)

今の状況に少し似ているようだと思いながら、綾人は物思いに耽った。仕事にかまけてしまうとついつい季節の巡りの機微に対する反応が鈍くなってしまう。稲妻の地ならではの1年中咲き誇る桜などの存在もあるが、やはり季節の巡りは大切にするべきだ。寝っ転がりながら綾人はそう再認識した。

フワッ…
(ポカポカしてだんだん眠くなってきました…)
ウトウト…

疲れた目はおしぼりによって。
少し冷えた身体には緋櫻毬のお茶によって。
そして、少し甘さを含んだ心地いい香りとそれを包み込むふかふかの掛け布団…。

それらの温もりによって、綾人は夢へと誘われていった。

そんな綾人をこっそり見守る影がみっつ…。

ススッ…

コソッ

コソコソ…

コソソッ

(寝ましたか?)

(あぁ、ぐっすり寝てるな)

襖をほんの少し開けて小声で話すのは、綾華と空だ。

(これも旅人の知恵のおかげだな)

(えぇ、とでも興味深いものばかりでした)

(役立てたなら何よりだ)
グッ

さらにトーマも話に加わって、綾華と共に空の知恵を褒めた。それに対して、空は得意げにグッドポーズをした。

何気ない歓談の中で、2人から綾人の誕生日を聞いた空は大慌てで準備の手伝いをしたのだ(正直に言うともっと早く言ってくれ、とも思ったが、仕方ないことか、と割り切ることにした)。幸い、旅していく中で得た香炉作りやその他諸々の知恵が役に立ったので良かった。

しかし、問題は決行をどうするかだった。綾人は政務で屋敷にいない場合が多い。

困った2人に、空のアイディアが手を差し伸べた。

綾人の仕事が終わったタイミングを見計ろう、と。

そのアイディアに、2人は頷いて綾人が屋敷に戻るタイミングをこっそりと空に伝えた後に、決行された。そして、案の定、計画は成功したといえる。

名付けて、“綾人を休ませよう"計画だ。

安直だが、分かりやすいので3人は気に入っている名前だ。

計画が成功したことに3人はこっそり喜び合った。そして、中途半端に掛かった綾人の掛け布団をトーマと綾華が2人がかりで、そっと掛け直した。

さらなる温もりを得た綾人は、無意識なのだろうか、静かに微笑んでますます布団にくるまるのだった。

-END-



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