【タル空】当店をどうぞ、ご贔屓に

キャッツテールにてやり取りをする空くんとタルタリヤのお話です。

・空くんがたまにキャッツテールでお手伝いをしている設定です。



キャッツテールの個室にて。

スッ
「よしっ、俺の勝ちだ!」

「あっ! その手があったのか……!!」

七聖召喚に決着が着くと同時に、交互に声を上げたのは、長い金髪を三つ編みにした少年、空と、メッシュの入った柔らかな茶髪に存在感ある仮面を着けた青年、タルタリヤである。

「それにしても、空は強いね〜。」

「ここで結構な数の勝負をやっていたからな…。」

なぁん
スリスリ

「もしかして、お祝いしてくれているのかな?
ありがとう。」

にゃあん

2人がやり取りをしているうちに、いつの間にかそばへと寄ってきた猫が、空にすり寄ってきて、甘えるようにひと声鳴いた。

「随分懐いているね。」

その様子に、猫の人懐っこさが、他の客に対する接し方よりも懐いているように見えたので、タルタリヤは声を掛けた。

「あぁ。

たまに、ここでアルバイトしている時に、餌をあげているからかな…。」

ズルッ
「えっ…?! 何それ初耳なんだけど!!??」

ビクッ
ピューーー

しかし、その調子のまま告げられた空の言葉に、頬杖をついていた手がズレてしまう程に驚いたタルタリヤは大声を上げてしまう。それに驚いた猫が、身体を揺らして素早く立ち去ってしまった。

「あんまり大声上げるなよ。」

「空が急に驚くことを言うから…。そこの君、驚かしてごめんよ〜。」

空の嗜めるような口調にバツが悪そうな顔をしたタルタリヤは、驚きにキャットタワーの上まで逃げてしまった猫に謝罪の声をかけた。声をかけられた猫は、その言葉を分かっているのかいないのか、しばし見つめた後にその場に腰を下ろしてあくびをしてから丸まった。

「というか、言ってなかっ………たかもな。」

「うん。初めて聞いたよ。」

空が本題に入って話し始めると、改めて言っていなかったことに気付いた。それに同調するタルタリヤの様子も含めて、あくまでも言う必要性が無かったと判断していたので、言っていなかっただけだと再認識した。

「大体、言ったところでどうするんだよ?」

「空の様子を見に来るよ!」
サラァッ

「いいわけあるか!!」

言ったら言ったでどうするのか気になった空は、問いかけるが、とんでもないことを告げられたので、即座に切り捨てた。

ただでさえ知り合いの遭遇率が高いこともあるのに、ファデュイの執行官たるタルタリヤまで来ることになったら、フォローしきれないし、何より空の心労の負担が計り知れなくなるので却下だ。

「大体、不定期で入っているし、タイミングも教えないからな!!」

「えぇ〜…、残念だな…。」

より明確に拒絶の意を示せば、タルタリヤは残念そうにする。その様子は、さながら落ち込む大型犬が耳や尻尾を力無く垂らしているようだった。

その様子に、些か良心が痛む空であるが、引く訳にはいかなかった。何故ならより明確な理由があるからだ。

それは…

(見られるわけにはいかないからな…)

実は、店主であるマーガレットの計らいで、リトルプリンスを模した制服姿で接客をしているのだ。

小さな白いハットがついた黒猫の耳のカチューシャ。

コーヒーブラックとココアブラウンを基調とした執事服とボーイ服が合わさったような制服。

そして、裏側に肉球の模様がある手袋やブーツ…。

短時間かつ不定期なタイミングで入ることもあって、あまり仲間達に見られることはないが、ディオナにだけは知られてしまっている。

何とか黙っていて欲しい、とお願いしたところ、アタシが言うように見えるのにゃ?! 失礼すぎにゃい?! と逆に怒られたものだ。良識がある一面に感心したこともあり、ディオナも誤魔化してくれていると聞いたことがある。

それも相まって、見られる訳にはいかないのだ。

(もう少し減らそうかな…)

その後、入る回数を減らした空と何とか情報を掴もうと奮闘するタルタリヤの姿があったという。

-END-

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