【タル空】赤くて、甘い、その味を

海灯祭の参加制限を解除されたタルタリヤが、満喫中に空くんに会う話です。
タルタリヤ視点気味です。

・勢いに任せたのでめっちゃ短い
・タルタリヤは、今年、ようやく海灯祭参加の制限を解除された設定
・PVと違って、正体がバレないように仮面を外しています
・タルタリヤの過去の海灯祭参加履歴捏造

参考資料

【原神】海灯祭PV「明霄幻夢」

糖葫芦について


※初出 2023年1月30日 pixiv


璃月港。

琉璃亭前にて。

ガチャ
「ふぅ…。」

扉を開けて出て来たのは、メッシュの入った柔らかな茶髪の青年、タルタリヤである。いつもは髪飾りのようにつけている仮面は、今日は着けていない。何故ならば…

(ようやく海灯祭に参加できるようになったな〜)

そう。

璃月港を巻き込んだ騒動を起こした身として、少しでも正体がバレないように、とリスクを配慮した結果である。より正確に言えば、そのまま出かけようとしたタルタリヤに対して、エカテリーナが助言したからである。

先の件もあって、海灯祭の参加の制限を課せられていたタルタリヤは、今年になってようやくそれを解除されたので、琉璃亭にて食事を満喫していたのだ。

(参加するのは久々かな?)
スタスタ

海灯祭仕様に煌びやかに彩られた道を歩きながら、久々に参加できることに関して、タルタリヤはどこか他人事のように思っていた。

というのも、今まで"参加した"とは言っても、少し街の様子を見るだけで、後は任務をしていた記憶しかないからだ。

(う〜ん…、料理もいいけど、何か甘いものが食べたいな…)
スタスタ

そう思いながら、今年祀られている仙人のオブジェへと繋がる階段を歩いていると…

ピタッ
(ん? あれは………)

前方に見慣れた長い金髪と黒を基調とした旅人装束に身を包んだ少年、空が視界に映り込んだ。赤い実が連なる飴、糖葫芦(タンフールー)を左手に持ちながらキョロキョロと辺りを見回している。その度に、羽根を模したマフラーとマントが合わさった独特な装飾が揺れている。

いつもはそばにいる不思議な妖精、パイモンがいない。そのことから、もしかしたら、屋台に食べたいものがあって空が買ってきたものの別の屋台の食べ物に目を奪われて姿を消した…。そんなパイモンを探している、と言ったところだろう。

クスッ
(空、相変わらずだなぁ…)
タッ

そんな空の姿に思わず笑みを溢したタルタリヤは、駆け寄っていく。そして…

クイッ
「美味しそうだね。俺にもひと口ちょうだい?」
パクッ

糖葫芦を持っていた空の左手、それを右手で優しく掴んだタルタリヤは、そのまま引き寄せて赤い実をひとつ、口に含むのであった。

「えっ…?! な、何?!」
クルッ

一方で、突然、何者かに左手を引き寄せられた空は驚いて後ろを振り向いた。そこに居たのは…

モグモグ
ゴクン
「ん、なかなか美味しいね。」
ペロッ

何やら口を動かして飲み込んだ後、口元についたものを拭うように舌を出すタルタリヤの姿であった。舌を引っ込めた後は、空の左手から右手を離して、さらに拭うように右親指を動かした。

「………って、どうしてここにいるんだ! タ…。」
スッ

むぐっ
(な、何だ…!?)

「しぃ〜…。あんまり騒ぐと気付かれちゃうよ??」

「!!」

驚きのあまりに思わず呼ぼうとすれば、空の唇に右手の人差し指を当てた。まるで、蓋をするような仕草に加えて、タルタリヤ自身も左手の人差し指を自身の口元に当てた。その言葉に対して、空は瞬時に理解した。

璃月で起こした騒動から、タルタリヤが海灯祭に参加しているのは、非常に珍しい光景だ。恐らく理由があって、参加が許されている状態なのだろう。それは、トレードマークである髪飾りのようにつけた仮面がないことからも、それが窺えた。

コクコク
(分かった…)

スッ…
「うん。分かってくれたんだね。流石、相棒!」

諸々の事情を察した空は、頷いて答える。その反応に、ようやく顔を少し離して右手と左手の人差し指を下げたタルタリヤは言葉を発した。

(それにしても…)
「頼むから、普通に食べてくれ…。」

「あはは。ちょうど甘いものが食べたい気分だったからさ。」

「たく、なら、売っていた屋台を案内するよ。」

「う〜ん…。でも、空が持っていると、より美味しく感じる気がするけどな〜。」

「なっ! 何、言ってるんだ!! ほら、案内するから来いよ!!」
スタスタ

「はぁ〜い。」
クスクス

からかうような言葉を紡ぐタルタリヤに、照れ隠しするように空は早歩きで歩き出す。しかし、耳の後ろが、まるで、糖葫芦の赤い実のように真っ赤になっていたので、誤魔化しきれていなかった。

クスッ
(やっぱり君といると退屈しないよ)

それにますます笑みを深くするタルタリヤは、早歩きながらも身長差のためにすぐに距離が縮まる空を追い越さないように、歩くスピードを合わせるのだった。

その後、案内された屋台で糖葫芦を満喫していた2人の元に、探し回っていたらしいパイモンが来た。それを見たタルタリヤは、きっと騒いでしまうであろうパイモンに考慮して、すっ、とその場を離れた。

離れていくタルタリヤを名残惜しそうに見ながらも、パイモンからどうしたんだ?と問われて、何でもないよ、と誤魔化す空であった。

その左手には、タルタリヤがひとつ、空がみっつ食べたことで、残りみっつになった糖葫芦があった。

-END-


あとがき

海灯祭のアニメPVで、タルタリヤの姿があったことにたぎったお話です…!

海灯祭2021及び2022でイベントストーリーや2022以降に実施されている璃月各地に配置されるキャラの中にも居なかったので、実質海灯祭初参加じゃない…?と思ったら筆が進んでいました!

まぁ、もしかしたら、それ以前に、チラッと参加くらいはしてるかな…と思って、それを小説内に組み込みました!

ここまで読んで頂きありがとうございます!!

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