【タル空】ある意味で、芸術
塵歌壺の内装に悩む空くんのお話です。
参考資料
・絵画 オフィーリア
https://media.thisisgallery.com/20214110
塵歌壺内の邸宅にて。
「うぅ〜〜〜ん………。」
床に座り込む空は、部屋を飾る花のことについて盛大に悩んでいた。と言っても、調度品である花、ではなく風車アスターや琉璃百合をはじめとする特産品を中心に飾り付けができないか、と思ったので試行錯誤しているのである。
しかし…
「ダメだー!!! 思い付かない…。」
ボフッ
アイディアは浮かぶものの実現するには程遠い。
まさに、クリエイター特有の悩みに直面しながら、特産品の花が散乱する床に盛大に寝っ転がるのだった。同時に、その風圧で何本かの特産品の花が舞い上がった。
うとうと
(…何だか眠くなってきたな…)
思考に耽って頭を使ったことによる疲労と花の香りに包まれているうちに、空は次第に意識を手放して寝てしまうのだった。
ガチャ
「空? 居るかな??」
キョロキョロ
その数分後、扉を開けて入ってきたタルタリヤは、空を探した。相談したいことがあったからだ。周囲を見渡すうちに、テーブルの脚の向こうに、空の踵が見えた。
ヒョコッ
「あ、居た居た。空、何して……。」
どうやら寝っ転がっているらしい空を発見したタルタリヤは、近くへと寄って言葉をかける。だが、その言葉は途切れてしまう。
何故なら…
そこには、絵画のような美しい光景が広がっていたからだ。
床に散らばる風車アスターや琉璃百合などの花達。
その中央にて、安らかな寝息をたてる空は、腹部の辺りで両手を揃えて、仰向けになって寝ている。
その表情は、寝息と同様にあまりにも安らかなので、一瞬、生死の境が分からなくなる。だが、白い肌に生えるうっすらと染まる赤い頰と呼吸によって上下する胸元、そして、息をするたびに微かに揺れる唇…。
それが、空本人が、確かに"生きている"と実感させるものでありながらも、普段からも存分に発揮しているその可愛らしい容貌が、浮世離れした美しさを醸し出していて…。
そんな、床に寝っ転がっているだけなのに、空がやるだけで、まるで芸術作品を見たかのように、とても絵になる光景になっていた。
そんな光景に、美しさを感じた時に抱く特有の戦慄を覚えたタルタリヤは、暫し魅入るのだった。
-END-
おまけ
「というか、髪を留めたままじゃないか…。」
スッ…
しばし魅入っていたタルタリヤであるが、時折寝苦しそうにする空の頭をそっと支えて髪留めを外す為にしゃがみ込んだ。
ゆっくりと、起こさないように慎重に頭を支えながら、髪留めへと手を伸ばす。
そして…
パチン…
スル…
スルスル…
ふわっ
髪留めを解いたことで、結ばれていた自由が解き放たれた金髪が、解かれていき、やがて完全に重力に従うその光景を見て、タルタリヤはまた身悶えたという。
-END-