種を残す 日本の風土を繋いでいく

 こんにちはカンカンです。先日訪れた天龍村の伝統野菜農家さんのお話がとても学びが多く、新しい農業観を得たので今回はその話。

 お話をしてくださった農家さんは天龍村で十久保南蛮、ていざナスの2種類の伝統野菜の栽培とイベントを通した普及活動をされています。特徴的なのは野菜同士を交配をさせ、種も自給しているということです。
 あまり知られていないことですが、日本で栽培されている野菜の種の多くはF1種という一世代限りのもので種を残しません。F1種の中には海外から輸入している品種も多くあります。種に限らず、肥料や農薬までも海外からの輸入に大きく頼っているため食料安全保障が危惧されています。
 そうした背景もあり、こちらの農家さんでは種も自給し、無農薬・有機栽培に取り組まれています。
 「種は育った環境のデータを持っている。たとえ疫病や虫による被害が出ても生き残ったものから取れた種は世代を重ね適応してくる。いずれは農薬もいらず、肥料も最小限で十分栽培できるようになる」とのこと。
 野菜も植物であるため、当たり前の話ですが見落としていた点でした。野菜が本来持っている命を繋ぐ強さに依った農業です。

 「食文化が豊かなところは過疎にならない」
この言葉も印象に残りました。食文化の豊かさとは何か。お話を聞いていく中で、土地の記憶を脈々と紡いできた食材をその土地に住む人が食べること。これが食文化の豊さに繋がると思いました。地産地消の究極系ともいえる形です。

 伝統野菜のおいしさは以前から知っていて、遺していくためにもっと外に向けて発信する、売り出していくことが大事だと考えていました。しかし今回の話を聞いて外に大きく広げなくても地域の中で繋いでいく、消費する。この流れが活発であり続けることのほうが大事なのではないかと思いました。
 夢物語にはなりますが、きっとどんな土地にもそこに適応する野菜は存在すると思います。そうした野菜の「種を繋ぐ・採れた野菜を地域で消費する」といった活動が各地で起これば食文化の豊さだけでなく、多様性も生まれるのではないかと思いました。

 人が生きていくうえで欠かせない食だからこそ、いつでもだれでも手に入ることが一番。その考え方でいえば種を繋いでいく栽培は収量も少なく不安定で、主流派になるにはハードルが高いです。
 しかし、日本の食を、風土を守って繋いでいくことを考えるとこうした農業も必要だと思いました。
 自分の中で農業の在り方が増え、視野が大きく広がった貴重な経験でした。

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