僕の手を掴んでくれる人
勘違い・コーヒー・救い
「浮気するなんて信じらんないっ! さいってー、別れましょ! さようなら」
「待って、違うんだ! 誤解してる……あぁ、行っちゃったか……なんで僕はいつも……」
これで3回目だ。
僕と付き合う人は何故か毎度僕が浮気をしていると言って別れを切り出してくる。理由も聞いてくれない。
僕のどの行動が良くなかったんだ……?
僕はいつも真剣に彼女に向き合っているし、浮気の素振りも見せたことがない。
あるとしたら、女友達の優里に時々相談してるくらいなんだが……
でもその事は彼女に毎回伝えてるし、どんな会話をしたのかも伝えている。
「はぁ……考えても仕方ないか……とりあえずまた優里に話聞いてもらうか……」
僕は優里に『今日話せる?』と連絡した。
間髪入れずに『いいよー、またうち来てよー』という返信が返ってきた。
「どーしたんよ、今回こそは大事にするって決めたんじゃないの?」
「大事にしてたんだけどさ……また僕が浮気してるって思われて、それで……」
「えー? 君が浮気してるところなんて見た事無いけどなあ……こうやって会ってる事とかどんな話したのかも伝えてるんでしょ?」
「ちゃんと伝えてさ。優里以外の女性と話すなんて学校以外じゃした事ないし……」
「そっかあ……とりあえずうち泊まってきなよ。」
「うん、ありがと……はぁ……」
いつも優里は僕に優しくしてくれる昔からの友人だ。
どんなに僕が辛くなってもいつもそばに居てくれる。
彼女に恋愛感情を抱かないのかとよく聞かれるけど、抱くことは無いと思う。
だって優里には昔から好きな人がいるらしいから。
好きな人いるのに僕を家に泊めていいのだろうか……?
「お風呂あがったよ、いつもありがとう」
「いいって、あたしと君の仲じゃん?これくらいどうって事ないよ。あ、コーヒー飲む?」
「うん、有難くいただくよ」
コーヒーの苦味が今の僕の辛さを晴らしてくれる……
優里が入れるコーヒーはいつも僕の好みのブラックになっている。
まるで僕の事を全部わかってるみたいに、僕が欲しいものや僕が考えてることを的確に当ててくる。
本当に優里は優しいな……この暖かさが本当に心地良い……彼女が僕の彼女だったら……でもなぁ……
「……? どしたの? 辛くなっちゃった?」
「えっ、な、なんで?」
「だって君、涙流してるからさ」
「あっ……」
「……おいで? ……よしよし……辛かったねえ……」
僕はもう止まらなかった。
彼女が頭を優しく撫でる度に涙が溢れて止まなかった。
暖かい……こうやって撫でてくれる人は優里以外にいなかった。彼女だけはこうやって慰めてくる。
あぁ……落ち着くなぁ……もっとこうしていたい……
「よしよし……ありゃ? 寝ちゃった?……しょうがないなぁ……全く、あたしなら君を捨てることなんて無いのに。まあ君があたしに振り向いてくれるまで気長に待つよ……ずっと大好きだよ」
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