見出し画像

松戸市の「気候市民会議」傍聴2回目~市の重点施策はソーラー。市民からは何が出るか 


前回よりも具体的になってきた議論のテーマ

市民が参画して気候変動対策を考えるという画期的な企画「松戸市環境未来会議」世界の潮流となりつつある「気候市民会議」が我が町でも行われている!ということで1回目からウォッチさせていただいているわけですが、11月12日にその2回目が開かれたのでまたもや傍聴してきました。

急に気温が落ちて寒くなったせいもあるのか、今回はやや欠席者が多め。前回5つあった班は人数調整されて4つの班にまとめられ、それぞれのグループで議論が進められました。

前半の議題は、
①    温暖化の要因に対して取り組むべきことは何か
②    ①で考えた中から重要な取り組みを選ぶ
の二つ。

社会全体の温暖化の要因について考えてみる、といった方向だった前回に比べるとより具体的な解決策を考えていくことに踏み込んでいます。2回目ということもあり、皆さんほど良い距離感で闊達に議論を交わされているようでした。


今回は脱炭素を進めるためのより具体的な取り組みについて議論が交わされた

議論の結果、一例としては次のようなアイディアがあがってきていました。

・松戸市独自のエコポイントをつくって、省エネ家電を買ったり、バスなどの公共交通機関を使ったりする人が得をするようにする。
・今回のような会議を小学校などでも実施することで環境教育につなげる。
・自転車に乗ろうにも車道で車と並走を強いられる現状は危険なので自転車専用道路をつくったり、駅前に駐輪場を増やしたりする。
・保育園にも送迎バスを運用してもらうようにしてマイカーの使用を減らす。
・生ごみをたい肥に変えるコンポストを各家庭にプレゼントする。
などなど。

実際に市の権限できることとできないことはあるでしょうが、いくつかは実行可能なのではないかと思えました。

市民会議とは別に有識者が「ソーラー」議論

次に、この日は松戸市が実施しようとしている施策案についてのレクチャーもありました。

なんでも現在、市ではこの市民会議と別に専門家を集め、市が実施する重点的な施策について検討中なのだとか。知らなかった……。

調べてみると、ちゃんと市のホームページでも情報が出ていました。普段、マスメディアやSNSで流れていることばかり見ていると、自分の街のことってほとんど知らないままスルーしてしまっていますね。

さて、松戸市の現状と重点施策ですが、この日のレクチャーではざっと次のような話がなされました。

まず、松戸市は2022年2月、2050年までに二酸化炭素の排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言しました。

……恥ずかしながら、これも知りませんでした。いったい市民の何%がこの宣言について認識しているのかと考えると、割と知らない人は多いのではないか、という気もします。これを読んでいるあなたの町も、もう「宣言」しているかもしれません。

さて、気を取り直して市の施策の中身についてですが、脱炭素のために具体的に行える施策として、市では「太陽光発電の導入拡大」にターゲットを絞っているようでした。まあ、市街地だらけのベッドタウンで大型の風力発電は無理なのでしょうから、再エネならばおのずとソーラー一択になります。しかも、空き地なんてほとんどないですから、建物の屋上などに設置するソーラーパネルを増やしていく、という考え方になるようです。

しかしその太陽光発電の導入は進んでいるのかというと、市内の建物約12万軒に対し、設置率はわずか6.1%。環境省の情報提供システムを使って調べた松戸市の導入ポテンシャル(潜在量)に比べても、現状の導入量は3.8%に過ぎないとのことです。

もちろん、すべての建物に再エネを導入するのは構造上難しいので100%になることはないようなのですが、それにしてもまだまだ低い。これを上げていくことが市の当面の課題だ、ということです。


松戸市の温室効果ガス排出量の推移。一番上の産業部門は2011年をピークにけっこう下がっている。一方、民生部門はほぼ横ばい。運輸部門が微減なのはハイブリットカーなどの導入効果か。

具体的な政策としては、「再エネ促進区域」というエリアを定めてそこの中は建物の建築規制を緩和することや、まず市役所や小学校、福祉会館など公共の建物から重点的にソーラーパネルを設置していく、といったことが挙げられるそうです。

正直、それをやったら劇的にソーラーパネルが増えるかというとなかなか難しい気もしますが、微増だとしても着実に導入率を積み上げることにはつながりそうです。それに省エネなどの施策も組み合わせてカーボンニュートラルを目指していくわけですね。

市民が示す案にも「具体的インパクト」を

レクチャー後、会議に参加した市民からは「議論をする前にこういう情報を知りたかった」という趣旨の声も。確かに、市民会議で草の根的な策を考えている一方で、有識者たちは何歩も進んだめちゃくちゃ現実的な検討をしていたんだな、という印象は私も受けました。そこの整合性はいかに、と。

これに対する市側の説明としては、松戸市が考える重点施策メニューの中の「その他の取り組み」に「市民活動の支援」という項目があり、今回の気候市民会議で出てくる策というのはこれに該当するとのことでした。

こうした説明を聞きながら私もようやく全体像を理解してきたのですが、松戸市の施策としては専門家の考える重点施策(=主に太陽光発電の導入促進策)が主力としてあり、それに加えて列挙される政策の一つとして、気候市民会議発のアイディアも一部採用される可能性あり、ということなんですね。

確かに、専門性がないことを前提とした市民が10数時間議論した結果をいきなり中心施策とするわけにはいきませんから、こうした建付けはまあ納得という気もします。一方で、せっかくの市民発の政策立案という新しい試みですから、メインではなくてもきちんと具体的なインパクトをもたらす一手が示され、実行されるといいなあ、と思います。もちろん、主催側も参加者もそのつもりで頑張っていらっしゃると思いますので、引き続き勝手に応援する気持ちでウォッチさせていただきます。

【1回目の会議の傍聴記はこちら
【3回目の会議の傍聴記はこちら
【関連記事:くじ引き民主主義とは

【松戸市環境未来会議に関する市の公式サイトはこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?