ひよこ
ボクの同級生が母親を見たのは小学四生の運動会の日であった。
運動会が終わった日、母親が家を出た。
失踪したのである。
同級生には2つ下に妹がいた。
母親の失踪後、しばらくすると兄は教室で『臭い。汚い』と揶揄された。
同じく妹も学校で『臭い。汚い。』と揶揄された。
兄妹は同じ服を着ていたからだ。
妹は不登校となった。
兄は妹を残し、小学校へ通えなくなった。
兄妹の不登校が続いた。
兄が16歳のある夏の夜。
夜店でひよこを一匹買った。
引き篭もりの妹へのプレゼントであった。
妹は兄からのプレゼントであるひよこを喜んだ。
2日後、ひよこは鳴かなくなった。
ひよこは固まり死んでいた。
兄は妹に『ひよこを埋めたろう』と声をかけた。
妹は兄に『ひよこ死んでないもん』と言い張った。
そんな妹を見て兄が言った。
『俺が、ひよこなんて買わなければ、妹を悲しませんでよかったんや』
妹は固まったひよこを手放さない。
ひよこが死んだのは、妹がひよこを握り殺したからだ。
そんな妹は、ひよこの可愛がり方もしらなかった。
妹は無邪気にひよこの亡骸を指で突いている。
兄は、そんな妹を見て涙を溢した。
母親の失踪後から、妹はひよこの可愛がり方さえわからない。
ひよこが死んでから、妹は以前にも増して口を利かなくなった。
※ノンフィクション
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