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C本主義のC事をしたいなぁ

 大工の仕事を始めて4ヵ月が経ちました。九州の6月はとんでもなく暑いです。この後に本格的な夏が待っていると思うと気が滅入ってしまいます。長野ではエアコン を1年を通してほぼ使わずだったのに、今では毎日のように使っています。現場は日中の体を使う仕事なので、べったべたに服が皮膚に付き、それはそれは香ばしい臭いが体中からします。ああ、あちぃ。

 最近、倉庫のリフォームで杉板を横に張って壁を作る作業をさせてもらいました。板を丸ノコで切って釘で張り付けていく作業です。シンプルな作業に見えますが、なんせ築50年近い物件なので基準となる柱が真っすぐに立っておらず、とても難しかったです。柱通りに板を張ると板も斜めになってしまいますので、板の端を斜めに切り誤魔化しながら張っていく必要があります。端だけでなく、水平、垂直、板と板の継ぎ目、と色んな所を気にしながら何事もないような壁に仕上げていくのです。右を見ながら左を見るくらい難しいです。

 農業をしていたから手先の器用さ、腕力、体を使う仕事のスピード感などある程度は持ち合わせているだろう、と思っていた自分が恥ずかしいです。塗装をすれば汚いし、木材を持ち上げればフラフラするし、板を4枚も張れば1時間回っています。こんな使い物にならない僕に道具を用意していただき、やり方を教えてくださる代表と大先輩には感謝しかありません。

 現場に行って思うのは「この家C/N比高いなぁ」です。C/N比とは農業用語で炭素と窒素の比率の事を言います。C/N比が高い肥料は炭素の割合が高く野菜の糖分になり甘くしてくれますが、高すぎると分解に時間がかかり植物に吸収されません。C/N比20ぐらいの堆肥がいい堆肥ですね。今の現場はC/N比がめちゃくちゃ高いんです!杉のC/N比は調べても出てきませんでしたが、藁が70、竹が280らしいので杉は1000あるかもしれません!(知らんけど)そりゃあ、木造建築なんで当たり前かもしれませんが、C/N比23の堆肥を使って仕事をしていた僕は、とてつもない炭素の塊を触っているんだなぁと日々感激しています。

 農家を一言で言うと「二酸化炭素を栄養に変えてしまう二酸化炭素錬金術師だよ」とめいさんが言っていました。(めいさんは農場の時にお世話になった農業一筋の先輩で、キングダムに出てくる蒙武みたいな人)地球にとってよろしくない二酸化炭素、それを栄養に変えて人々の食べ物にしてしまう、・・・最強やん!勿論自分の意志で農業を辞めたので後悔はないですが、一つだけ思ったのは「これからは二酸化炭素を固定できなくなるなぁ。」でした。「まあ、しょうがない。それは農家の特殊能力だ」と思い、もの作り系で仕事を探したのです。偶然たどり着いた大工という仕事でしたが、一言で言えば「二酸化炭素を家に変えてしまう二酸化炭素戦士」という事に気づきました。大工、かっけええ・・・。 

 資本主義で求められるのは「売上」「利益」「効率」で、仕事というのは売上を上げたり、ノルマを達成したり、お客様第一であれるか、というゲームのようにも見えます。そこに炭素の差し引きは無く、地球温暖化の一途を辿っています。僕も昔の人に開発していただいた道をタダ乗りさせてもらって、整えてもらったインフラを十分に活用しています。ただ、インフラが整いモノで溢れ人口減少していく中でかつてのバリバリ進んでいく仕事をする時代ではなのかなぁと思っています。農業を4年間やって、大工という仕事に片足の小指を突っ込んでしまった今、炭素を引き合いに出さない資本主義の仕事に興味はなく、炭素の差し引きを考えるC本主義のC事をしたいなぁと思うようになりました。そのためには、とりあえず炭素の塊を扱えるように、板を張れるようになりたいです。

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