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雨あがりて #14

#真夏の怪談まつり2024
参加 創作ホラー話し

☆-HIRO-☆ 第14話
2024年7月30日(火)

前回のお話し

第14話 2日目の夜

「月も出てるし、星も綺麗ですよ…」
博多朗は車に乗るなりそう話すと焼き菓子の袋を石野さんに手渡した。
「あら、何…こんな…」
「どうぞ受け取って下さい…これは御守りの分のお返しです…お好きな時に召し上がって下さい…」

車は国道をスムーズに流れていく。郊外から博多朗の住む街に近づくと周りが明るくなってきた。

「次の交差点から左に入って下さい…」
「あの信号の所でいいのね…」
短い会話がそろそろ目的地到着の合図となる。

駅前通りと交差する信号が見えてきた。
「あの信号越えた所で結構です…有難うございます…その先を右折すれば国道とバイパスを結ぶ通りに出ます…」
信号を越えた所で車を停めてもらった。
「今日は本当に有難う御座いました…助かりました…帰り道は分かります?…」
「ええ、ここら辺の地理はそれとなく分かるから大丈夫…うちはバイパスを少し戻った所なのよ…」
「それじゃ有難う御座いました…お気を付けてお帰り下さい…」
「御守りはずっと身に付けておくのよ…おやすみなさい…」
博多朗は車を降りてからまた頭を下げた。
その場に立ち続けて車を見送る。車が右折する時に手を振って別れを告げた。

それから、博多朗はゆっくり歩いて家に向かう。玄関を開けるともうユキが座って待っていた。

「ただいま~…遅くなってゴメン
ね…お腹が空いたろう?…まずはゴハンだね…」
ユキはそうだと言わんばかりに足元に体を擦り付けてくる。
すぐ台所に向かうがユキが足に纏わりついてきてスッと歩けない。
ユキの器を洗って、お椀に新しい水をタップリ入れ、深皿に缶詰めのフードを入れてやる。その間もユキは足下で鳴いたり、前足を博多朗の脚にかけて立ち上がったり落ち着きがない。やはりお腹を空かせていたようだった。

ユキにゴハンを上げてから、荷物を置いて、シャワーを浴びた。
胸のポケットに入れていたお守りは浴室扉に付けていたフックに吊り下げておいた。

サッパリして寝巻きに着替える。
御守りは忘れず胸のポケットへ。
“ああ、ホットドッグが残ってたな…時間経ってるけど今日中に食べる分には大丈夫だろう…”
また台所に行き、トースターで温めなおす。今日はユキが付いて回ってくる。
アツアツになったのに包丁を入れて一口サイズに切り分けた。追いケチャップに追いマスタード…これをツマミに缶チューハイを飲む。
ユキがテーブルに前足を乗せ、伸び上がってクンクン匂いを嗅いでいる。
「これはカラシがついてるからユキは食べられんよ…」と言ったがジッと人の顔を見上げている。
根負けして“チュール”を取って舐めさせてやった。その後はユキも満足したのか脇で丸くなって寛いでいた。

“さて明日は病院が混む前に早く行こう…今日も早く寝なきゃ…”
いつもより早いが床に就いて寝ることに…御守りは枕元に置いた。

すんなりと眠りにつけた。

また夢を見ていた。遠くで何やら言い争うような声が…
目の前には大きな篝火がゆっくりと回っている。
その後ろ隅の方で鬼が数体…肩を突き合ったり、胸を押したりして揉めてるようだ。そこへ後ろからひと際体格のいい鬼が胸を張って現れる。その鬼は他の鬼を一喝したようだ。鬼達は頭を下げ、篝火の方へ手を指し向ける。
体格のいい鬼が勢い良く走って向かってくる。しかし篝火手前まで来ると、バチンと弾き飛ばされてしまった。
残された鬼達はただ右往左往してお互いの顔を眺め合っている。
やがて意を決したようにバラバラ飛びかかって来たが、ことごとく弾き飛ばされ視界から消えていく。
遠くの方で“ぐもう ぐぉう”と痛がっているのか、悔しがってるのか…呻き声がしていた。
やがて静かになり、篝火だけがゆっくり辺りを見回すように回っている…その後はストンと意識もなくなりぐっすりと眠れたようだった。


次回は第15話「よく晴れた日」
ご期待下さい。

#創作大賞2024 #ホラー小説部門

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