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雨あがりて #13

#真夏の怪談まつり2024
参加 創作ホラー話し

☆-HIRO-☆ 第13話
2024年7月29日(月)

前回のお話し


第13話 夕食を一緒に
 
途中、車がそれほど停まっていないレストランを見つけ、そこに立ち寄る事にした。

やはり店内はそれほど混んではいなかった。窓に面したボックス席へと案内される。
メニューに目を通し、博多朗は迷っていた。“今日はご飯物を食べてないから何かセットメニューにしようか…消化の良いものを選んだ方がいいだろうな…”
などと考えながらメニューをめくっていた。
石野さんはすぐに決めたらしくメニューを閉じて外を眺めている。
「あっ、もう決まりました?…済みません、目移りがして中々決まらなくて…石野さんは何を選ばれましたか…」
「私はマカロニグラタンとシーザーサラダにするわ…いいのよ、ゆっくり選んで下さいね…」
いや、そう言われても、ゆっくり楽しみながら選んでいる訳にはいかない。“そうか単品で注文した方がサラダもしっかり食べられるな“と思い、呼び出しボタンを押す。

混んでいないのでウエイトレスがすぐにきた。
「注文します…ええとこちらがマカロニグラタンとシーザーサラダ…で良かったですよね…」
石野さんは黙って頷く。
「それと…ボクはチキンドリアとイタリアンサラダをお願いします…
あっ、あとフリードリンクを2人とも付けて下さい…」

「ちょっと失礼…」
今度は博多朗が先に動いた。
ドリンクコーナーに行き、コーンポタージュスープを2つ、クルトンを入れて持っていく。
「はい、一品め…コーンポタージュスープで御座います…」
「あら、有難う…」石野さんは微笑んで受け取ってくれた。

斜め前のボックス席でお洒落なご婦人が一人、ケーキセットを頼んだのか美味しそうなケーキを食べながら味わうように珈琲を飲んでいる。その幸せそうな顔を見て、“あっデザートも訊けば良かったかな”と思ったが、まあ食後に尋ねればいいだろう。

サラダが先に出された。それぞれ結構な量があり、一つを二人でシェアしてもいい位だった。
博多朗が注文したイタリアンサラダはレタスにトマト、セロリ、ほぐしたチキン、オリーブの実も入っている。味付けはオリーブオイルに少し酸味と塩味を加えたサッパリした味。これだけでも十分食べごたえがある。セットでなく単品でサラダを頼んで正解だったなと満足する。

「このコーンポタージュ美味しいわね…お代わりしようかしら…あなたは?…」
「いえ、ボクはもう結構です…」
博多朗は少し喉が乾いて冷たい物が欲しいところだった。

石野さんが戻る前に、グラタンとドリアが提供される。
石野さんが席に付くのを待って、食べ始める。見た目は量がそれほどないようだったけど、器の底は深くて結構食べ応えがあった。

食事を終えて二人交互にドリンクを取りに行く。石野さんは紅茶を選んだようだ。博多朗は冷たいものが欲しかったのでジンジャエールを取ってきた。

「何かデザート頼みましょうか?…」
「あら、いいわね、と言いたいけど…遠慮しとくわ…十分お腹いっぱいだし、カロリーオーバーになるわ…」
さっき見かけたケーキが美味しそうだったので少し残念な気がした。
「ところで、明日も通院でしょ?…足はあるの?…」
「ええ、普段はあまり乗ってないけどバイクがあるので大丈夫です…」
「あら気を付けてよね…今日みたいに急な雨が降らないとは限らないし…普段乗ってないなら事故にも気を付けるのよ…お守りは必ず身に付けて出かけてね…」
「ええ少し前までは仕事で毎日乗ってたから大丈夫と思います…一応、お守りは必ず…雨合羽も持って出るようにします…」
スマホで明日の天気概況を見ると、明日は一日安定したお天気との予報だった。

「さあ、それではそろそろ出ましょうか…お勘定済ませてくるから先に車で待ってて下さい…」

レジ脇にはガラスケースに美味しそうなケーキが並んでいた。思わずお土産に持たそうかとも思ったが…“カロリーの事言ってたから止めておこうか”と思い、ケースの上にあった焼き菓子の袋を一つ手に取った。“これならいつでも好きな時にお茶受けとして食べられるな”と思い、「これも一緒にお願いします」と告げた。
「駐車場のご利用は御座いますか」と尋ねられ、慌ててとりあえず精算してから…
「ちょっと、待って下さい…すぐ駐車券取ってきますから…」と言って車まで走っていく。運転席側の窓越しに駐車券を受け取り、レジまで急いで戻り、駐車代を無料にして貰えた。
「お手数かけました…」と礼を言い、店を出る。
夜空にポッカリ月が出ていて、空は晴れているようだ。反対側の空には星が沢山出ていた。

次回は 第14話「2日目の夜」
ご期待下さい。

#創作大賞2024 #ホラー小説部門

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