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【少年野球コーチ】『うまくなりたい!』のためのスポーツ科学・運動生理学的アプローチ

もっと上手くなりたい!
活躍したい!

これは野球少年みんなの願いです。

また、親御さんでしたら、我が子の頑張っている姿を見て、もっと上手にできるようにしてあげてほしい。結果を出させてあげたい。と思うことでしょう。

もしもいま現在、お子さんが伸び悩んでいる状態であったり、日々監督コーチからの罵声を浴びながらやっているような状態でしたら、その想いはより一層のことと思います。

私も2人の野球少年の父親として、そしてコーチとしてその想いは日々高まるばかりです。

今回は、その上手くなりたい(技術的上達)について、「スポーツ科学」「運動生理学」の面から、そのポイント(重きを置くところ)を整理していきます。

スポーツ科学…運動やスポーツに関する科学的な研究や知識の分野です。主に生理学、心理学、栄養学、運動生理学、バイオメカニクス、スポーツ心理学、トレーニング科学などの専門分野を含みます。

スポーツ科学の目的は、アスリートのパフォーマンス向上や運動能力の最適化、スポーツにおけるケガの予防、リハビリテーション、トレーニングプログラムの設計などに貢献すること。

運動生理学は、運動や運動トレーニングが人体に及ぼす影響や、身体の反応に焦点を当てた生理学の分野です。主に運動によって引き起こされる身体的な変化や、それらがどのようにしてパフォーマンスや健康に影響を与えるかを研究します。

運動生理学の目的は、心臓や血管、筋肉、呼吸器系、代謝系などの生理学的なプロセスを理解することを通じて、トレーニングやスポーツパフォーマンスの最適化を目指すことです。これには、身体のエネルギー供給、疲労のメカニズム、身体の適応、パフォーマンス向上のためのトレーニング方法などが含まれます。


技術的上達を叶えるためのスポーツ科学・運動生理学的要素

スポーツの技術力を高めるための方法を「スポーツ科学」「運動生理学」的に見ていくと次のようにまとめられます。

1. 反復練習: 同じ技術や動作を繰り返し練習することで、筋肉や神経が強化され、技術力が向上します。

2. 専門的な指導: コーチや専門家からの指導を受けることで、正しいテクニックや戦術を学ぶことができます。

3. ビデオ分析: 自分のプレーを録画し、分析することで、改善すべき点や課題を発見しやすくなります。

4. 体力トレーニング: 適切な体力トレーニングを組み合わせることで、筋力や持久力・柔軟性などを向上させ、技術を実現できる体を作ります。

5. 模倣と模倣の理解: 上手な選手やプロのプレーを観察し、その動きを模倣することで、新しい技術を習得する手助けになります。

6. ゲーム形式のトレーニング: 技術を実際のゲーム状況でトレーニングすることで、実戦においてその技術を使いこなせるようになります。

これらについては、その難易度や強度は年齢に応じたものに合わせる必要があるものの、いずれも小学生低学年から取り入れていくことは十分可能です。

そして、これらの要素を上手に取り込んだ合理的な練習方法によってこそ、技術的な上達が見込めるのです。

大切なことは「継続すること」。継続するために必要なことは?

技術的な上達のために必要な要素は分かりました。
あとはそれを実行すれば良いのですが、そこで大切なのが、その実行を「継続」することです。

当たり前なのですが、いくら良い練習メニューでも1日しかやらなければ、身につく技術も1日分です。技術的な上達を目指すならば、3ヶ月・半年・1年と続けることが必要です。

しかし、その「続ける」ということは、とても難しいことでもあります。

なかなか上手くならないものを続けることは、とても辛いことです。
そのうえ、監督コーチから罵声怒声を浴びせられては練習や野球自体を嫌いになってしまっても当然です。

嫌なものを無理やりやらされるほど苦痛なものはありませんし、子ども自身の成長や社会性の獲得にも支障が出てきます。

では、どうしたら良いでしょうか?

その答えは「楽しさ」です。

人間は機械ではなく、感情のある生き物です。
スイッチさえ入れればあとは勝手に動いてくれるわけではありません。

ですから、何かに取り組むに当たっては、その土台として「心理学的」「脳科学的」要素が欠かせません。

そして、そのなかで最も効果的なものが「楽しさ」なのです。

もちろん目的の意識づけ(上手くなるという目的のために練習を頑張る)とか、強制(子どもの意思とは別に練習に参加させる)という方法でも、ある程度の継続は期待できますが、「楽しい」という感情に比べれば雲泥の差です。

ぜひ、子どもが純粋に練習や野球を「楽しい」「楽しくて楽しくてたまらない」と思えるような環境を作ってあげたいものです。


このあたりについては先日UPした「【少年野球コーチ】僕が楽しさを大切にする理由 〜心理学・脳科学的裏付け〜」をご覧ください。


発育曲線に従った練習メニューで無理なく効果的に

最後にもう1歩踏み込み、限られた時間の中で、どのような練習メニューに重きを置くことが効果的なのか考えてみたいと思います。

それを考えるにあたって根拠にしたいのが「スキャモンの発育曲線」です。これは、アメリカの医学者であり人類学者でもあるスキャモンが、人間の発達を神経系・リンパ系などの4系統に分けて示したものです。

そして、このスキャモンの発育曲線をもとに子どもの成長段階を次のように分けて考えることができます。

① プレ・ゴールデンエイジ(3〜8歳)

神経系の発達が著しく運動能力の基礎ができる時期

器用さ、リズム感、バランス感覚など、身体をうまく動かす上での基本的な要素が成長します。この時期は技術を身につけるというよりも、多種多様な動きを体験することが重要で、その後の動作の習得や専門的な技術の上達につながります。

この時期の子どもは長続きしないものの高い集中力を持っているという特徴があり、特別なトレーニングというより、遊びのなかで様々な動きを体験することでもよいです。

②   ゴールデンエイジ(9〜12歳)

神経型の発達がほぼ完成し間もなく、さらに身体的にも成長してくるこの期間は、あらゆる動作を短時間で覚えることのできる時期です。

この時期は新しい動作や技術を習得するのに最適であるため、各競技の基本動作を身につけるのに適しています。

一度習得した技術は大人になっても残りやすいといわれおり、この時期に多くの技術を学ばせることが、将来大きく伸びるためのポイントと言えます。

ただし、筋力や骨や関節は未発達なため、力強さや速さに対する体の準備はできていないので、負荷をかけすぎず「技術」を身につけさせるようにすることが大切です。


③   ポスト・ゴールデンエイジ(13〜16歳)

一般型の発育が盛んで、全身的な体力を鍛えるのに適した時期です。

様々なトレーニングを行うことが、全般的なフィジカル能力向上に繋がります。特に呼吸器・循環器系の能力が向上する時期なので、長距離走やインターバルトレーニングなど持久力向上を目的としたトレーニングが適しています。




④   ポスト・ゴールデンエイジ後(17 歳〜)

生殖型の発育が盛んで、ホルモン分泌量が増大するため骨や筋肉の発達が進む時期です。

そのため、筋力強化を目的としたトレーニングを始めるのに適しているとされています。骨の強度も上がってくるので強度の高いトレーニングにも耐えられるようになってきます。


このように子どもの成長段階は大きく4つに分かれ、それぞれの時期に特徴があるため、その特徴に応じた練習に重きを置くことが、合理的かつ効果的です。

小学生についてまとめると、小学生に対し、持久力を鍛えるような長距離走やインターバルトレーニングを多く行うことはオススメではありません。

もちろん、全く無意味というわけではありませんが、正直「面白い」「楽しい」というものでもありません。

また、筋肉や骨が未発達という理由からウエイトを使った筋力トレーニングも避けたいものです。やるとしても自重での体幹トレーニングぐらいが良いでしょう。

一方ぜひ取り組みたいのが、コーディネーショントレーニングリズムトレーニングのようにバランス感覚やリズム感などを養うトレーニングです。

さらには野球だけでなく、サッカーやバスケット・テニスなど多様なスポーツを遊び程度で良いので体験しておくことも良いです。

それにより、運動に必要な神経群が発達し、自分がイメージしたように体を動かすことができるようになります。このことにより、いざ技術を身につけようという段階になったときに、見たこと・聞いたことをイメージし、それがスッと体現できるようになるわけです。


まとめ

今回は、技術的な上達について、「スポーツ科学」「運動生理学」の面から、そのポイント(重きを置くところ)を整理してみました。

まとめると以下のとおりです。

ポイント1
練習メニューには、反復練習・専門的指導などのスポーツ科学・運動生理学的な6つの要素を取り入れる。

ポイント2
それを継続することが重要であり、そのためには子どもが「楽しさ」を実感できることが大切。

ポイント3
具体的に重きを置くポイントを考えるにあたっては「スキャモンの発育曲線」に示す子どもの各発育段階の特性に合わせる。



子どもたちは、純粋にいつも一生懸命です。
そして、上手くなりたい!活躍したい!と心から願っています。

もっと言えば、上手くなれる・活躍できると信じています。

そんな想いに応えるべく、楽しさをベースに、技術的にもしっかりと上達できるように、デザインしていきたいと思います。

次回は、より具体的な練習メニューについてまとめてみたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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