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幸せは伝播する

8月9日水曜日
〜癌と向き合う36歳の挑戦日記 6〜

今日は診察。前回のCTや血液検査の結果を聞きに大学病院へ。
緊張を紛わすため、今日は本を持参。待つ間は色々考えてしまうので読書に集中することに。
時間になり診察室に呼ばれ、中に入ると担当の先生。

前回一度会っているからか、何故だか少し安心感が。
挨拶して椅子に座ろうとしたら、すぐに診察台に促される。

ドキドキ。
すぐに緊張が戻ってきた。

前回、細胞を摂った部分の抜糸がいきなり始まる。
前回もだが心の準備ができる前に始まるから困っちゃいます。

抜糸が終わり体を起こすと奥から教授がやってきた。

一目で教授と分かる風貌。THE教授。

緊張と共になぜか安心感も。
この人ならきっと治してくれるぞ、と自分に言い聞かす。

早速教授の診察が始まる。

「ふむふむ、あぁ〜、うんうん、ん〜ん、」

触診し、悪性部分の寸法を計り、次は首のリンパあたりを触る。

なんだかドラマや漫画で登場する典型的な教授の診察シーンのようだな、とどうでもいいことを考える。

教授は机に向き直り、レントゲンやCTの写真を見ながら担当の先生と何やら会話を始める。

二人は医学言語を話している。
看護師も後ろから覗き込んでいる。

私は診察台に寝た状態で聞き耳を立てる。

まるで、知っている単語を拾い一生懸命英語を聞き取っているかのように。

少しでもポジティブな単語はないか、ネガティブな単語は出てこないか、必死に聞き耳を立てる。

しかしその努力も虚しく、ほとんど何を言っているか分らず話は終わってしまった。

すると、教授はこちらに向き直り、診察台を起こし私に説明を始めた。

「改めて、病名としては舌癌です。リンパにも転移しているようです」

嫌な予感が的中した。

転移はしていないでくれと思っていたが、やっぱり転移していたようだ。

治療の方法としては、2択
1つ目は手術で取り除く
2つ目は放射線治療・化学療法治療

後日のCT検査、MRI検査の結果を踏まえ、話し合って決めましょうとのことになった。その際は家族も一緒にとのことだ。

今日の結果として、転移している事実がわかり落ち込む部分もあったが、どちらかというと、はっきりしてほっとした方が大きい気がした。

分らないモヤモヤした不安よりは良いことだ、と自分に言い聞かす。

今日は新幹線と在来線とバスを乗り継いで病院へやってきた。
八戸〜新青森〜弘前駅〜バス〜弘前大学病院
帰路も逆を辿る同じ道筋だ。

行きは緊張のせいかお腹が減らなかったが、帰りは急にお腹が減ってきた。
帰ってから家族3人でのご飯を楽しみに、後少し我慢することにした。

八戸駅に到着し新幹線の出口改札へ向かう。
帰省の時期でもあり、新幹線は満席。
上下線の到着も被ったこともあり改札口は多くの人でごった返していた。

改札を出たところにも、お迎えに来た人達が、家族や恋人、友人たちを首を長くして待っていた。
本当に首を長くしている人が沢山いて、これは比喩ではないんだなと知ることになった。
人混みで人を探す時、首を伸ばすあの状況です。

お迎えの人達は、人混みから家族や恋人、友人たちを見つけ出すと、皆満面の笑みになり大きく手を振る。
あちこちから
「おかえり!」「ただいま!」
と幸せな声が聞こえてくる。

移動で疲れていた人たちも笑顔になり疲れはどっかへ飛んでいったように小走りでお迎えの元へ向かう。

大勢の笑顔は私の疲れも吹き飛ばしてくれた。
なんだか感動してしまった。

幸せは伝播する。

早く家族に会いたくなった。私は急いで駅を出て迎え専用の駐車スペースへ小走りで向かった。

妻の車を見つけ、急いで向かう。
車に乗り込むと妻と息子は満面の笑顔で私を迎えてくれた。

「おかえり」
「ただいま」

今日も幸せだ。


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