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コックさん修行の今昔

私が洋食のコックさんを目指し修行を始めたのは今から40年近く前のことです。

最初に見習いとして雇っていただいたお店は、大阪の本町にあった老舗の洋食屋さんでした。

そのお店は昼は手頃な価格のステーキランチが売り物で、夜はアラカルトのフレンチや昔ながらの洋食メニューを売りにしているお店でとても繁盛していました。

そのお店で私はまさに一から色々な技術を覚えさせていただいたのですが、今ではホテル以外でやっているお店は少ないと思われるデミソースを一から手作りしているお店でもありした。

デミソースというのは、牛骨をオーブンで焼いたものと香味野菜を大きな寸胴鍋に入れて火に掛けたら、そこに厨房で毎日発生する野菜の歯切れや肉の筋などをフライパンで炒めては投入していきます。これを1週間程度毎日繰り返した後に、最後に寸胴鍋に浮いてくる上澄みの脂で小麦粉を炒め、更にそれをオーブンで焼いて程よくこがしたものでトロミ付けをして仕上げます。

大変に手間も時間もかかるソースで、これを仕込むためにはそのお店なり厨房で肉を捌いていないと出来ません。

どういう事かというと、ステーキやシチュー用の肉を仕入れる際に、枝肉の状態で肉屋から入ってくるので、余分な脂や筋を掃除してからでないとお客様に出せる状態になりません。

お肉屋さんがお店に肉を出す際にやっている作業を、昔はどこのお店の厨房でもやっていたので、こうした事が出来たわけです。

ところが今ではそうした状態で肉を仕入れることはほぼ無くなったと先日聞かされました。

教えてくれたのは関西の有名ホテルで料理長をしていた方で、たまたま私とその人が同年代だったので昔話に花を咲かせていたら教えてくれました。

私はホテルでは当然昔の様に、枝肉を捌いてデミソースも仕込んでいると思っていたのですが、今では一人前の重さにキレイにカットした状態で真空パックされ業者から納入されるので、肉の掃除が出来るコックさんは居なくなりましたと教えてくれました。

魚も同じで、大きな魚は指定したグラム数の切り身になって納品されると教えてくれました。

この事を聞いて、ちょっと考えてしまいました。

一流の料理人となるには、やはり魚でも肉でも元の状態を知っていて捌ける技術がないとダメだろうと思ったのですが、今ではそうした事を学ぶ環境そのものが無くなってしまったわけです。

肉を仕入れる方からすれば、キレイに掃除されてカットされた状態で仕入れれば、ロスが発生しませんし歩留まりも考える必要がありません。

その事で多少仕入れ値が上がったとしても、仕込みに使う人も時間も節約出来ますので総合的に考えて得になるわけです。

経済的合理性だけで考えると確かにその方がいいかもしれませんが、一流の料理人を目指す若い人にとってはどうなんでしょうか。

同じ料理人を目指す修行でも、昔と今では随分変わったのだなと思った次第です。


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