味と食感とトロミ調整剤
施設や在宅介護している方も含めて、今ではお年寄り向けの食事にトロミ調整剤を使う事が当たり前の様になっています。
これは飲み込む筋肉が衰えて、むせやすくなった人が誤嚥を起こさない様にするためなので、施設でも家庭でもこれを使うことが要介護のお年寄りの為に良い事だと信じて皆さん使っています。
私も施設の厨房で働く際には必ず使います。施設の場合はトロミを付けて下さいとオーダーが入りますので使わない選択肢が無いからです。
しかし在宅で介護されている方には、なるべく使わないで下さいとお願いしています。
その理由について、以前に別の記事でご紹介したことがあるのですが、何度お伝えしても良い大事な事だと思っていますので、今回もその事を書かせていただきたいと思います。
私は普段、近隣のカルチャーセンターなどで、訪問ヘルパーさんや在宅介護をされている方向けに介護食についての教室をさせていただいています。
その際、講義を始める前には必ずトロミ調整剤でトロミを付けたお茶を飲んでいただきます。
最初は少しだけ口に含んで、元のお茶の味とトロミが付いたお茶の味に変化がないか、舌の上で転がして感じて貰います。
多くの方は、味に変化は無いと答えますが中には変化があると答える方も少数いらっしゃいます。
その次に、今度はトロミが付いたお茶をトロミが付いていないお茶を飲むのと同じ様にゴクゴクと飲んで貰います。
そうして今度は、トロミが付いたお茶は美味しかったですか?と質問します。
そうすると100%の方から、美味しくないと答えが返ってきます。
もう見事に100%の方がその様に言われます。
そこで私は、「おかしいですね。先ほどは味に変化はないという方が多かったのに、今度は全員が美味しくないと言われます。どうしてですか?」と再度質問を投げかけます。
この質問に対する答えは様々で、「口に含む量によって味が変化したから」という方もいれば、「理由は分からないけどとにかく不味いモノは不味い」という方もいますが、結論として皆さん不味いと答えられます。
これは、料理の味と言うのは塩味や甘味などの味だけで感じるのではなく、口に含んだときや飲み下すときの「食感」がとても大きく影響しているからで、いくら味つけは良くても「食感」が悪ければ不味く感じるという分かりやすい一例です。
同じトロミでも、片栗粉や小麦粉などで付けるトロミと違い独特のベタッとした食感がトロミ調整剤にはあり、多くの人にはこれが不快に感じられます。
せっかく真心込めて食事を作っても、何気なく使うトロミ調整剤で台無しにしてしまっているかもしれない事を、在宅で介護されている方には是非知っておいていただきたいと思います。
ではどうすれば良いのかという事ですが、片栗粉や小麦粉を使う一般的な方法が面倒なら様々な工夫でやりくりしましょう。
熱い汁物でしたら、最近は水に溶かさなくても直接粉を振り入れたらトロミが付く片栗粉がスーパーに売っています。これだとトロミが付いてもいやな食感にはなりません。
焼き魚やハンバーグにトロミ液を掛けていたのでしたら、一緒にポテトサラダや即席で出来るマッシュポテトなどを常備しておき添えてあげましょう。
要は口の中で食べ物が散らばるのを防いでくれれば良いわけです。
勿論、忙しい介護生活で手間を掛けていられない事もありますから、全く使うなとは言えません。ただ、今まで真っ先にトロミ調整剤に手が伸びていたのでしたら、その前に一度別の方法が無いか考えてほしいと思います。
(元記事は食べごろclub)
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