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ホーユー破産のニュースで思う事

全国で150カ所以上もの学校や施設で給食業務を請け負っていた食堂運営会社「ホーユー」が突然業務を停止したというニュースがありました。

現在この会社の社長とは連絡が取れる状態の様ですので、いわゆる悪質な業者が利益を隠す目的で突然逃げてしまったわけではなさそうです。

私は給食施設での調理経験がありますし、自分で経営していた会社を倒産させてしまった経験もあります。

とても他人事とは思えないニュースでしたので、ちょっと私なりの感想を書いてみたいと思います。

まず、業務委託という業態の特殊性がこの会社の利益を損なったのだと思います。

委託契約は通常年契約ですから、契約を締結した日から向こう一年間は契約書通りの条件で業務を行う事になります。

契約にあたっては当然見積書を提出しますし、競合他社の存在もありますので、どうしても売上がほしい会社は多少無理をしてでも低い金額で仕事を請けてしまいます。

会社というのは、赤字であっても資金の流動性さえ確保出来ればすぐに倒産する事はありません。何とかごまかしながら延命する事が可能です。

この会社の場合、事業を停止した現場に関しては、やればやるほど赤字になるといった事があった様ですので、契約の段階で赤字かもしくは収支ギリギリの線で多くの契約を結んでいたのではないでしょうか。

赤字の契約を取ると言うことは、銀行からお金を借りる代わりに売上を作り資金の流動性を確保するといった目的があったと思います。

つまり銀行からの追加融資がすでに難しい状態だったのではと想像出来ます。

そんな経営状態であるのに、ここの所の光熱費の高騰や原材料費の高騰がボディーブローの様に積み重なっていきます。

お客様に値上げをお願いしようにも契約書をたてに拒否されればどうしようもありません。

これが普通のレストランであれば自社の判断で値上げが出来るのですが、業務委託というのはそこの部分での自由がありません。

私も経験しましたが、経営者というのはとにかく最後の最後まで頑張ってしまいます。

後になって冷静に考えると、とても無理だと分かるのですが、渦中のその時にはそれが分かりません(この場合は、赤字の契約を取ると言うこと)。少しでも可能性があると思えばそちらに突っ走り、結果的に傷口を広げてしまいます。

そうして最後に大きな大きな音を立てて「ポキッ」と心が折れてしまいます。

ホーユーの社長はおそらく今、生きた心地がしないのではないでしょうか。あるいはその時期はすでに過ぎて、今は粛々と破産に向けて久しぶりの心の平安を得ていらっしゃるかもしれません。

とにかくホーユーの社長と従業員の皆さんが次の確かな一歩を踏み出されることを願わずにはいられません。

そして最後にどうしても書いておきたい事があります。

それは業務を委託する学校や施設の側の意識の問題です。

このホーユーにしても、半分程度の事業所では業務を継続しているとの事でしたから、黒字の現場は誰にも迷惑を掛けることなく毎日の食事が提供されているわけです。

つまり、適正な価格で業務委託しておれば誰も苦しまなくてすむわけです。

目先の利益に目がくらみ、とにかく安い業者へと委託先の変更を繰り返す施設はいくらでもあります。

見積書を精査すれば、一食あたりどの程度の金額で業務を請け負ってもらえるのか分かるはずです。その金額があまりにも低いようなら、逆に発注者側から理由を確認するくらいの事がなければ、今後もこうした事例は何度でも起こるでしょう。

自分の所だけ儲かれば、外注の業者がいくら損しても構わないといった事を続けると、結果的に今回の様に突然委託先が無くなってしまうと言うことになりかねません。

商売というのは結局の所どこまで行っても「お互い様」です。

利他の心が結果的に自分の利益にも繋がるのだと、自戒も込めて強調したいと思います。

(元記事は食べごろclub


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