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一日一詩。

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言葉にできないコトバをことばにします。
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#小説チック

【詩】「ただいま」

「ただいま。はぁ」 いつの日にかため息とセットになった 「ただいま」 真っ暗で誰もいない空間でも 帰ってくる場所 そこは我が家 無意識にぽつり「ただいま」 口が勝手に 習慣は恐ろしい 今日も一生懸命に生き抜いた だからどうしたと素直に思う 僕の存在で誰かが救われたわけでもなし 僕の言動で誰かが笑顔になったわけでもなし 今日も今日とて今日が終わる 「ただいま」は終わりの始まりなのかもしれない 「ただいま」が宴の始まりだったあの頃が懐かしい 思い出すほどに今日がおわ

【詩】青、それは僕の好きな色

青、それは僕の好きな色 小さい頃、空を見上げるのが大好きだった 毎日の違う青、右から左で違う青 みんな同じ青だけど、みんな同じ青じゃなかった 青は奇跡の色だと思った 僕は大人になっても夢を追いかけていた 心の中で追いかけていた夢を 体全部で追うようになり 自分一人の世界で追いかけていた夢を 全世界で追いかけるようになっていた 大人になってもそんなことをしていると 「青二才の若造」とか 「あいつの言葉は青臭い」とか 言われる 僕の大好きだった青は未熟な色だった 僕は

【詩】イミとかいう魔法

イミ。 これは人間が使える魔法の一つ。 これによって人は単なる線のつながりを文字と認識し、文字をつなげて文章へと変化させる。文章を読むことで人は何かを理解し、時に感動し、時に救われ、時に涙する。 これが魔法でなくてなんであろうか。 しかも、驚くことに多くの人類はこの魔法を、さも当たり前に使う。 呪文すら唱えることもせずに。 でも、だからだろうか。 呪文を唱えていた頃はまだ自分たちが魔法を使っているのだと、そう思っていたに違いない。 けれども、時が経ち、魔法は当たり前になりす

【詩】理性に負けるな、感性よ。

なんの為にやるのか なんの目的があるのか なんの意味があるのか なんの価値があるのか 理性は私に問いかける その声は大きく、今や権威をもっている 感性は内気である 囁くようにしか私に声をかけない 私は耳をかたむける あなたの味方よ。と心を開く しかし、感性は内気なままである そう簡単には心を開かない 理性は図太く、無神経なところがある 聞いてもないのに間を割って話に入ってくる 私はそんな二人の間をいつも取り持たなければいけない そんな性格の二人だから、すごく馬が合うと

【詩】煩悩まみれの10分間

毎朝10分間、瞑想をする。 何が正しいかは分からない。 「呼吸に集中するべし」というにわか知識だけを携えてこの瞑想はスタートした。 今ではそれだけでなく、日々、独自のテーマが加わる。 それは最近何を学んで、どんなにわか知識を携えたかによって変わる。 今日のテーマは、 「座る、それ以上でも、それ以下でもなく」 10分間が始まる。 無意識に何かを考えてしまう。 これは、それ以上。 どうも座っていられない。 これは、それ以下。 座る、それ以上でも、それ以下でもなく。 じっと座りなが

【詩】最高の銀は銀を磨くことでしか生まれない。

銀 いつからか永遠の2番にされた俺。 いい迷惑だ。 俺は俺でしかない、存在には1番も2番もない。 人間様はそうなんだろ。 もともとは金とも銅とも仲は良かった。 なのに、今じゃ金はどこにいっても偉そうで、銅はいつも俺を妬んでる。 あいつらが変わってしまったのも悲しいし、 なにより、自分があいつらをそう見てるのが哀しい。 社会の波には誰だって逆らえないんだって思ったよ。 レッテルなんて無意味だって言ってる自分が一番それを気にしてる。 あらがいたい。 俺は1番でも2番でもない