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無声日記① 送電塔

いくつもの電線が伸びる。僕が電線を伸ばしているのか、電線が僕に伸びているのか、それはわからない。僕は、団地が立ち並ぶ街の中、まっすぐ北へ伸びている道路沿いにあって、とめどなく流れる車を眺めている。

月の光で、僕は化粧する。時たま、夜道を歩く青年が、顔を上げて僕を見て、あっと声を上げる。

今日は、一日中、晴れていた。雀の群れが、ざらざらと音を立てて鉄骨に止まる。彼らは、僕の酸素だ。僕は彼らを呼吸する。僕は血管を町中に張り巡らし、午後のとろりとした日差しを受けて、微睡む。地球全体が呼吸している。

夢は単純だ。水色の液体の中、赤と、黄の玉が、湧き出す。肌触りはなめらかだ。毎日、毎日同じ夢を見る。





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