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漫画 とめはねっ!鈴里高校書道部

ヤングサンデーに掲載されていて2015年に完結した漫画。
もっと昔、少年サンデーで連載されていた「帯をギュッとね」という爽やか高校柔道漫画の作者、河合克敏先生が描いた書道部のお話。全14巻。

書道に興味がある人なんて中々いないとは思いますが、まぁバスケや野球の漫画も、そのスポーツに興味がなくても青春スポーツ漫画として楽しめるのと変わりません。

高校生同士が作品を競ったり、書展に出す作品の構成を悩んだりする姿が描かれていたりするわけなんですが、出てくる作品の多くが一般公募された作品を使っています。
巻末にどこの誰の作品だったかが載っていて、高校生の作品が多いのですが、やっぱりすごい作品として作中に出てくるモノは、それなりの人の作だったりします。

帰国子女で、長年の祖母との手紙のやり取りのお陰で、字はやたらと上手いけど筆を持ったこともない男の子と、字が汚い事がコンプレックスの柔道部の女の子が主人公。

私自身、書道?習字?なんて小学校でやったきりでしたし、書展で何を良し悪しとして優劣をつけているのかもわかりません。

同じかそれ以下の主人公達が、ちょっとしたきっかけで入部した書道部で、どんどん書の魅力にハマっていきます。教わったことができるようになってちょっと自信がついてきたと思ったら、県内の強豪校のレベルの高さに打ちのめされたり、「書の甲子園」という全国大会で、高校生日本一の作品に感銘を受けたり。

面白くなってくるのは「かな」を学びだす辺りから。漢字発祥の国は中国なので、初めは中国の書の神様とされる人達の作品を学ぶところからスタートするのですが、6巻で全く別ジャンルとも言える「かな」を学び始めます。これがまた敷居が高い!!全く読めません!(笑)

仮名の発祥、日本独自の美意識、かなりの文字数で解説されていますが、中々の小難しさです。ただ、これを経て、主人公の大江くんが「漢字かな交じり」という、書道の中で比較的新しいジャンルに取り組み始めます。

「人間だもの」とか、書道パフォーマンスなんかで見るアレです。それまでは書道の展覧会では漢字は漢字だけ。仮名は仮名だけ。という作品しか認められていなかったそうです。漢字仮名交じりは一般人にはスッと入ってくる良さがあります。

そば屋のお品書きだったり、和菓子や日本酒のラベルだったり、「書」というアートの「味」がわかってくるのがこの漫画の一番推したい部分です。

色々あって、二年生の夏、主人公二人が今までの集大成として書展に出す作品は、1巻から読んだ人なら普通に感動すると思います。
書がアートであること、人の心を揺さぶるものであることが実感できると思います。

一つは有名な詩を味のある字で書いた?描いた?創作作品で、詩の良さも相まって本当に感動しました。涙が出たくらい。主人公の天賦の才能を遺憾なく発揮したアート作品になっていて、この漫画を読まなくても良さを感じるようなわかりやすい感動があります。

対して、もう一人の作品は見本通りに書く「臨書」。
コッチは漫画を初めから読んで、書の鑑賞力がついた人でないと良さがわからない作品だと思います。自分の個性と向き合ったうえで取り組んだ臨書作品。普通の(普通じゃないけど)書道部員の練習の成果を感じる別の感動がありました。

「勉強になる部分」ばかりを強調してしまいましたが、高校の部活動の日常を軽いタッチで描く河合先生の漫画も大きな魅力です。
ぶつかったり助け合ったり、皆で乗り越える部活動。先輩・後輩、進路・卒業。そして恋愛も。大人になってしまった私には眩し過ぎるキラキラした青春が面白可笑しく描かれてます。

河合先生自身もおっしゃっていましたが、「書」というアートと、漫画という媒体は相性が良いと思います。強いて言えばコミックスであるが故の書面の小ささに限界はありますが、書の世界を知るきっかけとして、マイナージャンルの世界を紹介する漫画として、大成功を納めた作品だと思います。

私は子供にも読ませたくて全巻そろえてしまいました。小学生でも問題なく楽しく読んでます。
なんなら小中学校の図書館に置いたら良いと思います。

最終回に近いところで、この漫画の締めくくりになる作品が出てきます。最後だけは河合先生が考えた言葉です。それを主人公二人の合作として完成させるのですが、、、
、、鮮やか!爽やか!
この作品も感動します。
この感覚は読んでみるほかないので、是非!

もう一つ。主人公がある決意を胸に自分の全てを出し切ろうと、最後の作品の構想をねっている時に、ある作品と出会います。
それが井上有一作「噫横川国民学校」
漫画の見開き2ページを使って掲載されましたが、この作品の衝撃も凄かった。13巻かな?
戦争の悲惨さと戦争に対する思い。
凄いです。
これが終盤の13巻に出てきたから私も鑑賞できましたが、もっと序盤で見たとしても、「キモッ」としか思わなかったんじゃないかと思います。

書を楽しむ奥深さ。
書で味わう感動。プライスレスです。

是非「書の世界」を体験してみてください。

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