去る人の湯呑みが一番寂しそう(朝日新聞東海柳壇掲載)
職場のお茶場に、それぞれが持ってきた湯呑みがある。
湯呑みはいがいと、その持ち主を表している。
洗う人のことを考えて、プラスチックのカップの人。
同じく洗う人が万が一割ってしまっても気にしなくていいように100均でかった湯呑みの人。
最初から欠けた湯呑みを持ってくる人。
途中で欠けてしまったけどそのまま使っている人。
和柄の人。
ドーナツ屋の景品のカップの人。
誰かからプレゼントされた湯呑みの人。
自分の好きなキャラクターのカップのひと。
大きい湯呑み。
小さいカップ。
三月は異動の季節。
異動する人は、あんまり寂しそうではない。
残された方が寂しいのだ。
お茶場にいくと異動する人の湯呑みが鎮座していた。
君ともお別れだね。
去る人の湯呑みが一番寂しそう(朝日新聞東海柳壇掲載)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?