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記憶を語るにふさわしい表情

20年程前に観た南方戦線生存者のインタビューで、敵も味方もバタバタと目の前で死んだ話をとてもにこやかにしている映像に「生き残った俺偉いの武勇伝語りか(そういう親戚がいた)」と思ってたら最後その人がポロポロと涙を溢し「妻子にも誰にも今まで話したこともなく、今回初めて話せました」と。
今まで語ったことがない戦争経験者が「死ぬ前に」と語り出した時期だった。話の内容に合わないような微笑は、面識のないテレビクルーへ普通の社会人として生きてきた人が話慣れないことを話す処世としてだったのかと。
だってそれに相応しい対外的な表情なんて、普通の人のストックにあるだろうか。


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