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昭和のタロット、こんな感じだった

先日の記事で、「1970年代、日本の知識人達の間で、タロットと呼ぶかタロウと呼ぶかでエンターキー派vsリターンキー派みたいな、密かな対立があった」という話をしました。

日本のタロット受容史における◯◯

この記事で、辛島宜夫著「タロット占いの秘密」という本の引用の引用をしたのですが、よく考えたら私、この本持ってました。

昭和49年初版、昭和52年28版とのこと
都筑道夫の推薦文も!

裏見返しのとこに、推理作家・都筑道夫の推薦文がありました。ね、「タロットと呼ばれているタロウ・カード」って書いてある。「通称エンターキーと呼ばれるリターンキー」みたいですね。本当にこんな言い方してるSEいるのかどうかは知りませんが(すみません)。
表見返しの推薦文は、詩人の白石かずこが書いてました。(白石かずこは、森茉莉の随筆によく出てきてました。現在も存命のようです)

多分、学生時代に古本屋で手に入れたものだと思います。ただ、当時の友達が「タロットカードは他人の手の触れたものはよくない云々」とか言ってたのと、当時の私には78枚のフルデッキは手に負えなくて、結局死蔵されていたのでしょう。

面白いので何十年かぶりで読んでみたのですが、載ってるスプレッドはケルト十字一種類で、特筆すべきはリーディングの実占例のページが多いこと。匿名の人がほとんどですが、中には有名人を占ったリーディング例もたくさんあります。映画監督・岡本喜八(『独立愚連隊シリーズ』や昭和版『日本のいちばん長い日』)、推薦文を書いた詩人・白石かずこ、音楽家・服部正などなど。

TVにも出演して占ってた模様

「東映スター 白川みどりさん」の「なんとなく、将来の運勢についてみて下さい」には、こんな占いをされたようです。

「月」「女帝逆位置」などが…

白川みどりさんという女優さんについて調べたところ、ウィキペディアには載ってませんでした。かろうじて出演作品のタイトルが検索に出てきましたが、1974〜75年くらいに、おそらくポルノ映画と思われる作品名が何本かあって、多分そのあたりで芸能界から引退されたのではないでしょうか。
辛島氏は「本来あなたの役柄は純情派」と言ってますがその後で「どんな役柄でも引き受けてバリバリこなすと大変いい運勢」とか言ってます。TV番組で本人を前にして占ったようなので、あまり悪いことは言えなかったのかも知れません。

私が気になったのは「何となく、将来の運勢をみて下さい」という、本人の質問です。「何となく」ってなんなんだ。
番組で占うことになったから、質問を適当に考えたのでしょうか。でもそんな質問をするということは、本人が「将来が何となく不安だったから」ではないのか。
その時の本人に聞いてみないと分かりませんが、他の質問者が明確に何かについて質問しているのと、ちょっと違う気がします。

たとえば同じ本で、雑誌記事のためですが、作曲家・服部正氏は「自身が指揮している女性だけのオーケストラGRCE NOTES(原文ママ)でいろいろ問題が起きるので、このオーケストラの将来について」占ってもらってます。
調べたところ「グレースノーツ」はその後も1990年代くらいまで活動し、一定の成果は収めたようです。今は解散したようですが、検索したら「知る人ぞ知る過去の名オーケストラ」みたいな感じになってました。

そういうのに比べるとやっぱりこの元女優さんの場合、「何となく」というのが気になるんですね…。
潜在意識に「月」が出てたり、「周囲の状況」に「星」が出てて環境的には恵まれて期待されていそうなのに、「吊られた男逆位置」や「女帝逆位置」なんかが出てる。そして「運命の輪逆位置」…。
占われてから半世紀後の後知恵かも知れませんが、その後の彼女の女優業は、結実したとは言えなさそうです。憶測ですが、本人はあんまりやる気がなくて、流されるまま何となく仕事してて、結局チャンスを活かせないままだったのではないでしょうか?
最終結果の「戦車」は、「いろんな役を演じること」じゃなく、他の仕事?進路?(当時なら「結婚して家庭に入る」は大いにありそうです)に方向転換して、そちらで幸せになることを示唆していたのかも知れません。

完全な憶測で、ハズレてたら失礼極まりない想像なのですが、タロットというのはこんな風にも読めるよという話でした。半世紀経っても全然色褪せてないですね。

その他のリーディング例については、調べられた限りでは、皆さん成功しておられたようです。

付属のカードはこんな感じ。ウェイト・スミス版を、古代エジプト風にデザインしたそうです。今見ても古さを感じないというか、おしゃれなデザインじゃないでしょうか?
気に入ったので、お香と音叉で浄化し直して、最近使ってます。

今日も雑談でした。よいゴールデンウィークを!

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