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やったね黒猫

クロネコヤマトの24年初頭のパート社員、業務委託社員の人員整理がにわかに話題になっているようです。

郵政との事業統合、委託などのいろいろな影響もあるのでしょうが、一番の驚きは『日本産の会社でそういうことが起こるのか!』という事実でしょうか。

軽貨物を4年ほどかじっていた身として、ちょっと思ったことを書き連ねていこうと思います。

※この内容は個人の主観に基づいた内容を多分に含んでいます。
当たり障りないように書きますが、事実と違う内容などございましたらご指摘など頂けると幸いです。修正いたします。


業務委託の裏側

そもそも、業務委託とはどういった契約形態のことを指すのでしょうか。

ちょっと見てみましたらこちらのサイト様が分かりやすそうだったので、引用させて頂きつつ、自分でも簡単にまとめます。

かいつまむだけでも、

  • 委託者と受諾者の関係が対等

  • 受託者は委託者の指揮命令を受けない

とあります。
しかし宅配および軽貨物運送の業務においては、シフト勤務やコース指定は当たり前のように行われています。

ひょっとしたらこの辺りの契約内容は、各契約書ごとに詳細な付記がされていたりと様々考えられますが、もし現役で軽貨物をやられている方がいらっしゃれば、この辺を見てみるのも面白いかもしれません。

つまり本来的には、元請からシフトの相談や稼働コース、エリアの指示を受けたとしても、「最初の話と違うー、僕はそこは嫌でーす、だからやりませーん」といっても、法的には全く問題ない契約という事になります。まぁ、報酬は出ませんが。


軽貨物業界の実態①

なぜ軽貨物業界は業務委託契約が多いのでしょうか。そのメリット・デメリットはどこにあるのでしょうか。

その前に、軽貨物業界における業務委託の立ち位置を、経験を踏まえて簡単に説明します。

多くの運送会社さんには当然正社員さんもいますが、基本的に彼らはドライバーのほかに、いわゆる営業活動を兼ねています。大口で荷物を持っていそうな会社や個人商店にアプローチして、定期的に荷物のやりとりをさせてもらう相手を増やすのが、大まかなミッションの一つです。

そうすると、個人的にやりとりされている荷物の配達まで手が回らない可能性が出てきます。その荷物をこなすための人手として、「業務委託ドライバー」が必要になります。本来は宅配荷物専門枠でドライバーを直雇用すれば一番キレイなんでしょうけど、そこは色々あるんでしょうね。

そして業務委託ドライバーを探すために、下請け会社と契約します。
この下請け会社が各個人のドライバーと業務委託契約を結ぶわけです。
【追記】今回の場合、黒猫さんと直接契約している個人事業主の人が話の内容の対象者になるみたいですね。下請け会社を経由したドライバーさんは、引き続き業務にあたるようです。

つまり皆様のお宅に「配達でーす」と私服のおじさんあたりが荷物を持ってきた場合、『大手運送会社A社の下請けで入っているB社と業務委託契約をしているドライバーCさん』だったりするわけです。

軽貨物業界の実態②

話を戻して、業務委託契約におけるそれぞれのメリット、デメリットを挙げてみます。

ドライバーさんのメリットを挙げると、まずは気兼ねなく働ける点があげやすいと思います。よく人間付き合いが苦手だったり、ミドル層のセカンドキャリアとして就業していた人を多く見ました。

あとは『キャッシュ』が多くもらえます。いろいろなやりくりに裁量を持つことができます。※『給料』が多くもらえるわけではありません。

デメリットは何といっても福利厚生がないことでしょうか。これは業務委託は皆法律上は個人事業主なので、しょうがないんですが。なのでキャッシュはたくさんもらえますが(天引きじゃないので)、経費、ランニングコスト、保険等を支払うことを考えると、結局雇用関係のある従業員と同じくらいか、場合によってはそれ以下の手取りになることもあります。

下請け会社のメリットはどうでしょうか。
これはもう「いざという時、シラを切れる」ことと、「余計な費用がかからない」の2点に尽きると思います。

雇用契約がないため、法的には各ドライバーに突っ込んで面倒を見る必要は微塵もありません。何かトラブルがあったとしても、窓口対応はすれど最終的な責任はすべて個人事業主であるドライバーが取ることになります。

また、雇用保険、社会保険等の支出を行わずに済むため、会社の資金持ち出しや、報酬支払時の経理計算が簡略化できる事が考えられます。会社によっっては各ドライバーが車を所有する必要がある所もありますので、自動車税なども払う必要がなくなります。

デメリットとしては、上述の様に労使関係を結んでいるわけではないので、委託者が指揮命令を出すことができないというものがあるのですが、暗黙の了解なのか、見えない力が働いているのか、現場レベルではほとんどこの法的効力に基づいた動きは見られず、実質的にお金払いきりで使い切りみたいにできる、『従業員みたいな感じの人たち』が溢れてしまっている実態があります。おそろしや。

そりゃあ労基も怒るでしょ

そんな感じで「あなた個人事業主でしょ」という契約にもかかわらず、業務上の指揮命令を慢性的に受けている(出している)場合は、「偽装請負」を疑われる場合があります。

これはひとつ進歩だし、今後の指標になりえるんじゃないかなぁと思ったニュースを引用します。

従来の感覚でいくと、

【事故っても、ケガしても、トラブっても、みんな自己責任。】

というのが、業界の業務委託の通例でした。逃げ道作れるしおいしいから、下請け会社は殆ど労働者雇用をしてこなかったんです。おそらく。

でもこれが労災認定されたという事は、今後労基が「おたく偽装請負しちゃってんじゃね?」と各社にツッコミを入れる余地ができたという事になります。このような実例を踏まえて、黒猫さんがどんな判断を最終的にしていくのか見ものだな、という感じがします。

もともとめっちゃ薄利多売な部門

僕はやったことないのですが、メルカリとか、フリマサイトみたいなやつって今流行っているじゃないですか。

あの分野…定義が間違っているかもしれませんが、小包より小さい、ポストに入るくらいの配達物を郵政にやってもらおう、そうするとその辺りに関わっていた人たちは必要なくなるよね、というのが今回の黒猫さんのロジックですが、こういうポスト投函物って全然儲からないんです。

ドライバーだった実体験で行くと、メルカリポストは4つくらい配達しないと缶ジュースは買えません。DMみたいなやつは数百投函しないと缶ジュース買えません。しかし通常の荷物と同じくらいの手間や労力がかかる。なのでおそらく慢性的なノウハウ不足で、低利益部門だったんだと思います。でもやっぱり超大手さんだから、そのくらいの見通しは欲しかったというか。



理屈が通るか、現実が通るか

黒猫さんで今回やり玉になってしまっている人は、
『いきなり契約切るなんて人でなし!これから先どうしたらいいのよ!』で、黒猫さん側からすると、
『っていうか元々あなた達社員じゃなくない?うちが必要なくなったし、半年前に通知もしているから普通じゃない?』というのが言い分です。

業務委託という契約体系上の理屈が通るか、実質業務の指揮命令下に入っていたという現実が通るか、どっちに転ぶかがかなり大きな分かれ目です。

物流2024年問題とか言っている前に、こういう今まで見て見ぬふりだったような処遇改善的な部分に、もっと目をやるべきだとは思っちゃうんですよね。

やったね、黒猫さん。どうする、黒猫さん。

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