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股関節のシワの左右差とは

今日は何かと質問が多いこの話題について解説していきます。

最後まで読んでいただければわかりますが、シワの左右差なんてそれほど気にしなくて良いのです。

では、股関節脱臼シリーズいきますよー

新生児誕生のとき

「おめでとうございます。赤ちゃんの誕生です!」

この瞬間から赤ちゃんは地球の重力の元にさらされて、思い通りに動かない『身体』とやらをはじめて自覚することになります。

お母さんのお腹の中では羊水と呼ばれる液体の中にふわふわただよっているため、浮力の力で体重が軽くなっているのです(1/6となるらしい)。胎内では脚や手を自由に動かすコトもできたのに、外に出た途端「なんか体が重いよー」となるのです。

羊水量やお母さんの体型や運動量によって違ってきますが、お腹の中であっても、ある程度動けるくらいの余裕があります。ほとんどの赤ちゃんはお母さんの体に対して頭を下に、顔を右に向けた【第一頭位】という体勢を取っています。

この体勢では赤ちゃんのからだの左:お母さんの背骨側と、右:お腹側ができあがるため、胎内運動環境に差が出ると考えられています。右は良く動いたり、右むくと明るく見えたり。きっと何か違うのでしょう。

つまり赤ちゃんの右側に余裕が生まれるわけです。

・顔は右が向きやすい
・脚は右が動かしやすい

こういった特徴がどうやらある様です。

右向きが多いこと。脱臼は左が多いことはこの特徴から来ているのではないかと考えられます。

徐々に動きを覚える

さて、重力を感じて少し戸惑う赤ちゃんも、数日経てばその重力環境に適応してきます。すると力を入れると動く部分があることに気付きます(!)。その動きに対して、目の前の何かが動いています。それが何かを確かめたくてたくさんたくさん動きます。バタバタしています。するともっとたくさんの反応が返ってきます。あかちゃんは嬉しくてたまりません。

これがあかちゃんの感じている環境です。

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こうして動きを覚えていくんですって。
産まれた瞬間からすでにまわりとコミュニケーションを取りながら成長しているなんて想像するとそれだけで楽しいですね。


ここでひとつ考えてみましょう。

赤ちゃんが良く寝ている。とてもおとなしい子である場合どうなるでしょうか。

寝ていることでその外界との刺激に触れる機会が少なくなってしまいます。また、起きたときも、泣くことで相手の気を引くわけですが、その方法に気付いていなかったとすると、赤ちゃんはしばらくただ見られていることになります。

さらに続けます。想像してみて下さい。

赤ちゃんが横を向いているとき、その方向に親御さんが移動するとどうなるでしょうか。赤ちゃんは目の前の世界がそちらのみに存在し、反対を向こうとは思わないでしょう。それでもそのうち右も左もあることに気付くのですが、それが早いか遅いかで身体の使い方が変わってきます。そうこれが向き癖に繋がるのです。

股関節脱臼についても同じような仕組みが関係していると考えます。左右の股関節の動きの違いから起こってくるものだと思いますが、そのメカニズムの解明にはまだまだ時間がかかります。

シワの差はほとんどが向き癖によるもの

右向きで寝ていることの多い赤ちゃんはもちろん右手しか見えません。抱っこで起こされたとしても右脚しか見えません。左は動いていても確認ができないので知らんぷり。徐々に注意は右側のみに移ってきます。

よく動きの左右差があるのを心配して相談されますが、何か体がおかしくなっているのではありません。それはそこに脚があることすら分かっていない可能性が高いのです。

赤ちゃんの体のシワは脚の動かし方の差や、脚の太さの差で変わってきます。まっすぐになっている脚はシワが少なく、よく曲げている脚はシワが多いです。体の少しの水分の差でも変わってきます。

それくらい容易にシワの左右差ができるのです。

海外の文献を調べると、『シワの差』はあまりスクリーニングとして重要とされていません。これは偽陽性が多いからだと考えられます。つまりあったとしても「へぇー」で終わるのです。シワの差のみで相談してくる人のほとんどは全く異常がありません。これまで見てきたように、シワの差は向き癖と関係があり、それが直ってからもしばらく残ってしまいます。日本ではおそらく家族が見つけやすいという理由で今もこれが注目されています。

向き癖をなおそう!

以前は向き癖をなおすために横向きにしたり、背中にタオルを入れることをすすめていましてー、なおったためしがありませんでした。懺悔です。
向き癖がなおらずに頭が変形してしまった子もいますね。

これは、そっちに向く理由がないですからね。赤ちゃんからすればただの嫌がらせです。向きたくもない方向に行かされるわけです。

それよりも赤ちゃんの興味を向き癖と反対側に作ることが必要です。経験し、反対側にも楽しいことがあるんだと理解できれば自分で向きを変えます。

あと、ドーナツ枕よりも首の下の枕や脚を上げることをすすめます。そっちの方が頭部が安定しやすいです。

抱っこの時間を増やすのもおすすめです。新生児期は抱っこでとてもリラックスしてくれます。抱っこしている間は向き癖があっても自由にコントロールできます。ついでに脚も支えて持ってあげれば股関節脱臼の予防にもなります。

向き癖はこれまで甘く見られていましたけど、本気でなおすことを考えなければいけません。

と言うわけで、シワの差よりも向きグセが問題。

脱!向き癖キャンペーンします。
脱臼検診と並行して行っていこうと思います。

中川将吾
小児整形外科専門ドクター

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