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股関節脱臼の治し方

あまり治療のことには触れて来ませんでしたが、ここでまずは海外での一般的な治し方を紹介します。保存療法の第一はリーメンビューゲル装具と呼ばれているものです。

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↑こんなんですね。数年前に自分で描きました。『リーメンビューゲル』『イラスト』でgoogleトップに出てきます。

保存療法で整復が得られない場合は全身麻酔での手術になります。手術といってもイメージするのはメスですが、ほとんどの場合はいきなりそうはなりません。非観血的整復と言って、関節を開けずにヨイショって整復を目指します。

これについては過去にFBに書いていた記事をわかりやすく編集して再投稿します。

DDH(Developmental Dysplasia〔Dislocation〕of the Hip:先天性股関節脱臼、発育性股関節形成不全)についてのお勉強です。

出展:
BJJ 2016; 98-B:1548-53
A protocol for the use of closed reduction in children with developmental dysplasia of the hip incorporating open psoas and adductor releases and a short-leg cast


要約
イギリスからの報告でDDHの治療で、プロトコルを決めてCR(Crosed Reduction、非観血的整復)している前向きな研究報告がないので調べています。腱切と股関節造影を併用したプロトコルで最低5年間フォローで成績は良好だった。

対象
2000年からの10年間に、1施設でCR治療を受け、その後5年間のフォローアップが可能であった2歳以下のDDH(Tonnis  grade2以上←脱臼の程度を示す分類)の児。

方法
まずは全身麻酔で眠らせて可動域をみます。造影剤を股関節に注射して関節造影をします。関節の骨の位置関係をよく見ながら確実な整復と安定性を確認します。ここで問題があれば次の方法をとります。

① 脚を閉じていくと脱臼する場合や、開排が45°以下の場合は内転筋を切る
② 屈曲90°で外転したものを伸展していくことで不安定になる場合は内側アプローチで腸腰筋を切る

ギプス固定は股関節を90°以上屈曲させて膝上まで巻く

フォローアップは2週間後のCT、6週間後の巻き直し時の関節造影。3ヵ月で外転装具に変更し、計4.5ヵ月の治療期間。その後5年以上フォロー。

結果
10年間で137人が治療を受けて、そのうち120人を追跡しています。再脱臼が9.7%で最終的に5%がOR(Open reduction:観血的整復)。71%に腱切を行っている。

Tonnis gradeが高い方(III or IV)で悪い(P<0.003)
治療時年齢が若い方が成績が悪い(P<0.04)(12ヵ月でわけた)

ON(Osteonecrosis:骨壊死)が厳しくとって29%だけど,ほとんどがKaramchi grade1で最終的にSeverin 1になる。(つまり成長に異常なし)

感想
整復率がそれほど良くない。8割成功ではいままでの方法と特に変わらないので画期的とは言えないかな。滋賀では牽引で成功率99%の牽引治療.そしてONの確率も低い。

腱切を行って一見骨頭の変形を予防していそうなのに、それでもONになってしまっている。この原因は何でしょうか。やはり固定方法なのかな。

今自分の勤めている病院でも牽引治療を行っていて整復率は良い感じ。どうしても時間がかかってしまうのが難点だけど。それについても少しずつ良い方向に改良中。切らずに手術の入院と同じくらいの期間で治すが目標。

それよりも予防方法を考案して、数を減らす方が良いけどね。
そこにリハビリテーションも組み合わせて術後も安心な治療を目指していきます。

つくば発の股関節脱臼治療をめざして!

中川将吾
小児整形外科専門ドクター

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最後まで読んでいただきありがとうございます。
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