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外反扁平足について

今日は『最近の臨床で出会う扁平足の傾向について』で進めていきます。お付き合いください。

扁平足と外反扁平足はわけて考えましょう

運動器検診を行っていると、扁平足という状態によく出会います。

そう、これは状態です。足の土踏まずがなくなってしまった状態を「扁平足」と呼んでいるに過ぎません。

では何がより病的なのかと言うと、外反扁平足。これは脚をまっすぐにしたとき、踵の骨が内に向かって傾いているときに診断する病名です。体重を受ける部位が曲がってしまっているので、小児の場合そのままでは骨の成長障害に繋がることがあります。

よりわかりやすく詳しく説明しましょう。

『真の』外反扁平足の見方

”まっすぐしたとき”と条件をつけましたが、人はずっと止まっているわけではありません。歩いています。

歩いているときは、足にかかる体重を受け止めるため、より高い力を使っています。つま先に力が入り、足首の安定のための力も入るので、歩いている時の方が踵の骨が安定します。止まっているときは外反扁平足だと思っていても、歩いているときは綺麗にまっすぐ戻る場合があります。これは”見かけ上の扁平足”と言ったり、筋力の発達途上であると考えられます。

扁平足と言われているこどもたちは、立っている状態でアーチが潰れて扁平になるけど、歩いているときや、足を上げているときはアーチができています。これは基本的に力の使い方の問題なのでアーチサポートを使用する意味はあまりありません。立っているときの状態をいくら改善したとしても、力の出し方に変化が起きないのです。運動量が増えると成長とともに改善されることも多いです。

では、どの状態が治療対象になるのでしょうか。

いまの自分の判断基準としては、歩行時の目に見える外反扁平足です。これは上にも出ましたが、脚全体のバランスが崩れる原因になります。その状態が当たり前になると改善は起こらないです。痛みはなくても成長障害が出たり、筋力バランスの変化の影響で長期的には足関節や膝関節まわりの骨や関節の変形につながることもあります。

扁平足の原因と対策

こどもの扁平足はどうしてなるのかは分かっていません。以前集団の調査を行った際には『冬生まれ』に多い傾向が見られました。そうなんです。ここでも冬生まれなんですね。どうしてでしょうか??

まわりの環境による影響で、運動発達に差がでることが示唆されています。冬に特徴的な着衣や気温、日照時間などの影響があるのではと考えていますが、真意は不明です。

1つの解決策として、「裸足で遊べる環境」が上げられます。

足部の外反に影響を与える筋には、外側の腓骨筋と内側の後脛骨筋があります。それだけではなく、前足部の扁平に影響を与える足部内在筋と呼ばれる母趾外転筋や内転筋、短母趾屈筋などの発達も重要です。

個別に鍛える方法もありますが、そもそもその感覚を得るのが難しいのでこどもには不向きです。どんな地面にも即座に対応して走り回っている方が鍛えられます。

最近は靴がよくなり、靴下も履き、危ないと言う理由で整地された場所でしか遊ばないことも増えています。昔はそれこそ野山を駆けまわって、川の中を裸足で飛び回っていたものです。(でも自分もものすごい扁平足でした。なぜ??)

環境の変化に身体が悪い方向に適応している可能性はあります。屋内に段差や足を使って遊べる環境を持ったリハビリテーションクリニックは、こどもの足育にも貢献していと考えています。

もう一つ、要因があります。

立ち方、歩き方の変化です。これは足の問題ではなく、股関節や骨盤周囲の筋力の出し方によるものです。いわゆる体幹という部分の使い方が上手くいかないと立位や歩行でのバランスの取り方が変わってきます。

こちらも体力や筋力がつくことで改善され、歩行の仕方にも良い影響が出てきます。

真の外反扁平足と発展途中のこどもの足を見分けて、正しい方向に導ける存在になりたいと思います。

中川将吾
小児整形外科専門ドクター

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