おや、股関節脱臼が増えている!?
こんばんは。つかの間のお休みも土曜のお仕事と当直と建築の打合せであっという間に過ぎてしまいました。
でもこんな忙しい毎日は久しぶりです。
そんな中、タイトルにもあるようにある疑いの声が聞こえてきました。
『股関節脱臼の発生が増えているのではないか??』という疑問
数を数えればそうなのかもしれませんが、自分たちの施設の話だけではよくわかりません。たまたまの可能性もありますが、以前から懸念していたことが実際に起きているかもしれないので驚いています。
冬生まれなのでの赤ちゃんがこの時期に生後4-6ヵ月を迎えるので確かに少し増えることは予想できます。しかし、過去の経過と合わせても1.5-2倍程度いるのではないかと思うくらいたくさん発生しています。
その原因をもう少し掘り下げてみます。
いまの状況は、赤ちゃんとその親の生活に次の様な変化を及ぼしています。
①検診の遅れ
②外出自粛による自宅生活の長期化
①検診の遅れ
以前から乳児健診の遅れについて警鐘を鳴らしてきました。しかしそれは重症化してしまうからという理由からでした。もしこのことが何かの影響を与えているとすると、
検診が遅れる⇒自然に治ってしまう軽症の診断が遅れる(整形外科に来る前に治っていた症例)⇒重症化し、整形外科を受診
こういうことが考えられます。
②外出自粛による自宅生活の長期化
※この内容はほとんど自分の持っている仮説です。
股関節脱臼の発生は脚の動かし方や姿勢に影響されていると言われています。それらは赤ちゃんの運動発達に何らかの影響を与えていることが考えられます。ここから脱臼は運動発達のわずかな異常が引き金になって起こっているのではと考えています。
股関節脱臼はポコっといきなり外れることはなく、力を入れる方向が股関節の中心を向いておらず、そのため支点である大腿骨頭が少しずつ外にずれてしまうことで発生しています。
姿勢だけで外れることはなく、何らかの力で頭の方向に引っ張られなければ脱臼の位置関係にはなりません。この何らかの力というのが自分自身の力だということです。赤ちゃんは成長の中で、それが自然な力の出し方だと思うと、痛みを感じることもなく同じ力を繰り返し使います。その繰り返しで軟骨の変形が生じてしまうのです。
外出自粛によって、抱っこの回数や時間が少なくなる
↓
同じ姿勢のまま寝ている
↓
その姿勢が股関節伸展位や内転位かもしれない
↓
抱っこする時間が減ることで、脚が広げられる機会が減少する
↓
寝ている時間が増えることで、脚を動かす時間も減少する
↓
脚の動かし方に少しのズレが生じやすくなる
こうして正しい運動を ”偶然” 身につけられなかった子が、その後股関節脱臼と診断されるのではと考えています。
冬生まれに脱臼が多い理由として外出機会が少ないからと言われれば、それも納得の理由になるでしょう。
最もらしい話ですが、科学的な証拠はありません。ただし、今後検討してみたい内容です。
安心して外出できる場所の提供。そしてそこで子育ての情報が得られれば、それだけで股関節脱臼が減ってしまうかも知れない。そんな妄想を抱いています。
股関節相談についてはこちらのリンク先から(Twitter、Instagram、LINEなど)随時受け付けています。
中川将吾
小児整形外科専門ドクター
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