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日本とヨーロッパのイラストの仕事は全く違うよという話 その4

絵を再び描こうと思った。

せっかくならドイツの絵のトレンドも知りたいし、新しいテイストに挑戦してみたい。というわけで本屋に行く。

実はドイツはここ数年、水彩で描いた花輪とレタリングを組み合わせたスタイルの絵が人気だ。ドイツのイラストレーターたちに言わせれば「ここ5年ほど」流行しているらしいが、ドイツを去った今でも需要があるようだし、息が長い。日本のように爆発的に人気になり、1年くらいであっという間に忘れ去られていくのとは違う。少ない刺激で満足できるお国柄というのもあるのだろうが、流行を激しく追わなくていいのはクリエイターにとってはありがたい。飽きられることを常に心配したり、無駄に心がざわざわしないでいいのだから。

ただアーティスティックな要素は必須である。ドイツではイラストはアートである。流行であろうがなんであろうが結局いいものは残るのだ。この点は非常にヨーロッパらしいと言える。私も自分の絵が使い捨てではなく長く飾ってもらえるようなものでありたいという理想があったのでこの機会に自分もその方向を目指そうと思った。

「レタリング&水彩の花の絵イラスト」の描き方本は、さすがトレンドだけあって本屋にもたくさんあった。しかし買ったからといってサンプルのように描けるわけではない。英語の本もそうなのだが、実際こうした本は買っただけで満足してしまってしばらくすると本棚の奥深くに仕舞われてしまうのだ。自分の経験上、これらの本もそうなるなと、すぐさま思ったのだが、ちょうど手に取った本の最後のページの著者紹介をふと見たとき、面白いものを見つけた。この著者はどうやらワークショップをやっているらしい。

ワークショップ。これはいいかも知れない。

問題は場所だ。ベルリンだった。ドルトムントからドイツの新幹線ICEで5〜6時間の距離。夫にそのことを相談すると、ワークショップは土曜日だし1泊するのは問題ないから行っておいでと快く承諾してくれた。確かにこんな中都市ドルトムント周辺なんぞでワークショップをやっている一流のイラストレーターを必死になって探すよりはこちらが都会に出向いた方がよっぽど早いだろう。こうして私は本を購入し、彼女のホームページにアクセスし、ワークショップの予約を取り、参加することになった。

そのワークショップの場所はベルリンのオシャレ地区の一角にあった。

そのイラストレーターさんが手掛けるグッズを売っているブランドショップを抜けるとワークショップ用のオシャレなアトリエがあった。机の上には紙や絵の具などの本日の道具、そしてお菓子やコーヒーも並んでいる。とてもオシャレでリラックスした雰囲気だ。すごい!やっぱり売れっ子は違う!!これは相当儲かっているのだろう。座っていると次々に参加者がやってきた。皆、ベルリンのおしゃれ女子といった感じである。私はずっとドイツ人は全然オシャレじゃないと思い込んでいたけど、それはドルトムントだったからなのか…。今まで誤解しててごめんなさい(汗)。

そしていよいよワークショップがスタート。初心者から参加できるコースということで筆の使い方や水彩絵具の使い方など基本的なことから教えてくれた。筆を握るのは本当に久しぶりだった。無心に色を紙の上に乗せていく。自分の体のどこからかアドレナリンだか脳内のハッピーホルモンだかが出まくっているのをビンビンに感じた。ああ、やっぱり私、絵を描くのが好きだったんだなあ。

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*これが久々に描いたワークショップでのイラスト

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*こちらはドイツのボンで参加したレタリング&水彩ワークショップ。

実はデジタルで書く前は、一応アクリルや水彩、油絵や日本画などの経験もある。だがどうも苦手で、どれも半端に挫折してしまった。そうした絵画に関しては日本でもカルチャースクールや教室はあるのだが、講師が正統派絵画の人ばかりで、明らかに自分の目指す方向とは違ったため習う気にはなれなかった。(実際に習ったこともあったが結局挫折した)やはり水彩でもアクリルでも技術さえ習えればそれでいいわけではないのである。では自分の好きなイラストレーターなどのワークショップに参加すればいいじゃない?と思われるかもしれないが、経験上、日本で売れっ子イラストレーターの方はまずワークショップをしない。していたとしても「子供むき」だったりとか自分の技術を見せない短時間のお茶を濁したものばかりな気がする。一流の職人がそんなに簡単に手の内を見せるわけがないのだ。自分好みのイラストレーターがワークショップをしてくれるというのは奇跡に近いと思った方がいい。

が、ドイツでは違った。有料のワークショップとはいえ、先生は出し惜しみなく自分のありとあらゆる知識や経験を語ってくれる。時間もたっぷり4時間とか。そこは日本と違い欧米のオープンな良さが漂った。結果、人生初のドイツでのワークショップ参加は方向として大正解だったのである。

この日を機に私はとうとうドイツでの目標を見つけた。

ドイツにいる間は、ワークショップに通ってできる限り絵を学ぶことにした。そこでドイツ国内の素敵なイラストレーターを探してはワークショップに通った。どれも刺激的で本当に楽しかった。

が、限界が来る。

最初こそ数人見つけて行けたのだが、底がついてしまった。予想以上にドイツには自分好みのイラストレーターが少ないことが判明したのだ。実際ドイツは音楽の国ではあるがアートの国ではない。モダンなアートを習うのならばパリだったりロンドンだったりする方がいいのではないか。しかしパリはフランス語だしハードルが高いな…ではロンドンは!?

というわけで早速インターネットで検索開始。

予想通りロンドンは素晴らしかった。素敵なイラストレーターがわんさかいる上、ワークショップまでやっているではないか!ちなみにロンドンはドルトムント空港から1時間20分。なんと片道五千円程度で行けてしまう!(高速バスレベルでないか!)ならば行かない理由がない!行こう!(即答)

で、ここでまたターニングポイントが訪れる。

ロンドンの人気イラストレーターさんのアクリルガッシュワークショップに参加したことで、その後私はアクリルガッシュにハマることになった。水彩画以上に私の絵のテイストに合うのだ。一応私はイラストレーターなので、絵に関する理解はそこそこ早い。一通りの話を聞いて実践すれば筆も動く。先生にも「あんた筋がいいじゃない!」と褒められ、私の作品の写真まで撮っていた(笑)。ここでも先生たちは皆親切で出し惜しみなくその知識を私たちに教えてくれた。あるワークショップではシンガポール出身の女の子と仲良くなりインスタなども交換した。絵の勘を取り戻せたのか、自分の中の何かが覚醒したのか、家に帰ってもどんどん創作することができるようになった。

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*このワークショップが転機に。コロナ前に駆け込んだ最後のワークショップとなりました。

とにかくワークショップに通い出したことを機に私のドイツ生活はモノトーンから色付きになったのである。(イラストだけにね…)

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*このワークショップはなんと6時間!もっと英語ができたらいろんな話ができたのにな〜と思いました。

ちなみにこれを読んで、私が語学堪能だと思ったアナタ。いえいえ全然ですから…。絵なんて横の人が何やってるかチラッと見て真似すれば大抵できますから!笑

要はそんな環境に飛び込む勇気があるかどうか。それだけです。
その5に続く




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