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日本とヨーロッパのイラストの仕事は全く違うよという話 その5

ヨーロッパのイラストレーターたちも、ブランディング、書籍の表紙や挿絵、絵本など、日本と同じような仕事をしている。ただ仕事の需要自体は日本に比べ、グッと少ないのは事実だ。なのでドイツ含めヨーロッパでは仕事を受けるだけでなく、絵画のワークショップ講師として活躍している人も多いことが分かった。もちろんレベルは講師によって様々だが、一流イラストレーターの人も講師をしていて、直接習えることはすごい魅力的だと思う。やはり売れている人のオーラは違う。学ぶことも本当に多く参加して本当に良かったと思った。

そんな刺激を受け、自分らしい絵を追求し始めたところ、夏祭りで一緒にポスターを作ったデザイナーの友人がある提案をしてきた。彼女がデザイナーとしてお世話になっている老舗のカフェに絵を見てもらってはどうかというのだ。そのカフェは今年100周年なので何か素敵なイラストを描いてもらえたら嬉しいと言う。

これはどえらいことになった、と思った(笑)。

もうその時は帰国する直前だったし、自分にそんな大きな仕事ができるか不安だったのだ。が、帰国するからこそやるべきなのかも知れない。間違いなくいい思い出になるはずだし、今後のキャリアに生かせる気がする。

そこでイラストを見てもらったところ、カフェのオーナーはたいそう私の絵を気に入ってくれた。そこでカフェの外観を描いて欲しいと言うのだ。私もこんなに勉強してもドイツ語が全く流暢ではないので、正直言うと、こうした大人の難しい話をすると実はほとんど理解できない。ドイツ語で話している時の私の会話というのは、霧がかった道の見えない登山道を歩んでいるような感じであって、所々、霧がかっていない部分を鋭く探し出し入り込むという、つまり会話をしながら聞ける部分だけで会話の糸口を探っていく話し方だ。なので実はものすごく疲れるのである。

まあそうした言語のハンディもある状態で先方の要求も上手く聞けたのがどうか確信は持てなかった。が、なんとか進めるしかない。結局習うより慣れよ、何事も経験である。若い頃は雑誌の挿絵ひとつ書くだけでも大冒険な気がしていたが、今はもう緊張しないわけだし…。案件が来ると嬉しいのに緊張してしまうという矛盾。でもおそらくイラストレーターやっている人というのは皆そんな感じじゃないのかしら?(と思ってマス)

数日かけて作品が出来上がり、先方に納品しに行った。先方は大喜びしてくれた。

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*こちらのイラストです。

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*ポストカードにもなりました

何が嬉しいかって私の絵を本当にじっくり見てくれて、ここのこれが素晴らしい、ここのこれが本当に可愛くていい、などと興奮して語ってくれるのだ。時折少し作品を自分から離してうっとり眺めてみたり、近くに寄せてじっくり見たり。正直言って今まで仕事した中で、クライアントさんがこんなに自分の作品を大事にしてくれたことはなかった。やはりこれがアートとしての1枚絵の価値なのか、と感じた。雑誌の挿絵などの依頼は非常にカジュアルで私としてもストレスの少ない仕事の1つであるし、クライアントさんも好意的な人が多くいつも楽しく仕事をさせていただいている。でも今回のようなアートとしても1枚絵の仕事には別格のような感じを受けた。

と、いうわけで日本に戻ってきたこれからはアート方面にも向けて仕事をしていこうと思っている次第でございます。帰ってきたばかりで日本のイラスト業界事情もすごく変わっていたりして戸惑いの連続ですが。またどういう点が違うかなどは別の機会で…。

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*先日クリスマスバージョンも依頼が来たので作成し納品しました。日本からドイツに送りましたよ〜。年末ごろカレンダーになるそうです。楽しみ💕

ということでこのテーマはひとまず終わります。

イラストレーター兼アーティスト高橋ユウを今後ともよろしくお願いいたします!




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