見出し画像

映画鑑賞note: 英国的な映画・その2

note 随分とご無沙汰してしまいましたが、やっと更新を。
エリザベス女王のPlatinum Jubileeに乗じて(?)イギリス映画の感想です。

★『ハワーズ・エンド」"Howards End" (1992)



随分前から気になっていましたが、なかなかレンタルできず、このGWにやっと見ることができました。(と思いきや、いつの間にかレストア版公開&Amazonプライムでも見れるようになってたんですね。。。!)
原作も読み終わったので、感想を✏️

ブルームズベリー・グループの作家、E.M.フォースターの小説の映画化で、1993年のアカデミー賞受賞作。エマ・トンプソンが主演女優賞に輝いた作品ということで、期待して鑑賞。俳優陣はどの役もはまってて良いです。脇役ですがドリー役の女優さんとか、好きです:-)

『日の名残り』と同じ監督の作品とのことで、ヴィクトリア朝の名残りを感じさせる1900年代初頭のイギリスの、美しい邸宅や衣裳・調度品など、細かい部分まで再現された映像は、ずっと眺めていたい感じでした。こういうクラシカルなイギリスのイメージは、特に日本人好みだと思います^^ ただ、ロマンチックな物語を期待すると、肩透かしを食らうかもしれません。

ストーリーは、予告編から受けるようなロマンスものではなく、二つのタイプの中産階級(世襲の中産階級と実業家)と労働者の、異なる階級の人々を結びつけようとする(貧困層の人々を助けようとするが。。。)シュレーゲル姉妹の姿を通して、イギリスの階級社会における問題を描いている作品でした。そこに姉妹の恋愛や結婚が絡んで、男女の差やジェネレーションギャップ、家族のあり方などが描かれます。
映画では割とさらっと描かれていますが、原作では著者フォースターの、階級社会に対する見方や意見が現れていて(ときおり、小説というよりエッセイを読んでいる気分になる)、現代社会の問題にも通じるもの(当時からあって未だにに解決していない)も多く、ハッとさせられました。

シュレーゲル姉妹は、遺産で年間800ポンドの収入があって、自身が働かなくてもやっていける中産階級、姉メグが結婚するお金持ちのウィルコックス家は実業家の成り上がり、そして姉妹が助けようとする労働者階級のバスト氏は、扶養する妻がいる上に、姉妹が関わったあることが原因で無職になってしまう。。。さて、彼らを結びつける運命やいかに。

ヴァージニア・ウルフはE.M.フォースターを凄く慕っていたようで、自身の小説の評価など、彼の意見に少し頼りすぎる面もあったそうです。この作品でのシュレーゲル姉妹の姿も、おそらく『自分ひとりの部屋』("A Room of One's Own" / 1929) などにおけるウルフの考え方に影響を与えたのかな?、と思います。

🎞

★『シングルマン』"A Single Man"(2009)


アメリカ製作で監督もファッションデザイナーのトム・フォードで、厳密にはイギリス映画ではないのですが、イギリスからアメリカに移住した英国人教授のお話ということで。原作はクリストファー・イシャーウッドの小説、"A Single Man" (1962)。『さらばベルリン』で有名なイギリス人作家で、自身も1939年にアメリカへ移住、大学で講師として教壇に立っています。

コリン・ファース演じる大学教授ジョージは、長年の同性愛のパートナーを交通事故で失い、失意のあまり自殺しようとするが。。。その1日に起きる出来事を軸に、恋人との思い出・過去の回想やイメージがフラッシュバックされます。1日の最後、彼が出した結論は。。。

親友の女性(イギリス出身でアメリカ人と結婚したが、既に離婚)や、「先生と話がしたい」と慕ってやってくる教え子の美青年との、微妙な駆け引きや心の動きが、興味深く面白かったです。舞台が1960年代初めのロサンゼルスで、まだビートニクの時代だったと思いますが、映画ではスウィンギン60'sのイメージ(特に女性のファッション)が使われてて、主役の教授はフランク・ロイド・ライト風のガラス張りの邸宅に住んで、黒縁メガネにスーツ(「ネクタイはウィンザーノットで」)と、1950年代風。あの時代のカルチャーが好きな人には、いいとこ取りで楽しめます。

先生が授業で課題に使うのが、オールダス・ハクスリーの"After Many a Summer"(1939年)で、教え子の青年がサイケデリックに興味ありげ。。。なくだりは、同じ時代のイギリス人作家でアメリカへ移住したハクスリーへのオマージュでしょうか。"Single Man"の原作とも、どちらも未読なので、また読んでみたいと思います。



この記事が参加している募集

映画感想文