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🌼南砺市へ 〜自然と民藝と土徳に触れる旅〜 ②福光編(後編)

<光徳寺へ>

田んぼ沿いの道を電動自転車でぐんぐんと進んで(風が強くて結構漕ぎました)、光徳寺には15〜20分ほどで到着。民藝館が併設されている、民藝の聖地として有名なお寺です。民藝運動に傾倒していた、こちらの住職さんと交流があった関係で、棟方一家が福光に疎開することになったのだそうです。



お寺の入口にある石碑。
階段を登って山門をくぐると境内です。


前回は時間がなくて前を通り過ぎただけだったので、今回初めて伺いました。階段を登って山門をくぐり、玄関を入ると、受付の方が声を掛けてくださり、館内について丁寧に説明していただきました。お寺の部屋部屋を回廊のようにぐるっと一周して、奥の蔵に民藝作家の展示室があるようです。

和室の各部屋に、インテリアのように民藝品が展示されていて、しかも普通に人々が会話をしたり準備したりしているので、なんだか個人のお宅にお邪魔した感じです。窓や襖は開け放たれていて、ふと庭を見ると綺麗な庭が見えたり、廊下をすーっと通り抜ける、いい風が吹いていたり、緩やかな時間が流れていました。のんびり過ごせたら楽しいだろうな〜と思いました。

しかし、この日は「棟方まつり」のイベントで、民藝の巨匠の作品の頒布会や、地元の韓国人陶芸家さんの展示会が催されていていて、しかも連休とあってなかなかの混雑。
お寺のそれぞれの部屋に飾られた世界の民藝の品々(東洋のものも西洋のものも)や、たくさんの襖絵、カラフルなマットやラグ、書や掛軸など、どれも面白くて興味深かったのですが、ゆっくりじっくりとはいかなかったのが、ちょっと残念でした。コレクションが全体的にエスニック(アジア・アフリカ的)な印象を受けたのは、仏教がインドから渡ってきたものだということと関係があるのかな?と、ふと思いました。

民藝作家の展示室には、ムナカタ展に出張中の『華厳松』の代わりに、『女人観世音』の屏風が展示されていました。他にも沢山あったのですが、混み合ってきたので、さっと一通り見て、外に出ました。通路の展示ケースに、さりげなく私家版の「美の法門」や、仏教の言葉を書いた柳宗悦の書などが飾られていました。

法要&講演会が本堂で14時からとのことで、13時過ぎから30〜40分ほどでぐるっと一周しました。本堂へは5分前に慌てて滑り込み。40くらいあった席はほぼ満席でした。

お庭が素敵でした✨
紹介記事などで写真をよく見かける、こちらの部屋は応接間だそうです。


<不生忌&「かわいい民藝」>


この日(5月3日)は柳宗悦の命日ということで、「不生忌」と銘打って、命日の法要と、となみ民藝協会の会長で、大福寺というお寺のご住職の太田氏の講演が行われました。
このイベントは、たまたま富山美術館に置いてあったチラシで知って、講演のテーマ(「かわいい民藝」)が面白そうだったので、せっかくなので日を合わせて旅行することにしたのでした。

私はまだ見ていないのですが、昨年NHK Eテレで「かわいい民藝 救いの美」という番組が放映されたようで、太田氏と、展示会をされていた陶芸家の金さんがご出演されていて、その内容を踏まえた講演でした。


民藝の美について、仏教の「救い」や「他力」について、柳の仏教美学(「美の法門」)や法名にもなっている「不生」という言葉についてなど、民藝に関するいろいろなエピソードを交えながら、面白くわかりやすく説明していただけて、なかなか得るものの多い講演会でした。

『かわいい民藝』の番組が作られたきっかけも、ウクライナ侵攻を受けて「平和」を感覚的に描けるものとして、南砺の美しい景色や民藝の「救われている美」が選ばれたそうで、日本民藝館の展示品には武器がない、という話も含め、民藝の品や民藝運動を通じて「平和」ということを改めて考えることができました。
「かわいい」= cute, prettyではなく、≒ lovely、愛すべきもの、とのことでした。民藝を見て「かわいいな」と思うのは、そのものが救われているから・安心できるものだから、ということで、なるほど〜と腑に落ちました。

柳宗悦の著書、特に民藝美や仏教に関するものは、ふわっと理解できてもきちんと理解するのはなかなか難しいと感じていたのですが、作り手である金さんのお話(”自分が住んで心地よい場所で、その土地で得られるものを使って、作りたいものを作る” =「健康の美」「無事の美」ということでしょうか)や、「不生」=意識が生まれる前の状態(例:この講演を聞きながら、外でカラスが「カァ」と鳴いていると認識している)の説明などを通して、具体的・感覚的なヒントが得られたのも収穫でした。難しそうに感じていた仏教や真宗の教えについても、なかなか面白いし、ためにになると感じました。

黄金の阿弥陀如来像が祀られ、志功さんの「無量寿」の衝立が飾られた、井波彫刻の欄間の美しい本堂でお話が聴けたのも、とても良かったです。法要の時、お経を聞いていると無心になれて、荘厳で心穏やかな気分になりました。

民藝の器や織物であつらえた、素敵な祭壇が設けられていました。
ご本尊である掛軸は、左2つが柳の筆による書。
右の書(法名)は柳の研究者の方が、善徳寺のあの部屋に泊まった時に、
結局一睡も出来ず(!)そこで書かれたものだそうです。


<まとめ>


棟方志功の足跡を訪ねて来たつもりが、思いがけず民藝の根っこの部分に触れる旅となりました。
『富山では、大きないただきものを致しました。それは「南無阿弥陀仏」でありました。』(『板極道』 )と志功さんも書かれている通り、この土地で感じた人々の温かさや居心地のよさ、気風や風土などは、深い信仰心や丁寧な暮らしぶり= 土徳にあるんだなと感じた次第です。特に福光は、とても活気の感じられるところで、それも志功さんの作品づくりや戦後の活躍に影響があったのではないかと思います。
私もポジティブなパワーをいただきに、また南砺を訪ねたいと思います。

<終>

チラシいろいろ。いろいろ巡って、楽しかったです。
スタンプラリーは富山県美術館だけ貰いそびれました。。。😅