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文豪の足あとを巡る旅・その1<鎌倉・西御門サローネ>

2月中旬に、鎌倉と葉山・逗子を旅してきました。
今回の旅のテーマは、文学ゆかりの地めぐり。土地柄たくさんの作家・作品にちなむ場所がありますが、ここ数年興味がある白樺派や、泉鏡花ゆかりの地を中心に巡りました。


1. 西御門サローネ(旧・里見弴邸)


西御門サローネ(旧里見弴邸)

1日目は鎌倉へ。駅前から鶴岡八幡宮あたりまで続く雑踏を眺めながら、バスで10分ほど揺られて、大学前のバス停で下車。そこから山の方へ10分弱歩いて、西御門サローネという、大正〜昭和初期建築のお屋敷へ。こちらは白樺派の里見弴の旧邸で、建物の公開と喫茶室もされています。(※ちなみに今年の5月で一時休館されるそうです)フランク・ロイド・ライト建築の影響を受けたとみられるデザインの主屋と、奥に後年増築された高床式の和室の別棟があります。


階段の欄干と天井のアーチが印象的です。


白梅や白椿が満開の、美しいお庭を眺めながら、ゆっくりクリームティーをいただいてきました。カップは棚の中から好きなものを選ぶことができます。こちらはウエッジウッドのティーカップ。


玄関を入ってすぐの、日当たりの良いクッション席を案内していただきました。
窓の外に白い椿が見えます。


おしゃれなサンルーム。
ちょうど日が陰ってしまって暗いですが、晴れた日は居心地よさそうです。


ティータイムの後は、じっくりお部屋を見学。
1階には暖炉と長テーブルがある応接室と、それに繋がるサンルーム、廊下の先におそらくキッチン(非公開)があり、窓にステンドグラスがはまった階段を登ると、別棟へ渡る廊下がありました。そのまま上へ登ると寝室(非公開)のようです。

2階の廊下で繋がっている別棟は打って変わって、趣のある和室とお茶室が。廊下の大きめの窓から、お庭が一望できます。入っている窓ガラスが、日本民藝館のと同じような、昔のガラスだったのが素敵でした。


茶室のような造りの和室ながら、廊下の窓は広く取られていて明るいです。
庭や近くの山々の風景が一望できます。


この個性的な天井の造りやお部屋のテイスト、どこかで見覚えのあると思って訊いてみたら、奈良の志賀直哉邸を手掛けた、京都の大工さんを呼び寄せて建てられたそうです。やっぱり・・・(笑)(←どれだけ仲が良かったんだろうと気になって、思わずこちらの本を購入しました)

すっかり満喫して外へ出ると、白梅の花びらがパラパラ・・・よく見ると、メジロが数羽やってきて、お花をつついていました。春の訪れを感じた瞬間😊 時折ピィッと可愛らしい声で囀っていました。
鳥の声や木々が風で揺れる音などの、自然の音以外は殆ど何も聞こえず、落ち着いた静かなひとときが過ごせました。


お庭の白梅と椿が満開でした。


おじゃましました。



帰り道は駅まで徒歩で。鶴岡八幡宮へお参りついでに、『日曜美術館』でも紹介されていた、坂倉準三建築の神奈川県立近代美術館・鎌倉本館(現・鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム)を眺めたり、雪ノ下の鏑木清方記念美術館に立ち寄って、楽しいひとときを過ごしました。


旧・神奈川県立近代美術館 鎌倉本館



2. 鏑木清方記念美術館


旧居跡に建てられた美術館。
小町通りを少し奥に入ったところにあります。

1フロアのみのこじんまりとした美術館ですが、屏風や肉筆画、版画、雑誌の口絵やスケッチなど、若い頃から晩年の作に至るまで、さまざまな作品を見ることができました。有名な美人画だけでなく、植物や風景を描いた作品も素敵でした。中にはカルメンや、キューピー人形を手にした少女といった、洋風モチーフの作品も。細かく描き込まれた着物の柄や、岩絵具の色を生かした鮮やかで美しい色遣い、たおやかで艶な女性たちや愛らしい子供たちなど、すっかり見入ってしまいました。

他には画室を再現した一室と、椅子に座ってお庭を眺めたり資料や本を読むことができる休憩室がありました。

画室。
遺愛品が並べられた机には、紺地に白で「鏡花」の文字が染め抜かれた手拭いも。
上にかかっている『御著作所』は、尾崎紅葉の筆だそうです。


作品の写真撮影は不可でしたが、手軽に購入できるポストカードが多数あるのと、叢書図録という詳しい解説付きの図録のシリーズが出版されています。ポストカードは数十種類あったので、皆、目移りして悩んでいました。(修学旅行の写真販売のように、申込書に欲しい枚数を書いて、窓口で購入します)

私は泉鏡花の小説の挿画や本の装丁について、めちゃくちゃ詳しかったこちらの叢書を購入。清方だけでなく他の作家(小村雪岱や鰭崎英朋など)の作品や、小説の簡単なあらすじ、年譜など、至れり尽くせりの内容で、鞄が一気に重くなりましたが😅、買ってよかった一冊でした。


記念館を出て小町通りへ向かうと、休日の午後ということもあり、とんでもない混雑! 慌てて車道のある大通りの方へ抜けて、駅へ向かったのでした。

<その2・葉山編へつづく>