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ヴァネッサ・ベルとブルームズベリー・グループ/"Bloomsbury at Home" & "Life in Squares"感想

"they lived in squares, painted in circles and loved in triangles".

ブルームズベリー・グループについての本や作品、はまって色々と鑑賞しているのですが、やっとBBCの三時間ものドラマのDVDを見終わったので、お気に入りの本と合わせて感想を✏️ 

★"Life in Squares" (BBC drama, 2015)

タイトルから連想されるような、ブルームズベリー・グループの物語、というよりは、画家ヴァネッサ・ベルの人生の物語。3部構成で、1)妹のヴァージニア・ウルフ、2)ヴァネッサの夫クライヴ・ベルと愛人ダンカン・グラント、3)息子ジュリアンや娘アンジェリカとの関係を、それぞれメインに描いています。登場人物はかなり省略されていますが、それでもややこしいので、一度ブルームズベリー・グループについての本や、ヴァネッサの伝記などを読んでおいたほうが、内容が入りやすいと思いました。20世紀初頭のボヘミアン(芸術家)たちの、既存の価値観にとらわれない自由な生活と、様々な愛の形の物語。

ストーリーはコンパクトに纏まっていて分かりやすいし、俳優の演技も悪くなかったですが(ヴァージニア役とリットン役は、イメージに合っててなかなか良いと思いました)、芸術家としてのヴァネッサはあまり描かれていないのと、割と淡々と進むので、もう少し踏み込んだほうが面白かっただろうなーと思います。ヴァージニアも突然亡くなってしまう感じだったし。(リットンに至っては、第一部では結構登場してたのに、いつの間にか亡くなっている扱い。。。)

ダンカン・グラントも、同性愛者であったり、ヴァネッサのソウルメイトとしては丁寧に描かれているけれど、画家としての凄さがあまり伝わってこなかったのがちょっと残念でした。イギリスだと、それぞれの作品は良く知られているので、逆に人となりを描いたほうが、興味深いのかもしれませんが。。。ブルームズベリー関連の書籍では、皆に好かれる友人的存在のバニー(作家のデヴィッド・ガーネット)が、ここでは結構な悪役で描かれているのが印象的でした(笑)。

そう思うと、映画『キャリントン』は、感情を揺さぶるようなストーリーだけでなく、リットンとキャリントンのクリエイティブな面にもきちっとスポットが当たっていて、優れた作品だと思ってしまうのでした。

実際に彼らが共同生活を送った、Charleston Farmhouseで撮影されていて、自然光が当たっているような、少しくすんだ映像が綺麗でした。

<追記>↑のトレイラーには出てこないのですが、ヴァネッサとダンカンの娘アンジェリカ役で、『シング・ストリート』や『ボヘミアン・ラプソディー』のヒロイン役のルーシー・ボーイントンが出演しています。見ていて気付かなかった😣 ちなみに晩年のヴァージニア・ウルフ役は、『娼婦ヴェロニカ』のキャサリン・マコーマックです。

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★"Bloomsbury at Home" (by Pamela Todd, Abrams Books 1999)

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ヴァネッサやダンカンの絵画や写真を中心に、彼らが暮らしたCharleston、ヴァージニア&レナードのMonk's House、リットン&キャリントンのTidmarsh & Ham Sprayなど、ブルームズベリーの人々のカントリーハウスでの暮らしにスポットを当てて書かれた本。バイオグラフィとしても分かりやすく、読み応えがありました。装丁もセンスがあって素敵です。

著者は雑誌のアートやレストランの記事を担当していたこともある女性とのことで、彼らが食べていた料理や庭で育てていたものなどについても詳しく書かれていて、面白かったです。"Bloomsbury Biographies"と題して、ブルームズベリー関連の人々の人物辞典が付いているので、分かりやすくて便利。(本文読んでいて、この人誰だっけ、というときが多々あるので)絶版で手に入れにくいのが難ですが、アーティストとしてのブルームズベリー・グループに興味がある人には、絶対オススメです。

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口絵にヴァネッサが描いたリットンの肖像画が載っているのも、お気に入り。キャリントンによる、リットンに対する畏怖やリスペクトが現れた、イコンのような作品も素晴らしいですが、こちらは軽やかで、友達としての親しみや気軽さも感じられて、好きです。

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ヴァネッサとダンカンが暮らしたCharlestonは、現在ではミュージアムとして公開されています。("People"のページには、ブルームズベリー・グループ周辺の人々についても、詳しく書かれています)コロナが収まったら、↑のキャリントンの絵が収められているNational Portrait Galleryと合わせて、ぜひ訪れてみたい場所。。。🇬🇧


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