小説|1月2日。2人は10年後に会う約束をした。
12月26日。
アオイは、またトモからのメッセージを受け取った。
トモはいつだって、アオイに用事がある。
アオイは返事をした。
「いいよ、明日会おう」
12月27日。
アオイはトモと会った。
トモが誘ってきたのに、アオイもなんだか乗り気になってくる。
でも、そのことに後ろめたさもある。
なぜ楽しみになんかしてしまうんだろう。
アオイはいつだって、トモとの繋がりの終わりを意識した。
今日が最後かもしれない、今日を最後にしなければならないかもしれない、と。
だからこそ、なのだろうか。
アオイは、トモと過ごすと決めた日には、トモを幸せにしたいと思った。
大切なトモを、最後かもしれない今日、これまで以上に笑顔にしたい。
たとえ、自分には、他に大切な人がいるとしても。
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12月26日。
トモは、アオイを誘い出す天才だ。
何か理由をつけてはアオイを呼んで、終わればまた次の理由を考えた。
もともとはアオイのほうが呼ばれたがっていたのだと、トモは思っている。
でも今となっては、トモのほうばかりアオイを誘っている。
12月27日。
アオイが自分のことをどう思っているのか、トモにはよくわからなかった。
好きなのか嫌いなのか。
あの人よりも、好きなのか。
それでも、トモは気にせずに、とにかくアオイを幸せにしたいと思った。
大切なアオイを、トモにやみつきになるくらい、喜ばせたい。
そうすればいつか、きっと振り向いてくれるから。
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12月31日。
アオイは心に決めた。
今日を、本当に本当に最後の日にしなければならない。
これまで何度、終わりを考えただろう。
最後を考えるたびに、アオイはトモとより強く繋がり、そしてそのことがアオイに終わりを考えさせる。
最後の日である今日、2人はこれまでで最も強く繋がった。
1月1日。
夜明け、アオイはトモの隣で、明るい未来を祈った。
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12月31日。
トモは心を尽くした。
アオイとの今のために、未来のために。
今日が素晴らしければ、明日から始まる新しい1年は、きっともっと素晴らしい。
2人はこれまでで最も強く繋がった。
1月1日。
夜明け、トモはアオイの隣で、明るい未来を祈った。
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