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県内2強対決は奈良育英高校(奈良クラブユース戦)に軍配!~U16ユース選手権&県1部リーグ~

 9月に入り目下奈良県高校サッカー界の2強と呼ばれる奈良クラブユースと奈良育英高校が、U18トップチームとU16チームで2週に渡り直接対決するという日程があり、見逃せないとばかり観に行って来たので観戦記を残しておきます。




◼️県1部リーグ第11節

【9月7日(土)9:30KICK OFF】
奈良クラブユース vs 奈良育英高校

 当日を迎えるにあたり奈良クラブは開幕9連勝で単独首位という立ち位置でトップ独走態勢に入るため、奈良育英は第2節で奈良クラブに負けた以降は8戦無敗の3位という追いかける立ち位置で優勝争いに踏み留まるため、両チームとも負けられないライバル心バチバチの首位攻防戦となりました。

【両チームスタメン】

奈良クラブユーススタメン(1-4-1-2-3)

 トップチームの監督解任の影響を受けてユース監督のダリオが、トップチームに引き抜かれてしまったので急きょ監督交代のトバっちりを受けたユースチームです。
 この日の指揮官が内野さんだったかどうかは肉眼では確認できずも声かけの内容からは…っぽいかな?と思いました。
 この日のユースはトップチームとは違ってエコノメソッドから来る従来システムに変更はなく安定の1-4-1-2-3の布陣でありました!

奈良育英高校スタメン(1-4-4-2)

 奈良育英は攻守のバランスが安定する1-4-4-2で入ってきたので奈良クラブとの噛み合わせの上で如何にズラされず守備を固める事ができるかがポイントになります。

【両チームの戦術プランを考察】

 奈良育英としては奈良クラブに底でボール循環されながら、中盤を経由してビルドアップされて主導権を握られるのは避けたいと思うので、序盤からハイプレスをかけてくると想定していました。

ハイプレス①
~スペインサッカー研究所より引用~
ハイプレス②
~スペインサッカー研究所より引用~

 これに対して奈良クラブは奈良育英の足が止まるまではロングボールで育英DF裏を狙ったり、ハイプレスをゴール前まで引き込んで前線と最終ラインを分断させた上で、ライン間を取って前進するというプランを想定しており、この試合は序盤どちらが主導権を握るのかの闘いだと考えていました。

最終ライン裏スペース
~スペインサッカー研究所より引用~
最終ライン裏へのロングボール①
~スペインサッカー研究所より引用~
最終ライン裏へのロングボール②
~スペインサッカー研究所より引用~
分断によるライン間スペース狙い
~スペインサッカー研究所より引用~
ハイプレスを引き込む
~スペインサッカー研究所より引用~
分断してライン間に縦パスを通す
~スペインサッカー研究所より~

【前半戦のゲーム内容】

 それで実際ゲームはどうなったかと言うと、奈良クラブが奈良育英のハイプレスに慌ててしまい、奈良育英の縦に速いサッカーに付き合う形となり序盤の主導権は奈良育英が握ります。

サイドを縦に速い攻撃
~スペインサッカー研究所より引用~
自陣からサイドを縦に速い攻撃
~スペインサッカー研究所より引用~
中央を縦に速い攻撃
~スペインサッカー研究所より引用~
自陣から中央を縦に速い攻撃
~スペインサッカー研究所より引用~
敵陣で中央から縦に速い攻撃
~スペインサッカー研究所より引用~

 奈良育英の攻撃は上記の通り、幅を取らずに電光石火の如く縦に進んで一気にゴールを狙うという形で、この日も奈良クラブからボール奪取した時点で自陣であろうが敵陣であろうが、縦に速く攻め上がりシュートまで持ち込んでいました。
 前期シーズンの奈良クラブの試合を観た時にアンカーだった6番はこの試合CBで、代わりにアンカーポジションには19番が入りましたが、序盤から奈良育英のハイプレスに苦戦してチームは機能せず早々に布陣を変更してきます。

前半序盤ローテーションで布陣を変更

 上記の通り6番がアンカーポジションに入ってからは7番との関係性も良くなり、奈良クラブも落ち着きを取り戻しボール保持しながら、奈良育英から一旦ゲームの流れを奈良クラブに引き戻す事に成功したかに見えました。
 しかし、31分に奈良クラブCB4番が奈良育英の選手との競り合いで負傷している流れから、左さいどフリーだった奈良育英13番にボールが渡り、思いきり蹴ったミドルシュートが起死回生のスーパーゴールを生み、奈良育英は待望の先制点をあげる事に成功します!

 この試合で奈良クラブの一番の誤算は、先制点を許した事よりCB4番が負傷し交代を余儀なくされ、せっかくゲームの流れを取り戻したかに見えた布陣を、再び6番をCBに19番をアンカーポジションに戻す事で手放す形となり、ゲームの流れを奈良育英に渡した事だと思います。

CB4番負傷交代により布陣を変更

 このアクシデントから奈良クラブは混乱したのかゴール前の守備でファーサイドを見落としがちになり、アディショナルタイムに奈良育英の右サイドからのクロスをファーサイドでフリーの選手に決められてしまい、まさかの2点ビハインドでハーフタイムを迎える事になってしまいます。
 逆に奈良育英としては前半勝負のフルスロットルで飛ばした結果、奈良クラブから2点リードして前半折り返せたのは、プラン通りで正にしてやったりだったのではないでしょうか!

 ハーフタイムで奈良育英は恐らく2点リードをアドバンテージに、飛ばしすぎた前半からスタミナを考慮して後半はペースダウンして来るだろうと予想しました。
 それによって奈良クラブは底でボール保持する時間が作れて普段通りのポジショナルプレーを取り戻せるかも?という点を反撃のポイントにあげました。

【後半戦のゲーム内容】

 後半になると予想通り奈良育英はハイブロックからミドルブロックに変更して、守備を固めて入る事にプラン変更してきました。
 そうなると奈良クラブはボール保持が出来る様になるので、底で循環しながらアンカー19番のプレーも機能しだして、本来のポジショナルプレーを取り戻した様に見えました。

 すると後半立ち上がりから奈良クラブの攻勢が始まり、受け身に回った奈良育英は防戦一方の耐える時間帯となり、遂に奈良クラブは56分奈良育英ゴール前中央からワンツーの崩しでゴールを奪い反撃の狼煙を上げます。
 奈良クラブ本来のポジショナルなサッカースタイルは、県内の高体連では見られない数多くの戦術パターンを持っているので、個人的に感じている奈良クラブの戦術基本パターンを紹介します。

縦に速くではなく対角に攻める
~スペインサッカー研究所より引用~
中盤での流動的ポジショナルプレー①
~スペインサッカー研究所より引用~
中盤での流動的ポジショナルプレー②
~スペインサッカー研究所より引用~

 奈良クラブユースのサッカーにおける基本コンセプトは対角へのビルドアップと、中盤でのポジショナルプレーの2つだと感じていて、ここからいろんな攻撃パターンを生み出していると思います。

底循環から逆サイドへの展開
~スペインサッカー研究所より~
中盤を経由して逆サイドへの展開
~スペインサッカー研究所より引用~
中央からサイドへの展開
~スペインサッカー研究所より~
寄せて広げて対角へのロングボール
~スペインサッカー研究所より~
押し込んで戻してフィニッシュ
~スペインサッカー研究所より引用~

 いろんなボールの動かし方と連動したポジショニングでビルドアップ出来るし、場合によっては当然ロングボールの使い方も知っているし、時間帯によってはボールを保持して時計の針の回す術も知っているのが、奈良クラブユースの強みだという印象で観戦しています。
 だから県内高体連の強豪校と比べても戦術レベルが一段も二段も格上のチームだと感じています。

 後半は奈良クラブが主導権を握ったので当然同点となりそうなチャンスシーンは必然的に何度も作りましたが、奈良育英のGKを中心にシュートブロックを含め身体を張ったプレーで、気迫のこもったプレーで奈良クラブにプレッシャーを与えたと思います。
 そして、奈良クラブの流れを止めてしまったプレーがあり、これは70分頃だった記憶するのですが、右サイドから奈良育英陣内のゴールライン深くまで加速してからドリブルで押し込んで、あとはボール折り返せば走り込んで来ている味方選手がフィニッシュするだけだと思ったのですが、このドリブルを仕掛けた選手が角度のない位置からシュートを枠外に蹴ってしまい、奈良クラブとしては願ってもない同点機を不意にしてしまいました。
 この時にベンチの監督から『チームを壊すな!』という内容の叱咤する声が聞こえました。
 確かにあれを決めれば恐らく奈良クラブは勢いにのって逆転していた可能性は高いと思います。
 しかし、そのあとは少し萎縮したのか…それとも取り返そうと焦りが出たのか…奈良クラブにしては珍しく各選手ミスが目立ち始めて、自陣でボール奪われた際に慌てたのか不用意なファールからセットプレーを奈良育英に与えてしまい、結局このセットプレーから80分ボールウォッチャー的にファーサイドを見落としてしまい、奈良育英にフリーでヘディングシュートを打たせて痛恨の失点をしてしまいましす。
 さすがに常勝軍団の奈良クラブユースの選手達も高校生…この状況で残り10分+アディショナルタイムとまだ時間が残されているにも関わらず、息を吹き返した奈良育英の勢いにも飲み込まれて遂に県内リーグ戦の連勝記録を39連勝で止めてしまいました。
 残念に思ったのはダリオ監督ならあのシーン何て声をかけたのかな…と思いました。
 監督が言ったことは正しい…それは間違いないのですがそれまで攻勢をかけていた勢いが止まった様な気がしてなりませんでした。

 結局のところ県内2強対決は奈良育英に軍配が上がり見事な快勝劇でリーグ戦の熾烈な優勝争いに何とか踏み留まりました。
 そして9月14日(土)第12節終了時点での県1部リーグの暫定順位は下記の通り優勝争いは大混戦です。

9月14日(土)終了時点でのリーグ戦績

【ゲームを通しての雑感】

 正直なところ奈良クラブユースなら奈良育英のハイプレスはロングボールを使いながら押し返して、奈良育英のスタミナを消耗させて自分達に優位なサッカーを展開すると考えていましたが、実際は奈良育英の奇襲作戦に慌ててしまい、チーム全体で余裕を作れなかった事が敗因だと思いました。
 ちょっと連勝が長く続いた事でどこか奈良育英を舐めてゲームの入りに気の緩みがあったかもしれませんね…これを機にまた強い奈良クラブユースになれる様に精進して、プリンスリーグ関西2部昇格プレーオフでは勝ちきって昇格を果たしてほしいです。
 逆に今回は勝てた奈良育英ですが10回やったら半分の5回勝てるか?というと正直何度も通用する戦術プランではないので、奈良育英としては縦に速い攻撃だけでなく奈良クラブの様に、幅を使いながら遅い攻撃も準備してもっと攻撃パターンの引き出しを多く落とし込んだ方が良いと思います。

【ご参考】

 今回はスペインサッカー研究所メンバーシップ記事で使われている図で似たようなシーンの図を引用させて頂きました。
 ボクがサッカー部の顧問ならトレーニングや分析方面にも絶対入会しインプット増やしてチームを強くしたいと思うほどです。
 ボクはメンバーシップ会員で観戦程度に必要な知識なら素人のボクでも理解しやすくサッカーの奥深さを感じれる様になりました。
 奈良県内のサッカーに携わる指導者や選手、保護者に届いてほしいコンテンツだと思います。

【X(旧Twitter)】
小嶋将太さん

【ホームページ】
スペインサッカー研究所

【note】
メンバーシップ


◼️奈良県ユース選手権決勝

【9月15日(日)14:30KICK OFF】
奈良クラブユース vs 奈良育英高校

決勝ラウンド最終結果

 昨年の前回大会と同じ決勝カードとなりました。
 昨年は奈良クラブユースが奈良育英を圧倒して5対0で退け初優勝を果たしました。
 それで試合前に実施した事前アンケートでも奈良クラブユースが優位という前評判となりました。

【両チームスタメン】

奈良クラブユーススタメン(1-4-1-2-3)

 ネット配信でGKの背番号だけが確認出来なかったですが恐らくこの布陣で11番だけが決勝で初めて観た選手です。

奈良育英高校スタメン(1-4-4-2)

 こちらは背番号を確認できてこの布陣だと思います。

 この決勝戦の展望については下記添付するnote準決勝観戦記の最後に描いたのでご確認ください。

 決勝戦の試合展望にも記載ある通り、この試合も先ほど県1部リーグで挙げた奈良育英はハイプレス、奈良クラブはロングボール&分断ライン間への縦パス…という戦術プランで両チーム入ってくると思っていました。

【決勝戦のゲーム内容】

 対戦前に当初考えていたより両チームのクオリティが高くなく緊張しているのかな…というパッとしない前半戦となりました。
 ゲーム内容的には奈良育英が予想通り序盤からハイプレスを仕掛けてきましたが、連動性が低かったので奈良クラブもロングボールでなくとも剥がせて中盤にもっと縦パス通せるかな…と思いましたが、セーフティにロングボールで陣地挽回していくシーンの方が多く決定機の少ない前半戦となりました。
 因みに今回初見の奈良クラブ11番は時々このロングボールを回収してドリブルで奈良育英DF陣に突っ掛けに行っていたので、奈良育英がハイプレスで来たらロングボールを11番に当てて起爆剤にするプランだったのかもしれませんね…
 あと気になったのは奈良育英のWボランチの片方が奈良クラブのアンカー55番にマンツーマン気味について縦関係になるため、数少なかったけど奈良育英FWの背中にあるライン間スペースで育英ボランチの両脇を使われて、奈良クラブIHの38番と30番に前に運ばれる現象も起きていました。
 奈良クラブとしてはこのライン間を使えるのならロングボールではなく、このシーンの様にライン間への縦パス入れるシーンを必然的に何度も作り出すべきだったなと思います。

 前半はスコアレスで折り返してハーフタイムでのポストは下記の通りで、先ほども書いた通り奈良育英の前線ラインとDFラインが分断されていたので、奈良クラブは中盤スペースをもっと使いたかったです。

 奈良育英としては前半のうちに得点したかったけど無失点で乗り切れたので前半まずまず最低限の事は出来たのかなと思います。

 後半になると奈良クラブが主導権を握りだして、底で循環しながらビルドアップも出来る様になってきたので徐々に得点する匂いはしてきましたが、11番にボールが渡るとドリブルで暴走するので上手くフィニッシュするまでのシーンはなかなか作れませんでした。

 スコアレスで迎えた50分に奈良クラブのミドルシュートを自陣ゴール前でブロックした奈良育英の選手が、こぼれ球をクリア出来ない間に奈良クラブの選手がボールを奪いシュートして待望の先制点を上げました!
 これで流れは奈良クラブへ完全に行くものだと考えましたが、リードして直ぐはゲームを落ち着かせるという鉄則を忘れてしまったのか、奈良クラブは立て続けに追加点を取りに前掛かりとなったため、奈良育英の前線へのクリアボールでDF裏を取られてしまい…GKとの1対1を奈良育英に決められ54分に直ぐさま同点に持ち込まれてしまいました。
 結局ゲームはそのまま後半が終了してPK戦に突入する事になりましたが、奈良クラブにとっては1点リードしたアドバンテージから奈良育英を前掛かりにさせて、カウンターを狙いたいところを逆にカウンターで失点するという…チームとしてあってはならない失態を起こしてしまいました。

 PK戦は奈良育英GKが奈良クラブ2人目、3人目をシャットアウトして4人全員決めた奈良育英が昨年の雪辱を果たして優勝しました!

【来季以降に主役の選手達へ】

 正直この決勝戦は奈良クラブユースの自滅とも言えるゲーム内容で一体どうしたんや?と思えるほどのデキの悪さでした。
 これもトップチームのフリアン監督解任に伴いダリオ監督がトップチームに抜かれた影響なのかもしれないと感じています。
 逆に奈良育英は単調な攻撃で劣勢の状況に追い込まれながらも諦めず奈良クラブユース相手によく同点に追い付いたな…と思います。
 しかし、両チームとも今季U18が県1部リーグ2位以内となり、プリンスリーグ関西2部昇格プレーオフに勝って来季からプリンスリーグに参入する様なら、来季その場で闘うのは両チーム共このU16メンバーの中から主力選手がいると思うので、まだまだプレーのクオリティを上げて行かないと直ぐに県リーグ降格して自分たちの集大成でかる3年生の頃に、再び県リーグに降格しているかもしれないという事を理解した上で心して掛かってほしいと思います。

◼️あとがき

 今回も観戦記を最後まで読んで頂きありがとうございました。
 今回のテーマをnote書くにあたりまして176票ものアンケートご協力頂き併せてお礼申し上げます。
 アンケートの結果も7割を超える方達に読みたいと回答を頂きとても励みになりました。
 今後も観戦して戦術プランがある面白いゲームを中心に観戦記を書いていきますので、引き続き今後とも何卒よろしくお願いいたします。
 そして、今回は県1部リーグの観戦記はこれまで以上に力を入れたので、是非シェア拡散のご協力も何卒よろしくお願いいたします。

以上

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