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奈良県高校サッカー新人大会決勝戦のLIVE配信を見て~県内2強時代から群雄割拠時代を経て見えてきたもの~

まず最初に近年の奈良県高校サッカー新人大会は7組に分けて開催していたブロック大会から、近畿大会の開催時期の変更に伴う県代表を決めるため、今大会は久しぶりに県内頂点を決めるトーナメント大会となりました。
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そして2022年2月12日(土)は新人大会の決勝戦が開催されましたが、今大会は無観客試合だったため決勝戦は奈良県サッカー協会によるLIVE配信もありました。

【決勝の対戦カード】
奈良育英高校 vs 山辺高校

  • 昨年に古豪復活から県リーグと選手権代表の県2冠を勝ち獲った奈良育英高校

  • 一昨年に創部4年目で選手権代表と昨年インハイ代表の県2冠を勝ち獲った山辺高校

そういう事で新人大会決勝は県内新旧強豪対決だという事と、2022年シーズンの奈良県1冠目はどちらが獲るのか?という事で、話題性のある対戦カードによるレベルの高い決勝戦を期待していました。

【両校スタート時システム】

奈良育英高校:1-4-3-3
山辺高校:1-4-4-2

【ゲーム振り返りと違和感】

  • KICK OFF早々に序盤から山辺は前線から積極的にプレッシングをかけて、中盤も連動して育英の選手をしっかりハメており、対する育英はそのプレッシングをまともに受けてしまい上手くボール保持できず、苦し紛れの前へ急ぐアバウトなパスで簡単にボール失っており、前半飲水タイムまでは完全に山辺が優勢にゲームを進めていた。

  • 前半飲水タイム後は山辺のプレッシングも若干弱まり、育英も少しずつボール保持できる様になって、中盤を経由するビルドアップを見せて深さも取れる様になりました。でも急いで攻撃を仕掛けようとするため幅を使ってない分、山辺DF陣の選手間を広げられず縦パスをよく引っ掛けて決定的なシーンを作るまでには至らなかった。

  • 山辺は恐らくゲームプラン通りの前半戦だった思うけど、せっかく育英が山辺にハマってロストしたボールを奪っても、中盤を飛ばした縦に速いカウンターで裏を狙ったパスに終始してしまい、こちらも攻撃パターンが単調で育英DF陣を脅かすまでに至らなかった。

  • 後半に入るとハーフタイムで山辺対策を整理してきたのか、育英がサイドチェンジを駆使しながら幅も使ってビルドアップしてきたので、この後半飲水タイムまでの序盤戦が育英らしさを一番出していた時間帯でした。延長戦までに山辺を仕留めるならここだったかもしれません。特に後半飲水前の右から左サイドへ展開から山辺SB-CB間を抜けた選手が、スルーパスを受けたシーンは完全に山辺DF陣を崩しており、クロスさえ折り返し出来てれば(実際はトラップが少し長くなりゴールライン割ってしまった)ゴールを獲れる決定機だったと思います。

  • 対する山辺は後半も前半と変わらずプレッシングからショートカウンターを狙うゲームプランを続けて『頑張って走り続けるサッカー』を見せていました。ここでご存知でない方の為に説明しておきたいのは、山辺高校は部活ではなく『ボスコヴィラサッカーアカデミー』というサッカー育成のために、私設会社が山辺高校と提携しているクラブチームの様な存在であるという事です。アカデミーの育成方針の一つには『ハイクオリティな戦術の習得』とも唱われているので、創設当初から奈良県の旧態依然とした保守的なサッカーに対して、風穴を開けてくれる!と期待していましたが、決勝戦もこれまで同様に理想と現実で乖離があるのかな…という残念なゲーム内容でした。

  • 後半飲水タイム以降は両校疲れからなのかプレー精度が落ち出して、オープンな展開でボールが両校のゴールエリアを往き来する事が増え、GKのゴールキックかパントキックが多くなってきました。そして80分間スコアレスのまま決着つかずに20分間の延長戦へ入ります。

  • 延長戦はお互い既に消耗しきっているのと膠着状態を打破する対策も見当たらず、オープンに蹴り合うだけの展開が続きセットプレー or ミスからしかゴールが期待出来ない内容で、このままスコアレスでPK戦を待つだけかと内心は思っていました。

  • しかし決勝点に繋がったラストプレーは山辺の前線の選手が育英CBを離してロストボールを拾った育英GKに、ロングボール蹴らせまいと単騎プレスに行ってしまった事から始まり、これまでなら前線にロングボール蹴っていた育英GKが、この時ばかりは山辺の単騎プレスでフリーになったCBへ落ち着いてパスを出したのが結果的に功を奏しました。このゲームの育英はほとんど縦に急ぐ展開が多かったのに、このラストプレーはGKからパスを受けたCBを起点に楔と落としを2回繰り返し、ボールに寄せてきた山辺を引き付けた事で出来た空きスペースへ出した横パスを受けたWGが、快足飛ばして遅れて戻る山辺DFをドリブルで振り切り、最後は山辺GKを交わしてシュートを決める劇的なゴールと同時に、試合終了の長い笛も吹かれて奈良育英の新人大会優勝が決まりました。

  • 昨秋から奈良育英の試合は選手権予選、本大会、今回の新人戦と中継や配信で見る機会も多いのですが、いつも余裕なく『何でそんな縦に急いで攻撃仕掛けるんだ?』と思う事が多かったので、今回の決勝点の様に『緩急つけた方が相手チームは守りにくい』という事を理解した上で、プリンスリーグ開幕に備えてほしいと思います。

【2強時代から群雄割拠時代へ…】

ここからが今回このnoteのテーマで本題に入ります。
20年程前の奈良県高校サッカーの勢力図は奈良育英、一条の2強時代と呼ばれていました。

そのため、県内のポテンシャル高い中学生は恐らく県内で選手権本大会出場を目指すのなら、奈良育英か一条のどちらかを進学先に選ぼうと思っていたと容易に想像できます。

この2強は言うなればクラブユース出身の技術の高い選手が集まる奈良県選抜チームでもあり、当時この2強なら全国大会や近畿大会に出場しても勝てるチームであったと過去の戦績からでも分かります。

そう言った2強時代から時を経て、他校サッカー部も育成に対して力を入れだし、その成果は着々と結果に繋がり始め今や県1部リーグに所属するなど10校程の有力校は、いよいよ県代表に手の届く位置にまで実力をつけて、群雄割拠時代へ突入してきたと言っても過言ではなくなりました。

2010年から奈良県高校サッカーを見てきた僕としては、各校の実力が均衡してきたこの状況がとても嬉しかったのですが、コロナ禍で無観客試合が続いた事で指導者さんのnoteやTwitterなどで、サッカーに対する考え方や指導方法などに触れる機会も徐々に増えてきた事もあり、この頃は試合中継や配信を見るたびに気になっていたモヤモヤする違和感の正体がおぼろ気に見えて来ました…

ここからはあくまでも僕の全くの妄想なので、その点はご理解頂いた上で読んでください!

まず思ったのはボスコヴィラサッカーアカデミーもポテンシャルの高い集めた選手達なら、奈良県予選なんか軽々と突破出来ると思っていたのに、いざ奈良大会に出場してみたら全国出場未経験の高校ですら手強いやん!ってなったのかもしれません。
そしたら全国大会予選の様に一発勝負のトーナメントでは、手強い相手にガチガチに守られるとPK負けのリスクもあるし、ハイクオリティな戦術は精度上ミスが出るリスクから敢えてこれを封印し、リスクヘッジした手堅いサッカーをするため、ショートカウンターを狙う戦術や5バックによる守備ブロックを作る戦術を選択しているのかも?と思った訳です。

他の群雄割拠勢も同じく県代表になる為には、どうしても手堅い戦術が目立ち始め、後ろに重心かけて少ない枚数で仕掛ける縦に速いカウンターで得点を狙う戦術が増えて来ている様に見えました。
そのため奈良育英ですら選手達が無意識のうちにカウンター意識が強くなり、ゲーム展開に余裕が出て落ち着くまでは、どうしても縦に急いでしまうサッカーになりがちなのかと感じました。

何が言いたいのかと言うと群雄割拠時代に入った事で、全国大会を見据えて県外の強豪校に通用する強いチーム作りをする事より、この群雄割拠時代を勝ち抜いて県代表というタイトルを獲る為に、極力ミスを少なくするセーフティな『small football』へと、本来目指すべきレベルアップとは反対の停滞する逆方向へと舵を切り出しているかも?という疑問が僕の中で芽生えました。
これが最近の県大会の観戦する度に芽生えていた僕のモヤモヤの正体だと分かり少し気持ちがスッキリしました。

最後にnoteをここまで読んでお付き合い頂いた方々には本当に感謝いたします。
ありがとうございました。

ここで余談になりますが、そういう意味ではレベルアップの方向で育成を考えると、全国大会の出場校はオープンなトーナメント大会で決めるのは向いてないよな…と思いました。
可能なら高円宮杯リーグを利用して各デビジョン毎の上位校を代表校とし、全国大会もレベルに合わせて各デビジョン別に大会開催すれば代表枠も更に増えるし、リーグ戦だとセーフティな最少失点を目指すリアクションサッカーの戦術を取らずに、得失点差を考えてアクションサッカーでゴール量産を目指す戦術に変わっていくのかなと考えました。

~おわり~

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