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テスラは何故、EV電気自動車の先駆者と成りえたのか?

こんにちは北米在住のエンジニア、ファルコンです。
Noteで初めて、趣味ではない少し真面目なコラムを消費者目線で書いてみました。

テスラの成功は消費者や市場、技術的背景をしっかり見極めたビジネスの結果であることは疑いようがありません。

一方、EVを国策として推し進める中国・北欧を除き他の市場では世間が騒いでいるほどEVの普及が進んでいるように見えません。特に日本は顕著です。
EVに対し、昨今の何か焦点がボヤけているような自動車業界を、テスラの成功を参考に少し考えてみます。

★消費者目線でのEVに対する課題
そもそも、なぜこれまでEVが普及してこなかっのか?
答えは簡単です。商品としてエンジン車に勝てないからです。
EVが本当にエコかどうかは抜きにして消費者目線で車としての最低必要性能を満たさねば普及しないでしょう。

私がEVを選ばない理由
① 長距離移動ができない (もしくはできなそう)
日本在住時の私の通勤距離は往復で160km程度。
きっとどのEVを買ってもカタログ数字上は航続距離は問題ないはずです。
でも冬場は性能が7割くらいまで落ち込むとか、夜間に充電し忘れたら通勤できないとか、充電所が近所にないなど不安が付きまといます・・・

② 購入価格が高い
各種助成金を使ってもEVはガソリン車やハイブリッド車より高い。
逆に言えばEV買うお金があれば、もっと魅力的な車が買える。

③ 早期経年劣化への懸念
これは携帯電話を使っている人ならだれでも実感できると思いますが、数年使うと明らかにバッテリーの持ちが悪くなる。
新車時は通勤できたものが、10年後は通勤できない車になるのでは・・・

④ EVでなくてはならない理由がない(魅力が薄い)
私は実用性に難のあるS660(狭い、騒がしい、航続距離短い)という車を所有しています。軽くて運転を楽しめて維持し易いところが気に入っています。
エンジン好きでもあるのですが、もし仮に航続距離(400km)と価格がS660同等(300万程度)の小型EVスポーツカーがあったら、選択肢に入ってくると思います。もちろん未だそんな車はありません。

S660によく似たコンセプトカー EV-STER  Honda HPより 

私は過去にテスラのロードスターに乗ったこともあり、エンジンにはない加速感やモーターフィーリングも悪くないと知っています。
しかし①③の不安が払拭されない限り、静かで加速性能に優れるという理由だけではEVは選ばないと思います。

電気代の方がガソリンより安いという話もありますが、EV普及後も今と同じ関係なのか?と勘ぐってしまいます。電機作りははタダではないので。
(太陽光発電の売電価格は年々安くなるし、電気代も不変でない事を実感します。もちろんガソリン代もですが・・・)

2010 TESLA ROADSTER 異次元の加速感は素晴らしい  CAR & DRIVER HPより

★テスラの戦略
日本と海外では状況が同じではないにせよ、ではなぜ新興自動車メーカーであるテスラが今日の成功を収めたのか?
実はCEOのマスク氏は『EVその物に実は車としての魅力がない事を悟っていた』のではないでしょうか?と私は想像してます。

だからこそ、当初は巨大自動車産業群に真っ向勝負を挑まず、①~④の消費者目線課題を大胆な手法で対応し今日に至るのではないでしょうか?

① 航続距離への対処
テスラは車を売って終わりではなく実は電気ステーションもセットで提供しています。
テスラ車には専用の急速充電器が必要ですが、国土が広く数100kmの長距離移動が普通の北米ではEV(テスラ)の普及を促すために、高速道路周辺の利用しやすく防犯上安心できる場所に充電スタンドを沢山設置しています。
これで航続距離不安がかなり緩和されます。

北米中西部のスーパーの一角。テスラ充電コーナーに充電がズラリ。いつでも安全に充電可能。
既存の自動車メーカーが自前のガソリンスタンドを用意している感覚。これは凄い。

これによりテスラユーザーは安心してEVでお出掛けができます。ナビでテスラスタンド位置も把握できるので初めて行く場所でも安心です。

一方テスラ車以外のEV用充電ステーションは比較的治安が良くない場所に少量が設置されている事が多く、そこに多種多様なメーカーの車が群がるため、充電待ち時間(充電時間ではなく)も長く、まだまだ利用しにくいのが実情のようです。テスラが別格になる所以の一つですね。

残念ながら日本では、テスラに限らずまだまだ全く急速充電器が普及していない上に、充電器の性能もかなり低いのでEVは遠出には不向きですね。

②③④ 価格、早期劣化、魅力への対応
そもそもテスラは今でもEVの中でも少し価格が高い分類の車です。
また元々自動車メーカーでもありませんでした。
創業当初は生産体制も十分に整っておらず現在のような大量生産も難しいがため、ビジネスを成立させるために必然的に高価格少量生産から始めざるを得なかったのは言うまでもありません。

そのためレッドオーシャンとなっている従来の大衆車市場での価格競争、燃費競争、どんぐりの背比べになりつつある運動性能競争には直接参戦せず、EV化で得られるメリットを最大限に活かしつつ、実はEVでなくとも出来る高付加価値を大量に盛り込み新しい未来の車像を作り上げた。

EV化のメリット
・燃費という基準がない
 EVはライバル少ない⇒独り勝ち!(もちろん航続距離は重要)
 燃費は無限大!プリウスすら敵にならないと言い切れる。
 (本当は違うが言ったもん勝ち)
・モーターが動力源
 ほっといてもエンジンより低速トルクフルで速い⇒ラッキー!
 バッテリーの重量増をもカバーして余りある。
・回生ブレーキでエネルギー回収できる
 重量増の電力消費への影響をある程度相殺してくれる。
 車において致命的な重さのデメリットが目立たない。

TESLAのバッテリーとモーター TESLA HPより

本当は重量増がコーナリング性能に大きく悪影響を及ぼしているハズ。
スーパーカー並みに加速が良いと主張するが、あえてサーキットでも速いよとは言えない?(総合的な運動性能ではエンジン車に及ばない)

実はEV関係ない付加価値
・どデカいセンタータッチパネル (EVは関係ない、むしろ電気大量消費)
一風変わった操作系 (ハンドルとペダル2個なのはエンジンも同じ)
人を感知して自動で出てくるドアノブ (電気と重量の無駄遣い)
自動運転的なシステム (エンジン車でも各社やっている)
車内ネットワーク接続 (本当はスマホで十分ですよね?)

MODEL Sの運転席 TESLA HPより

バッテリー劣化は全EVの宿命ですが、高価格帯車種なので多めのバッテリーを積むことで航続距離の余裕を生むと共に、劣化を早める電気残量低領域を使わない様うまい事対応しているのかもしれません。ここはEV老舗としてのテスラのノウハウもありそうで素直に素晴らしい技術だと思います。

★EV普及への持論
テスラ成功の最大の要因は、EV不安要素である、出先での電欠を自前の充電ステーションで解消し、付加価値盛り沢山であたかも新しい物に見せる技ではないでしょうか?
つまりガソリン車に勝てない事を総合的にうまく隠している

今後、各国が本気でよりEVを普及させたいのであれば、出先での緊急事態に対応できる急速充電所(もしくは移動充電車など)を増やすことが先決だと思います。インフラの整備遅れ自動車の性能向上に依存し過ぎている感が否めません。
充電所も車もどちらも重要、なぜならまだまだガソリン車に遠く及ばない

そして、これからの本気の廉価な普及型EVに付加価値は要らないですし、もう誤魔化しは効かない市場になるでしょう。デカいナビ画面や電動ドアノブなど、いわゆる「客寄せパンダ」を削ぎ落し、肝心のエンジン車同等に使え同等価格にできて、初めて対等にエンジン車の代替えに成りえるのではないでしょうか?新興国(日本の地方も)では移動の足が欲しいのです。エンタメではないのです。

きっともうEV界に二匹目のどじょうは居ません
庶民に低性能なものを高いお金で売るような世の中は良くないと思います。

それともちろん、EVが使う電気をどこでどうやって作るのか?それは本当に皆が言っているエコなのか?それとも誰かのエゴなのか?
根拠なく政府が方針を決めるのではなく、消費者が自由に自分で選べる資本主義であるべきですね。

私の想像する理想の世界は、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、電気自動車、燃料電池車などなど、様々な車が適材適所で共存する世界です。

最後はテスラから話題が逸れましたが、
最後までお読みいただきありがとうございました。

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