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ミニ四駆を科学する#02 重量について

移動する全ての物体において質量(重量)はとても大切。特に速さを競う物にとって軽さは加速にもコーナリングにも大きく影響する非常に重要な要素である事は一般的によく知られています。ミニ四駆においても基本同じハズ。
まずは物理学の観点で重量の影響度を見てみましょう。

矢印の位置、符号、変数名など厳密には物理的に相応しくない点もあるので悪しからず。
式の導出も割愛しているので、詳しく知りたい方はニュートン力学を参照ください。

①式は「加速性能を高めるには、駆動力を高める抵抗を減らすか、あるいは重量を減らす」と言うイメージ通りの式になっています。
加速度と重量の関係は反比例ですので、理論的に重量を半分にすれば加速性能は倍になります!一方モーターの出力を倍にしてもあらゆる抵抗分が引かれてしまうので、加速は単純に倍にはなりません。

コーナリング性能は計算式にルートが入っているので少し複雑に見えますが、②式から「回転半径はコースで決まるので一定とすると、曲げる力を高めるか、軽くする事がコーナー速度を高める事に繋がります。」
ただしルートがあるので、重量を半分にしても速度は倍にはならず約1.4倍留まりです。同様に曲げる力を倍にしても速度は約1.4倍です。
以上からもコーナー速度改善の方が難しそうである事も想像できます。

いずれにしても軽量化は加速・コーナリング性能どちらにも同時に大きな効果が期待できます。そこで今回はミニ四駆の重量について細かく把握してみようと思います。
調査対象となるのは今回もフルノーマルのエアロアバンテです。
さっそく個別部品の重量を調べます。計測はキッチン用電子秤。
1g以下は測れないので軽すぎる部品は複数個合わせて計測。

計算上は121g。組み上げて測ると119~120g。よって計測精度とグリスケース分の誤差は1g程度。

最も重たいのは電池の36gで全体の30%も占めていました。通常のアルカリ電池はより重く2個で45g程度なので、タミヤ純正充電池ネオチャンプはかなり軽い事が分かります。
次にシャーシ本体18g、モーター17g、ボディ12gと続き、二桁の重量部品が4つありました。

◇パワーユニット系 (電池込み55g、46%)
電池まで含めたパワーユニットはおおよそ全体の半分の重量を占める。
公式レース規則では電池、モーターへの改造は認められないため、この領域の軽量化は望めない。電極も十分軽いように思う。

ネオチャンプ電池、モーター&ギア、電極

◇駆動系 (8g、7%)
ギアとケースは十分軽く、レシオの違うギアを使っても大きく軽くはならなそう。シャフト類は『中空の軽量タイプ』が存在するため少しは軽くできるかもしれない。しかも回転部品の軽量化効果は単純な重量分以上に効く可能性があるので興味深いチューニングパーツと言えそう(回転慣性分)。
プロペラシャフトを抜くと2WDになり軽量化と伝達効率改善になるかも?(公式では2WDは違法ですね)。グリスはケース分が大きいと思われる。

ギア類、ギアケース、ドライブシャフト&プラベアリング、プロペラシャフト、グリスケースごと

◇タイヤ系 (11g、9%)
タイヤサイズは車種によっても違う上に、ホイールデザインも様々。改造パーツも多数存在しているため、前述のように回転部品である事も含め軽さに影響を与えるファクターの一つかもしれない。
一方、「タイヤは命を乗せている」と某メーカーが言っているように一般的にグリップ性能は運動性能に対し重要な要素。しかしブレーキもステアリング機構もないミニ四駆では『グリップ』はどう影響するのか?興味深い。

前後同サイズの小径ホイール&タイヤ、幅9mm直径25mmゴムタイヤ

◇シャーシ系 (25g、21%)
電池を除くと最も重かったのがシャーシ本体。電池の出し入れを床下から行うARシャーシ特有構造が重量に響いている可能性はある。剛性が高い分重量は重めか?軽量化が狙えるパーツの一つだろう。
ローラーはコーナリングの要だが、段付きボルトが意外と重く実は一か所あたり1g近い重さとなる。材質、大きさ、数・・・様々な選択肢があるパーツなだけに工夫できるポイントかもしれないが、安定性を含むコーナリング性能とのバランスが求められチューニングは非常に難しそうだ。

シャーシ本体、スイッチ兼フロントアンダーカバー、コーナリング用のローラー一式 (x6)

◇ボディ系 (22g、18%)
想像以上にボディが重たいことに驚くかもしれない。実はこれらボディ系のパーツは取り付けなくても、ちょっと工夫すれば(電池とモーターが落ちないように)ミニ四駆は走れてしまう。それだけにこれらの部品の重要性を知る事は軽量化にとって非常に重要かもしれない。

エアロアバンテボディ、フロア電池カバー、モーターカバー兼ディフューザー、リア補強パーツ

最後に理想の重量
理論的には『理想は限りなく軽く』となりますが、タミヤの規則には電池モーター込みで90g以上とあるのでそれ以下のマシンは違法?になります。
しかしミニ四駆には単純な平坦路ではない『飛んだり跳ねたり激しい3Dのコース』もあり、重量配分やジャンプからの着地時の姿勢制御なども重要になりそうです。
マスダンパー(稼働する錘)なるパーツも用意されています。そのため規定重量以下まで軽量化した後に、マスダンパーやバラスト(ただの錘)を追加して規定重量を満たすべきなのかもしれません。まるでF-1やスーパーGTの重量調整のようです。
つまり、とりあえず出来るだけ軽量化した方が良いという結論ですね。ちなみにミニ四駆素人の私にはマスダンパーの使い方がまだよく分かりません。

タミヤホームページ ミニ四駆公認競技会規則より

ノーマルの各部重量を理解できたところで、
次回は実際に軽量化効果について実走して検証してみたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます!
(ちなみに表紙の写真右側は電池やモーターなど外しただけの写真です。)

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